奥の間の開け放った扉から
子供部屋が見えた
タンの元気のいい歌声が聞こえ
歌声に合わせて
チュンソクの息子ミョンが
お尻を振っている
 
 
あっぱぁごむん とぅんとぅん
へ〜〜
 
 
柚子茶を飲んですっかり元気ね
ほんと兄弟みたいに仲がいいわ
 
 
ウンスは目を細めて子供達を
見ている
子供部屋のそばにはソクテがいて
庭の植木の冬支度をしていた
 
 
ほんとでするね〜
 
 
でもポム
毎日屋敷に来てくれるのは
うれしいけれど
自分の屋敷は大丈夫なの?
 
 
ウンスは心配そうに尋ねた
 
 
大丈夫でする
旦那様はポムが
こちらのお屋敷にいる方が
なんだか安心するみたいでする
 
 
ポムは舌を出して肩をすくめ
ぐふふと笑った
 
 
そお?
 
 
そこへへジャが表から戻って来て
チェ侍医の来訪を告げた
 
 
奥様 侍医様がお見えです
それから あのぅ・・・
勝手をして申し訳ないのですが
女中たちを家に帰しました
 
 
チェ先生が来てくれたの?
え?みんなを帰した?
 
 
ウンスは怪訝な顔をして
聞き返した
 
 
はい 
いただいたキュル(蜜柑)が
気になる様子で
落ち着きがないものですから
家族のもとへ帰した次第で
 
 
まあ そうなの?うふふ
構わないわ 
へジャが決めたことだもの
 
 
ウンスは微笑んだ
 
 
で チェ先生は?
イサも一緒?
 
 
はい イサ様は表におります
侍医様は廊下に・・・
 
 
そ 通してちょうだい
 
 
はい 奥様
 
 
へジャはいつもと変わらぬ様子で
チェ侍医を奥の間に通した

 
へジャとソクテは
チェヨンの出陣前   くれぐれもと
申しつけられていたことがあった
 
 
スリバンから
刺客の知らせを受けようと
騒ぎ立てしてはならぬ
ウンスが動揺すると腹の子に障る
いつも通り
だが素早く部屋の奥へ匿うのだ
 
 
へジャは自分の命に代えても
主人の命令を忠実に守るべく
行動に移していた
 
 
先ほどスリバンのシウルから
屋敷の周りに潜む刺客がいると
聞いたばかりのヘジャは
動揺する気持ちを抑え
直ぐさまソクテを
若様の護衛のため
子供部屋のそばに向かわせた
それから女中たちが騒ぐ前に
暇を与えて裏木戸から帰し
自分は急ぎウンスのもとへ
向かおうとした
そこへ
チェ侍医とイサが訪ねて来た
 
イサがウダルチに負けないくらい
武術に長けていると
チェヨンから聞いていたへジャは
イサの顔を見て心底ほっとした
だが
イサはウンスのいる部屋に
護衛には行かず
刺客を食い止めると言って
そのまま屋敷の外で待機した
 
 
屋根にはスリバンが控えているから
屋根からの侵入は難しい
だとしたら 門や裏木戸から
仕掛けてくるに違いない
へジャさん
チビ達を医仙様の部屋に誘導して
それから扉を閉めてくれ
余計なものを
医仙様の目に入れたくないから
 
 
はい へジャにお任せを
 
 
慌てず でも急いで
時がないんだ
父上 
ウダルチが来るまで
オレが敵を食い止める
だから
医仙様とチビ助を頼む
 
 
ああ わかった
この命に代えても
お二人はお守りする

 
命に代えちゃ駄目だよ
医仙様が悲しむだろ?
きっとすぐに隊長が
ウダルチを寄越してくれるさ
始末するのに
そう長いことかからないから
 
 
わかった
 
 
チェ侍医とへジャは
こうしてウンスもとへ急ぎ
ソクテはへジャの目配せを受け
タンとミョンをウンスのいる部屋に
連れて行った
遊び足りないタンは
子供部屋に戻りたいと
駄々を捏ねたが
へジャは子守のオクリョンに
蒸かしたての饅頭を持って来させ
タンを引き止めた
 
 
まんどぅ?
うまうま〜 ネ〜〜
たん まんどぅ ちょあ
 
 
ウンスの息子は母親似の食いしん坊
饅頭が大好きだった
 
 
風が冷たくなって参りました
奥様 扉を閉めますね
 
 
ええ そうしてちょうだい
 

外から隔離された奥の部屋 
元武閣氏のポムはへ
ジャの様子がどこかおかしいと
異変に気づき
ウンスのそばに張り付いて
懐の小刀を握りしめたが
ウンスが不安がらぬように
平静を保って見せ
 
 
美味しそうでする
へジャの饅頭は饅頭屋のものに
引けを取りませぬ


饅頭をバクバク
 
 
そうね
私も食べてみようかしら?


ウンスも手を伸ばした
 
 
脈診したところ
特段問題はございません
お腹のお子も順調に
発育されているご様子ですし・・・
食が細いと
サラが心配しておりましたが
食べたいものを食べて
ゆるりとお過ごし下さい
産み月まであとわずかにございます
 
 
チェ侍医は普段通り
涼しげに微笑んで
ウンスに伝えた
 
 
みょん どうじょ
まんどぅ ネ〜〜
 
 
タンとミョンは仲良く並んで
へジャの饅頭を頬張っていて
のどかな光景
 
 
ねえ なんか
表が騒がしくない?
 
