自分の布団でもないのに
ウンスの匂いのする布団は
ウンスを抱きしめて眠った気分で
寝心地がよくて
チェヨンはぐっすり眠りにつき
朝日がカーテンの隙間から
差し込んで目が覚めた
 
ふと部屋の中を見渡すと
昨日は気づかなかった
茶色い小さなくまのぬいぐるみが
机の上にちょこんと座って
チェヨンを見ていた
 
おはよう
クマ君
ウンスの友達かい?
ウンスを見守ってくれて
ありがとう
 
恥ずかしくなるような独り言を
ぼそぼそ呟いてみる
 
ドアが開いて 
ウンスの気配がして
チェヨンは急いで布団を被り
寝たふりをした
 
 
おはよう 
あれ?声が聞こえたと思ったのに
気のせいかな?
ヨン 朝よ
起きて!
 
 
ウンスはベッドのチェヨンに
近づくと声をかけ覗き込む
チェヨンはウンスの
手首をぎゅっと掴んで
そのまま 抱き寄せ
ウンスは
転げ落ちるように布団の中へ
 
 
おはよう ウンスや
 
 
布団に潜り込んでキスをする
 
 
良く眠れた?
ベッド固かったでしょう?
 
 
ウンスは尋ねた
 
 
いや 
ウンスを抱いてるみたいで
安心して眠れた
 
 
だから!その誤解される表現
やめてったら
もう!
 
 
つんとした唇が愛おしくて
もう一度抱きしめた
ウンスは「しょうがない人ね」
と 笑った
 
ウンスの胸元できらっと光る
ハートのネックレスが揺れている
指先でつまんで眺めるチェヨンに
ウンスは言った
 
 
お気に入りだから
いつも一緒よ
ヨンがそばにいるみたいだもの
 
 
それは
初めて自分で働いたお金で
クリスマスにプレゼントした
ハートのネックレス
 
 
そっか
 
 
チェヨンはネックレスの
ハートに口づけ
それからウンスの喉のくぼみに
口づけた
 
ウンスはなんだか
体が火照り熱くなり
チェヨンの背中に回した手に
力が入った
 
ヨン・・・
自分でもびっくりするくらいの
甘い吐息が漏れた
 
 
お〜〜っぱぁ〜〜!
オンニ
朝ごはんだよ〜
おなか空いたでする〜〜!
 
 
布団の中の二人は
ポムの奇襲に慌てて飛び起き
ウンスは照れたように
もじもじと言った
 
 
ちょっとぉ
ノックくらいしなさいよ!
 
 
賑やかな朝食は
畑でとれたニンジン入りの
ケランマリ(卵焼き)
自家製キムチに焼き魚
 
まるで家族みたいに
チェヨンを受け入れた
ウンスの家族のもてなしで
 
緊張しながらもチェヨンは
居心地のいい時間を過ごし

あっと言う間にソウル行きの
バスの時間
 
 
アッパ   オンマ   ポム
ありがとう
 
 
オンマぁ
ポムもソウルに行く〜
 
 
ポムがウンスとの別れを
惜しんで母親に涙目で訴えた
 
 
ポムや
いい子でいてね
体    無理しないのよ
大学病院で検診の時は
私も立ち会うからね
 
 
うん
オンニ〜〜
次はいつ帰るの?
電話してね
待ってるからね
 
 
ウンスや
バスが来くるわ
ポムは大丈夫だから
行きなさい
体に気をつけて
辛い時はいつでも帰っておいで
ここはウンスの家なんだから
ヨン君    
ウンスをよろしくお願いします
 
 
母親が頭を下げ
チェヨンも頭を下げた
風が吹いて粉雪が舞う
 
うん
と   ウンスは小さく頷いて
来た時よりもずっと膨らんだ
お土産一杯の荷物を手にさげ
振り向かず歩き出した
 
チェヨンはもう一度深々と
お辞儀をすると
ウンスの荷物を代わりに持って
並んで歩き出し
時々振り返っては手を振った
 
 
ポムちゃん
まだこっちを見て
手を振ってるぞ
 
 
うん
でも振り向かない
振り向くとソウルに
帰りたくなくなるもの
今日はヨンがいるから大丈夫
寂しくない
 
 
ウンスは自分に言い聞かせる
ように話した
 
 
これからウンスが実家に帰る時は
俺が迎えに行くよ
ウンスが寂しくないように
 
 
うん
 
 
ソウルに帰ろう
戻ったら俺
やらなきゃならないことが
あるんだ
 
 
あの子に会いに行くの?
 
