一日中話していても
話し足りないくらい
ウンスとミヨンはおしゃべりが
弾んだ
チョヌムジャはミヨンの笑い声に
聞き惚れて
此処に戻って来てよかったと
しみじみ思った
 
 
ねえ ウンスや
これ弾いていいかしら
 
 
ウンスが倉庫みたいな部屋で
見つけて来たカヤグムを
愛しそうに撫でながら
ミヨンは尋ねた
 
 
ええ ミヨンのカヤグム
久しぶりに 聞きたいわ
あ 旦那様も一緒に演奏
どお?
 
 
ウンスはチョヌムジャを誘う
チョヌムジャは小さくうなずいて
ミヨンを見つめた
100年前の世界では
食べることに追われていて
好きな楽器に触れることすら
忘れていたように見えたが
ミヨンはカヤグムを弾いている時が
やはり一番美しいと思った
 
二人が奏でる愛の音に
息子のチョヌは気持ちがいいのか
ウンスの腕の中で
くうくうと寝入ってしまい
ウンスも穏やかな気持ちになって
ついうとうとしてしまう
 
 
やっぱりいいわね〜
二人揃うと 
さらにいい音になるわ
チョヌは情操教育も
バッチリね
 
 
曲の合間にハッと目を覚まし
ウンスは二人の息子チョヌに
語りかけた
それから しばらく
屋敷に優しい調べが広がっていた
 
 
チェヨンは役目もソコソコに
兵舎を後にした
足取りがやけに軽かった・・・
 
ずっと兵舎暮らしで
今更 帰る家などないと
思っていたが
目の前の我が家は篝火が焚かれ
奥からはウンスの笑い声と
赤ん坊の泣き声と
美しい音色が聞こえて来る
 
奥の居室に急ぎ
ウンスがそこにいることに
安堵した
昨日のことは夢ではないのだ
ウンスはもうすっかり
自分の妻になったのだと
充足感が押し寄せた
 
 
戻りました
イムジャ
 
 
お帰りなさい
チェヨン
ミヨンとユチョンさんが
奏でる音楽に聞き惚れていたとこよ
うっとりするでしょう?
 
 
ああ・・・
 
 
前はとてもじゃないが
ウンスはチョヌムジャの笛を
聴く気になどなれなかった
彼がテグムを操ると
目の前で人が次々倒れ
花瓶や窓が粉々になるのを
まざまざと見て来た
この時代はサイコパスが
どれだけいるのだろうと
怖くて不安で・・・
逃げ出したかった
 
それが不思議と今は
チョヌムジャの
奏でる音を聞いても
耳も痛くならなければ
もちろん倒れることもない
心地よい風が吹いて来るような
そんな気さえしてくる
 
ミヨンの音を手繰り寄せるように
互いの呼吸を合わせて
織りなす曲はどれも美しい調べだった
 
 
いい音だ
 
 
チェヨンはウンスの肩に
手を置いて
静かにうなずいた
 
 
これならば問題なかろう
 
 
ん?何が?
 
 
ウンスは首を傾げて
チェヨンに問う
 
 
この男
王宮の楽師は
どうかと思うて
 
 
俺が?王宮で楽師?
罪人の俺が?か?
 
 
お前は謀反に加担してはおらぬ
ゆえに何の問題もないが
気が進まぬのならば
やめておけ
 
 
ミヨンのカヤグムがなければ
俺の音はまた人を
あやめるかもしれない・・・
 
 
チェヨンはかつての敵に
きっぱりと言った
 
 
お前のテグムからは
怒りも諦めも恨みも感じない
美しい調べが響いているだけだ
試しにお前一人で演奏してみろ
 
 
いや それは
周りに迷惑が・・・
 
 
渋るユチョンの背中を
妻のミヨンが押した
 
 
大丈夫よ ユチョン
恐れないで・・・
自分の音を信じてみて
 
 
チョヌムジャは恐る恐る
テグムを吹いた
もしも息子に何かあったら
そう考えると怖かった
だがそれは杞憂だった
チョヌムジャ一人の演奏でも
息子のチョヌは安心しきったように
スヤスヤ眠っている
 
 
ねえ ミヨン?
今はチョヌがいるから
無理だとしても
いつかはミヨンも楽師になって
素敵な演奏を夫婦で聞かせてね
その才能を埋もれさせるのは
もったいないわ
それにしても
ユチョンさんが王宮の楽師かぁ
さすがヨン
いいアイデアね
ミヨン
やっぱり私の旦那様は
素敵でしょう?
 
