互いに視線をそらすことなく
まるで
対峙しているかのような
チェヨンとイサ

その合間で
チェ侍医はぽつんと言った
 
 
イサ 上護軍に
本当はまだ伝えたいことが
あるのではないか?
 
 
チェ侍医の穏やかな微笑みは
イサの心を揺らす
 
 
己の道・・・
それがわからないから
もがいているんだ
氷の中に閉ざされたような
息をするのも苦しいような
そんな感覚 
生まれついて勝者の
チェヨンには
わからないだろう?
 
 
俺が?
生まれついての勝者?
 
 
首を振るチェヨンに
イサは畳み掛けた
 
 
家柄も高麗では指折りで
親はいないかも知れないけど
王様の信も厚くて
忠実な部下もたくさんいる
それに何より
あんなに美しい天女と
かわいい息子に恵まれている
チェヨンは勝者だ
 
 
勝ち負けは
戦だけでたくさんだがな
 
 
チェヨはふっと笑った
 
 
俺の苦悩は俺にしかわからぬ
イサの苦悩もイサにしか
わからぬであろう
だがな 
仲間と分かち合うことは
できるぞ
それに新しい家族にも
この先 きっと巡り逢える
その家族が道を照らして
くれるであろう
俺がそうであったように・・・


チェヨンは
しみじみと告げた
 
 
私は親も妻も子も
おりませぬが
 
 
横から
チェ侍医が口を挟んだ
 
 
ですが自分を不幸だと
思ってはおりません
大切な方のお側に仕えること
これも一つの生き甲斐
道しるべにございます
イサ・・・
私はイサと屋敷で暮らす日々
イサのことを家族だと
思うて接してきました
イサをただの居候とは
思っておりませんよ
 
 
家族?
 
 
はい それに
医仙様はイサのことを
とても気にかけておいでだ
イサに本格的な医者の修行を
始めるようにと勧めたのも
イサの行く末を案じてのこと
医仙様のお気持ち
わかるであろう?
 
 
イサは俯いた
にこやかに微笑むウンスの顔を
思い浮かべた
それから泣き顔のオモニの顔が
ぼんやり浮かんだ
二人を悲しませたくはない
イサは顔を上げて
チェヨンに言った
 
 
王宮に侵入した間者は
子供の頃からオレに仕えていた
爺やの手の者だ
昨日偶然市で会ったんだ
オレが生きていると知って
様子を
探りに来たんだと思う
朝は屋敷の前で
声を待ち伏せしてた
爺やはオレが倭国に
戻るのを断ったから
チェヨンを同じ目に遭わせると
そう言っていた
爺やはものすごく
頭が切れて 腕が立つ男だ
 
 
其の者
そなたの守り役だったのか?


ああ


合いわかった
イサ    
よく話してくれたな


チェヨンはふっと
息を吐いた
 
 
━─━─━─━─━─
 
 
チュンソクは
パク・インギュとともに
朝の鍛錬を終え
典医寺に行ったチェヨンが
戻ってくるのを
集賢殿で待っていた
 
 
なかなか戻ってきませんね
隊長
手遅れにならないうちに
典医寺に向かってください
急ぎ 上護軍の耳に
いれなければ・・・
よもや
イサの真実に
近づいたわけでは 
ありますまい
きっと 軍備案を巡り
財を差し出さねばならぬ
どこぞの高官の
上護軍に対する
小賢しい嫌がらせに
相違ないでしょう
だが 用心することに
越したことはない
典医寺は上護軍の愛妻
医仙様が責任者なのは
周知の事実
典医寺への揺さぶりで
今 足元をすくわれるわけ
にはいきません
軍事案はなんとしても
通さねばなりませぬ
この国のために
 
 
チュンソクは頷き
ことの経緯をもう一度確認した

刑部(ヒョンブ)に
文が投げ込まれたのは
先ほどのこと
 
それは
「チェ侍医の屋敷付近で
典医寺の少年が
倭国の言葉を話し
怪しい動きをしている
倭冦と通じているのでは
ないか?詮議せよ」
という内容であった
 
訴えがあった以上
王様王妃様の信頼厚い
医仙様の典医寺の
少年といえども
調べぬわけにはいかないと
刑部の役人が
康安殿で朝の警護に
就いていたチュンソクに
こそっと
耳打ちして知らせてくれたのだ

チェヨンやチュンソクに
恩を売る
下心があったのかもしれないが
動きがわかるのは有難い

チュンソクは急ぎ
チェヨンに知らせに来た
しかしチェヨンは
典医寺に行ったきり
まだ戻っていなかった

 
とにかくこちらに
火の粉がかかる前に
消さねばなりませぬ
必要とあらば
暫しの間 イサをどこかに
匿うことにします
 
 
パク・インギュは
きっばり言った
そして 倭冦の総大将を
生かすことの危うさを
今更ながら思った
 
 
とにかく某は典医寺へ
参ります
チェ侍医にも知らせた方が
よいでしょうし
 
 
チュンソクはインギュに
言い残すと
集賢殿を後にした

 
典医寺へ続く道には
銀杏の木が点在している
黄色く色づく葉も
はらはらと落ち
辺りは初冬の装いであった
 
 
*******
 
 
『今日よりも明日もっと』
どんな道を歩こうと
願うのは安寧な暮らし
それだけ
 
 
 

☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*


どんな決着を迎えるのか?
お話は牛歩の如くですが
また
おつきあいくださいネ
 
 

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