 
ウンスはチェヨンの顔を見た
 

ああ
ケリをつけなきゃ
あんなデタラメな記事を
このままにはしておけない
婚約するつもりなんかないし
でも
もしもウンスが
俺があいつに会うのが嫌なら?
 
 
ううん
ヨンの気の済むようにして
私のことなら心配ないから
昨日の夜
アッパに言われたの
確かにうちはお金持ちじゃないし
由緒のある家柄でもないけど
人様に顔向け出来ない生き方は
アッパもオンマもしてないって
ヨンと付き合うのは
この先もきっと今回みたいに
困難があるかも知れないけど
私には
自分に誇りを持って
生きて欲しいって
だから
私    これからは
家柄を気にして
引け目を感じたりしないって
決めたの
それより私   
うんと自分を磨くわ
ヨンが私を
もっと手離せなくなるように
 
 
これ以上
惚れさせる気か?
 
 
うふふ   うん
そうよ
もっといい女になるんだから
 
 
いい女は俺の前でだけだぞ
他のやつには見せてやらない!
 
 
なによ!
ポムにオッパって呼ばれて
デレデレしていたくせに!
 
 
なーんだ
妹にやきもち妬いてたか?
 
 
チェヨンはからかうように
笑ってウンスのふくれた
頬を指先でつついて呟いた
 
 
でも
素敵なご両親だな・・・
 
 
二人を乗せたバスは
雪深い田舎を抜け
ソウルへの道をひた走った
 
 
━─━─━─━─━─
 
 
ヘラ!
チェヨンから
あなたに会いたって
連絡が来たって
おじい様から電話があったわ
 
 
ソルラル三連休の最終日の
昼下がり
ヘラの母親モビリョンは
ほくそ笑むように
ヘラに言った
 
今日でソルラルの休みが終わる
明日からは病院も診療開始
 
誤診の噂は電子版を
中心に駆け巡り
明日には金で雇って
誤診の証言をさせたヤンが
クリスタル財閥の息のかかった
マスコミを連れて
病院に乗り込み騒ぎを起こす

それをまた配信すれば
病院の信用はガタ落ち
うまくいけば院長の
医師免許も剥奪されて
弱って
ボロボロになった病院を
買い叩き奪い取る

クリスタルを馬鹿にした罰の
見せしめのように
 
気位の高いモビリョンの
鼻息は荒かった
 
 
千年続く家柄だかなんだか
知らないけど
どうにもムカつく奴らよね
あの叔母の室長も
人を見下した顔して!
頭を下げて助けを求めて来ても
ほんとは助けてやりたくない
くらいよ
ヘラがチェヨンを欲しいって
言うから仕方なく
猶予を与えてやっただけ
 
 
お母様ったら!
彼を支えることが出来るのは
この私だけって
庶民の女が出る幕はないって
私は思い知らせたいだけなの
病院なんて
私はどうでもいいのに
 
 
あら
せっかくなら
病院も手に入れたいじゃない
セレブ専用の病院にしたら
きっと儲かるわよ
立地も設備も悪くないもの
 
 
お母様
おじい様に似てるわ
やっぱり親子ね
 
 
あなただって
人のものを欲しがるところ
似てるわよ
さあ
チェヨンの目がくらむほど
綺麗に着飾り
会ってやりなさい
ホテルに来るよう伝えたから
 
 
モビリョンはヘラの肩に
手を置いて耳に囁いた
 
 
*******
 
 
『今日よりも明日もっと』
奪う幸せより
分け合う幸せの方が
ずっと幸せになれるのに
 
 
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