 
ウンスは鼻高々に
ミヨンに言った
 
 
もう!
ウンスったら
のろけ過ぎよ
 
 
お互い出会った運命の男は
なんと高麗時代の男だった
そんなところも親友らしいと
ミヨンは微笑んだ
 
 
ところで ヨン
これからの
二人の住居なんだけど
 
 
それならば
マンボのところに頼んでおこう
 
 
間髪入れずにチェヨンは答える
その様子にミヨンはくすくす笑った
 
 
やっぱり新婚さんの
邪魔はできないわよ
チェヨン将軍
いえ チェヨンさんって
ウンスのことになると
わかりやすい人ね
 
 
どう言う意味よ?
 
 
そう言うことよ
 
 
はてな?と首を捻るウンスの
頭をポンと叩いて
 
 
愛されてるわね
ウンスや
 
 
ミヨンは耳元で囁いた
 
 
それから皆で
テマンが調達した夕餉を
和やかに食し
今宵は小さながらも
湯船に湯を張った
先に
チョヌムジャ親子が湯浴みした
さすがにウンスとチェヨンは
別々に・・・時間差で
ざざっと湯を浴び
暑い日中の汗を洗い流すと
二組はそれぞれまた部屋にこもった
 
 
ウンスは今日の話を
かいつまんで楽しそうに
チェヨンに報告し
それから
おずおずと結婚式の話を
切り出した
 
 
ミヨンが天界式の花嫁衣装を
作ってくれるって言うんだけど
構わない?
 
 
チェヨンは優しい顔で頷いた
 
 
ああ 構わぬ
 
 
隣に横たわるウンスの
洗い立ての髪の香りが
甘く広がり部屋を満たしていく
細い腰を抱き寄せて
チェヨンはこめかみに口付けた
 
 
それと・・・
矛盾してるのはわかってるけど
 
 
あ?
 
 
結婚式 したくないの
 
 
ん?
 
 
王様や王妃様のところへ
出向いて結婚の報告をするわ
それにチェ尚宮・・・いえ
叔母様のところにも挨拶に伺う
でも派手な結婚式はしたくない
知らない人ばっかりの儀式より
ヨンと二人だけでいいから
これからの誓いを立てたいわ
それってヨンの体面的にまずいこと?
 
 
いいや 体面など
俺は気にせぬ
もしも何か言われても
言わせたい奴には言わせておけ
イムジャの思う通りで構わぬ
 
 
チェヨンは
ウンスの思いを汲み取り
ゆっくり頷いた
 
 
いいの?ありがとう
あのね 実は もう一つ・・・
お願い聞いてくれる?
 
 
ああ・・・?
 
 
━─━─━─━─━─
 
 
翌日には
チェヨンはマンボに頼んで
屋敷近くにこじんまりした
手頃な空き家を見つけ
ミヨンとチョヌムジャとチョヌは
チェ家の屋敷を出て行った
 
ウンスはチェヨンとともに
チェヨンの生家で
新しい暮らしを慎ましく始めたが
いつも通り 典医寺で
医師としての役目にも励んでいる
チェヨンは相変わらず
ウダルチテジャンとして
王様の信厚く忙しい毎日だが
以前と変わったのは
ウンスが待つ屋敷に
すっ飛んで帰るようになった
 
チョヌムジャは
チェヨンとチャン侍医の推挙もあって
無事に楽師として王宮勤めの
職に就くことができた
美丈夫な演者はすぐに評判になったが
それが昔 チョヌムジャと呼ばれた
音功使いだと
気がつくものは誰もいなかった
 
楽師は王宮での身分は低い
チョヌムジャにとって
そんなことはどうでも良くて
ただただミヨンに腹一杯
飯を食わせることができ
ホッとしていた
 
ミヨンはチョヌを育てながら
家の庭に花を寄せ植えしたり
カヤグムを奏でたりと
綺麗な花に囲まれ
音楽が溢れる
夫婦にとって
心地よい居場所作りに
精を出していた
 
もちろん
ウンスの花嫁衣装作りにも
余念がなく・・・
そうして
しばらく経ったある日
ミヨンお手製のウンスの花嫁衣装は
びっくりするぐらい美しく仕上がった
 
 
*******
 
 
『今日よりも明日もっと』
一緒に幸せになりたいと
その思いが幸せを運んでくる
 
 
 
☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*
 
 
暑中お見舞い申し上げます
猛暑酷暑 暑い夏
文字にするだけで暑いかも(;^_^A
どうぞ皆様
安寧にお過ごしくださいませ
 
 
ポチッとカムサハムニダ〜

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