 
ウンスはドスンという音を聞いて
ふとへジャに尋ねた
 
 
さあ?左様でございますか?
ヘジャには聞こえませんでしたが
うちの人が庭木を切り落としたのかも
しれませんねぇ
庭木職人を呼んでありますから
その者たちの作業が
始まったのではないかと・・・
心配でしたら
様子を見て参りましょうか?
 
 
ううん いいわ
庭木職人か
そうね
確かにソクテ一人じゃ
我が家の庭は広すぎるもの
 
 
ウンスは笑って
話題を変えた
 
 
チェ先生 
ところでサラは?
 
 
ああ はい
急なお産が入りまして
医仙様のところへ伺えず
気にしておりました
なので私が代わりに・・・
 
 
そ 典医寺は相変わらず
忙しいのね
 
 
はい
このところ
冷え込んで参りましたし
患者が増えております
 
 
ウンスはタンの食べっぷりを
うれしそうに見ながら
チェ侍医に典医寺の最近の様子や
王妃様や大妃様のご様子を尋ね
それからタンの王宮大冒険の話を
面白おかしく聞いていた
 
 
ほんとにチェ先生に
見つけてもらえて
よかったわ
うふふ ありがとう
チェ先生
 
 
ウンスがチェ侍医やポムたちに
しっかり守られていた頃

イサは合流したウダルチの
新人三人とともに
玄関先で敵を迎え撃っていた
 
屋根の上からは
スリバンの弓の援護射撃
イサはその合間を縫って
ザクザクと斬り込んでいく
敵は数名
本気でウンスを狙うには敵の
数が少なすぎる
イサは
敵の狙いはここにはなく
陽動作戦なのだろうと踏んだ
 
 
ウダルチのお兄さんたち
弓矢に気をつけて
あれ 絶対
毒が仕込まれてるから
 
 
あん?なんだって?
毒?
 
 
ああ 父上が言ってた
敵の徳何ちゃらって奴は
毒を操るんだって
でも
もし毒矢に当たっても
心配はないよ
父上は親友のチャン先生の
遺志を継いで
解毒剤の検証を重ねて来たって
言ってたからさ
 
 
軽々と敵の間に入り込み
ひらりとかわしながら
仕留めていくイサを
ウダルチのチソン ウィソン
イェジュンは言った
 
 
お前 一体 何者だ?
 
 
あ?オレ?
オレの名前は チェ・イサ
一応 チェヨンの遠縁だけど?
知らなかった?
 
 
イサはニヤリと笑って
答えた
 
 
一方
王宮に波打って押し寄せた敵は
ウダルチと禁軍の応戦に苦戦し
瞬く間に鎮圧された
 
 
王様
敵は全員捕らえました
自害したものもおりますが
これから詮議をいたします
 
 
隊長
ご苦労であった
 
 
はっ
王宮を護るのは某の務めに
ございます
 
 
敵は?敵はやはり
元の刺客か?
 
 
王様の隣で心配そうに
王妃様が問う
 
 
いえ ご案じ召されませんように
金で雇われた殺し屋集団のようで
ございます
ワン・への命を受けたので
ございましょう
 
 
そのような財
あの男にはないはず
やはり元が後ろ盾なのでは
なかろうか?
 
 
王妃様は再び不安げに
チュンソクに聞いた
 
 
はっ
奇皇后が後ろ盾なのは
間違いないでしょう
ですが 金の出所はきっと
キ家の隠し財産
ゆえに此度の件
元国はあずかり知らぬことかと・・・
以前 上護軍が言っておりました
キ・チョル亡き後
屋敷は没収できたが
蓄財の大方は元に移管した後で
奇皇后のもとへ流れたようだと
 
 
そうであったな
没収されたキ家の財は
少ないものであった
 
 
王様は頷き王妃様に言った
 
 
王妃 元は
そなたの子を狙うことはせぬ
魏王とて父親
そなたを助けることはしても
そなたが苦しむことは
望まぬであろう
 

王様の言葉に 
王妃様は我が子を抱きしめ
うるうると涙を浮かべた
徳興君により失った小さな命
悔やんでも悔やみきれない
心の傷
あの時送られてきた両親の文には
娘を思う気持ちが溢れていた
その心に偽りはないはず

王様は王妃様の肩に
そっと手を置くと
慈しむように母子を見つめ
それから
チュンソクに尋ねた
 
 
して 隊長
王宮に刺客が送り込まれた
ということは
上護軍も決戦の最中ということ
であろうか?
 
 
おそらくは・・・
決着がついた頃かと
 
 
チュンソクは遠く
チェヨンの勇姿を思い浮かべ
目を細めた
 
 
*******
 
 
『今日よりも明日もっと』
負けるな!
理不尽な世の中に
屁理屈ばかりの毎日に
 
 
 
☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*
 
 
果たして
屋敷のウンスは
敵に気づいていたのか?
いなかったのか?(^▽^;)


次はチェヨンの戦い!
またおつきあいくださいませ

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