タンとサンが

厩舎で仔馬のリョンを

見ていた頃

診療所で受付を開始していた

チェ家の使用人ミヒャンは

困った顔色を浮かべ

イサに助け舟を求めていた

 

見習い医女のモモが

医女の養成所に入ったのは

昨年のこと

もう少ししたら免状を携え

菊花診療所に戻って

働き始めるはずだが

とにかくウンスとイサの

医者としての評判がいいもので

毎日ひっきりなしに患者が訪れ

目が回るほどの忙しく

ウダルチのチソンと結婚をした

元武閣氏のヘミが加わり

少しばかりそれが緩和されたか

という程度だった

モモの帰りを待つウンスは

新しい医女を雇い入れるつもりは

ないようで

初めは渋っていたイサも

今はその考えを尊重している

 

 

ですからぁ

あたしがぁ

是非ともぉ

お役に立ちたいとぉ

申しているのですぅ

 

 

いささか語尾が伸び気味の

押しの強い女人が一人

ミヒャンが持っている箒を

取り上げて診察室を

掃除しだした

 

 

そう言われても

困ります

ユ先生はまだ奥ですし

そんな・・・勝手に・・・

 

 

大丈夫ですって

あたしぃ

医仙様にぃ 以前

たいそうお世話になったんですぅ

だからご恩返しを

したいだけなんですって

 

 

若先生・・・

どうしましょう?

 

 

ミヒャンはたまりかねて

イサに尋ねた

 

 

あんれま 若先生

いい男だことぉ

先生 あたしぃ

なんでもしますんでぇ

どうぞ使ってやってくださいませ

 

 

面白いアジュンマ(おばさん)だね

まあ ユ先生なら

構わないって言うんじゃないか?

 

 

若先生!

そんな無責任なぁ

 

 

イサがこの女人を

擁護したような形になったため

ミヒャンは

ますます困ったことになった

女人はイサの言質を取ったことで

「どや」と言いたげに

ミヒャンを見ている

 

 

わかりました

でもユ先生のご許可を

いただくまでは勝手な真似は

やめてくださいね

 

 

はいはい

は〜い 若先生

ちょっとどいてください

ここのゴミ 片付けますんで

 

 

ちょっと 聞いてる?

それが勝手なことだって・・・

えっと・・・名前?

 

 

ミヒャンは苦々しい顔で

呟いた

 

 

ああ

名乗るほどのものでもないけど

あたしぃ リアンって言います

リ・ア・ン!

 

 

なんだか賑やかねぇ

どうしたの?

 

 

押し問答をしている

ミヒャンとリアン

それをくつくつ笑って

見ているイサ

たった今 王宮へ向かう

愛する夫チェヨンと

息子のタンを

見送って来たウンスは

いまいち状況がわからないまま

診察室の皆に声をかけた

 

 

ユ先生

おはようございます

ちょうどよかった

今 お伺いに向かおうと

思っていたところで・・・

 

 

ん?どうしたの?

ミヒャン?

 

 

はい それが・・・

 

 

医仙様 医仙様

医仙様〜〜〜〜

きゃあ 

やっとお会いできた!

嬉しいです〜ぅ

その節はうちのやんちゃ坊主が

お世話になりました

 

 

え?えっと?

 

 

もう随分以前のことなので

お忘れになったことでしょうが

往来で怪我をしていた息子を

助けてもらったことがあってぇ

あの日以来ずっとぉ

いつの日か恩返しをしたいと・・・

そう思っていた矢先

チェ家の女中さんを探してるって

噂を耳にしてぇ

あたしぃ どうしてもぉ

働きたいって一番に名乗り出たはず

なのにぃ・・・

ダメだったんですぅ

どうしてダメだったか

口利きの人に聞いたんですぅ

そうしたら

若い子に決めたって

あたしぃ 確かに若くないけど

やる気だけは沢山あります

だから お屋敷がダメなら

ここで働かせてください

洗い物得意です

掃除苦手だけど頑張ります

子育ても一段落してます

だから奉公させてください!!

よろしくお願いしますぅ

 

 

なるほど そう言うこと・・・

でも

屋敷の奥のことは全部

女中頭に任せてあるのよ

それに診療所では

洗い物も掃除も手が足りてるし

どうしましょうねぇ

 

 

ウンスは思案顔

それでなくてもへジャが

女中希望が多くて

選考に難儀したと

うれしい悲鳴をあげていた

ここで勝手にもう一人・・・と

言うわけにもいかないだろう

 

 

診療所に

不足しているのは医女なんだ

アジュンマは医女の資格を

持ってたりする?

