ふーーん
まて〜〜
よ〜〜


今日はチェヨンもウンスも
珍しく非番だった

中庭には子犬のフンを
追いかける
二人の一粒種のタンの
可愛らしい声が響いていて
女中頭のヘジャと
子守のオクリョンが
にこやかに見守っている

高麗の春はまだ浅く
風が冷たいが
そんなことはおかまいなしに
タンは元気いっぱいに
愛犬フンと走り回っていた

と言っても
残雪がところどころに積もり
タンのおぼつかない脚では
うまく走れない
フンはタンをおいてけぼりに
勢いよく駆けて行くが
タンが呼ぶと
そばまで戻って来ては
尻尾を振っている


かーいー
ネ〜〜
ふな〜〜


最近覚えた言葉「可愛い」を
なんども言っては
フンの背中をなでると

くぃ〜〜ん

鳴いてはフンも
それに応えた

その様子をチェヨンは
ウンスと並んで縁台に座り
目を細めて見ている


うふふ
中庭で息子が走り回り
それをあなたと眺める日が
くるなんてね
ちょうど二年前の今日だったわ
あなたにタンが出来たことを
伝えたのは


そうであったな
典医寺に梅の花が咲いていた


うん
そうだったね
覚えていたんだ


ああ
忘れるわけがない


ウンスは幸せそうに
チェヨンにもたれかかった
チェヨンはウンスが
寒くないように
肩を抱き寄せ笑う
二年前も今も
恋慕う気持ちは変わらない

春の陽射しは柔らかく
ずっとこのまま
穏やかな毎日であることを
チェヨンは願った


突然
フンがぎゃんと鳴いた
タンがフンの背中に乗ろうと
首にしがみついたのだ


あらあ
タン
フンにおんぶしたら
フンが苦しいわよ
ヌンじゃないんだから


ウンスはタンに声をかける
最近タンは
チェヨンが愛馬チュホンに
颯爽と跨がる姿を
目を輝かせて羨ましいそうな
顔をして見ることが
多くなった

それでチェヨンは
子馬に慣れる好機とばかりに
子馬のヌンの背中に
ちょこんと
座らせたことがあったのだ

それを思い出したのか
やんちゃなタンが
嫌がるフンの背中に
無理やり飛びつき乗った

子馬のヌンと違って
自分よりずっと大きなタンを
背負ったフンは
今にも潰れてしまいそうで
足が震えている

ウンスは
タンにやめさせようと
慌てて立ち上がった
チェヨンに手首を掴まれた


まあ   見てろ


足を止めたウンスの目に
フンから振り落とされるタンの
姿が映る


ふぇ〜〜ん


今度はタンの大きな泣き声が
庭に響いた


おんまぁ〜〜
おんまぁ〜〜


尻もちをついたまま
その場でウンスに
泣いて助けを求めるタンの
そばに
チェヨンは近寄ると
かがみ込んで優しく言った


痛かったであろう?


かかえ上げて
タンを立たせると
雪で濡れた衣を手で拭う
タンは甘えた顔をして
チェヨン越しにウンスを
まだ見ている

フンは
主人のタンが泣き出したので
どうしていいかわからないような
顔をして
タンの足元にスリスリ


タン
フンも痛くて
苦しかったのだ
だからタンは
振り落とされたのだぞ


あっぱぁ〜〜
あ〜〜ん
あ〜〜ん


つぶらな瞳から
ポロポロ涙をこぼし
タンはチェヨンに甘えた
声を出す


タン
自分より   か弱き者は
慈しむべき存在であろう?
たとえフンが
タンの家来であったとしても
無体をしてはならぬ
わかるか?


チェヨンは
指でタンの頬につたう
涙を拭き取りながら
言い聞かせた


あっぱぁ〜〜


母上が心配しているぞ
もう泣くな


チェヨンに抱っこされたタンは
ウンスのもとに運ばれ
優しく抱きしめられた
フンはタンに
ぴとっと寄り添うように
ついて来ている


くぅ〜〜ん


ウンスの腕の中から
タンはフンに言った


けんちゃな〜〜?
ふな〜〜


くぅ〜〜ん


フンがタンを見上げ
尻尾を振っている


かーいー
ネ〜〜
ふな〜〜


そうね
フンは可愛いわ
それに
タンもとっても可愛い
私たちの宝物よ
ねえタン
父上みたく
優しくて強い子になってね


ウンスはタンの頬に
ちゅっと口づけ
チェヨンはウンスの隣に座ると
タンがまだほんの
乳飲み子だった頃のように
タンごとウンスを抱きしめた


ポ〜〜
ネ〜〜


タンはチェヨンとウンスに
代わる代わるポッポすると
泣き顔から笑い顔に変わる

足元ではフンが飛び跳ね
一時はどうなるかと
気を揉んで見ていたヘジャと
オクリョンに安堵の色が広がり
チェヨンとウンスは
タンを見て微笑み合った

早春のチェ家の
のどかなひと時であった


*******


『今日よりも明日もっと』
あなたの訪れは
毎日の幸せを
どんどん広げていく






恋慕  其の五十四

梅の木の下で
ウンスがチェヨンに
赤ん坊が出来たことを
告げるお話です

三月九日はharuにとって
二人きりの新婚時代に
終わりを告げることを決め
新しいお話に踏み出した日
でもあります


「恋慕  其の五十四」に
いただいた
読み手の方のメッセージに
添えられていた
レミオロメンの『3月9日』

もともと大好きな歌でしたが

ヨンとウンスの歌に思え
最近では
ウンスとタンの歌にも思えます照れ

あの頃の想いがなつかしく
また
タンがいる今の風景が愛しい
そして
チェヨンとウンスにいずれ
新しい家族が増えるといいな
そんな願いを思い浮かべて
聞いています





現代版の途中でしたが
haruの本編で
とても思い入れのあるこの日
タンの物語をお届けいたしました



あなたとあなたの大切な人の
歌でありますように





次回
現代版にまた
おつきあいくださいませ


相変わらず
haruのスマホ表示が
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