 

 

イサはウンスの思いを汲み取り

そう言った

 

 

いえ 残念ながら・・・

じゃあ 今から資格を取りに

行きます!

 

 

資格はそうそう

簡単に取れるもんじゃ

ないのよ リアンさん

ユ先生もお困りだし

患者さんもお待ちだし

診察も始まるし・・・

もうお引き取りくださいね

 

 

ミヒャンはモモが

苦労して文字を覚え

養成所に入ったことを

知っているので

余計にムッとした顔で

リアンに言い聞かせた

患者が待っていると言われ

リアンは渋々診察室を出て行ったが

どうやら今度は

女中頭のへジャを訪ねて

屋敷の方に向かったようだった

 

 

まあ へジャに任せておけば

なんとかなるでしょう

 

 

そうだね

それにしてもなんだか

竜巻みたいに

すごいアジュンマだったな

オレ ああ言う人

嫌いじゃないよ

なんて言うか一生懸命なのは

伝わって来た

 

 

そうねぇ

 

 

そりゃあ そうですよ

若先生

チェ家にご奉公するのですもの

ここは待遇もいいし

奥様はお優しいし

旦那様は素敵だし

私のような使い物にならない

女中でも優しく面倒を見てくれて

なんとも

居心地が良くて言うことなしの

職場ですから

新しい女中のルリちゃんだって

鼻高々で奉公してると思いますよ

 

 

ミヒャンは胸を張った

 

 

そお?そう言って貰えると

嬉しいわ

うちの女中さんたちは

みんな働き者で助かってるのよ

私の急な無茶振りも

進んで手伝ってくれるしね

 

 

ああ この家

人の集まりが多いもんな

 

 

イサは納得したように

頷いた

 

 

さて・・・と

ミヒャン

患者さんに入ってもらって

さあ 今日もよろしくね

 

 

ウンスは元気な声を響かせて

診療所の一日が始まった

 

 

ーーーーーーー

 

 

チェヨンは兵舎に

朝稽古の様子を見に来ていた

この春ウダルチは新しい隊員を

補充していて

その様子が気になったのだ

ウダルチは結束が固く実力主義

気概にあふれた若者の集団だが

どうも今回は少しばかり

毛色の違う者が紛れ込んだようで

テマンが手を焼いていると

チュンソクから聞いたのだった

 

 

あいつか?

お前をてこずらせている輩は

 

 

はい

すみません

上護軍にまで

迷惑かけて・・・

 

 

テマンは小さくなって

ぼそりと呟いた

チェヨンは鋭い眼光で

その若者を見つめた

剣術の腕は申し分ないようだが

協調性がまるでない

一人 大きなあくびをして

やる気がないのが見て取れた

 

 

トルベの親戚だと?

 

 

ああ はい

お母上様の縁者で

 

 

そういうことか

縁故採用はするなと

言ったであろうに

ウダルチは実力主義

 

 

そうなんですけど・・・

縁故採用というわけでは・・・

隊長はそんなことする方じゃ

ないし・・・

それに剣の腕はいい

槍が上手なところは

トルベ兄さんにも似ていて・・・

剣の実力は

トクマンにも引けを取らないかも

 

 

テマン

お前 あやつに

遠慮でもあるのか?

なんとも歯切れが悪いぞ

 

 

い いや そういうわけじゃ・・・

ただ自分が後輩を指導する

なんて・・・

いっ いいのか?な?

と・・・っ

 

 

チェヨンは優しい瞳で

テマンを見ると

その肩に手を置いて

トントンと叩いた

 

 

*******

 

 

『今日よりも明日もっと』

新しいことに

そろそろ慣れて来た時期は

足元を見つめるのにも

いい機会

 

 

 

 

 

 

 

ソウタリアンmama様

お待たせいたしました

少々押しが強いキャラで

リアン登場〜

チェ家で無事に働くことが

できるのでしょうか?

そしてテマンも指導する立場に・・・

春は何かと環境も変わる

それぞれの場所でファイティン!

 

 

そしてそして

とうとういよいよ

ミノssiが帰って来ます!

長いようであっという間

だったような気がする二年間

今後の活躍が楽しみです

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