名残惜しそうに
口づけを解き
やっとふたりは
病室に辿り着いた

ウネは眠っており
アンジェはいなかった

ウンスが静かに双子に近寄る
小さくて赤くて
頼りな気で
そのくせ もうしっかりと
生きている
双子で
少し早めの出産だったが
出生時のタンより
ちょっと小さいくらいで
元気な様子に
ウンスはひとまず安心した

チェヨンが双子を
まじまじと見て
タンの成長ぶりを思う


双子に比べると
タンも たった2ヶ月で
ずいぶんと大きゅうなって
おるのだな


そうね 毎日見ていると
気がつかないけど
タンも逞しくなったわよね
うふふ


ウンスが優しい母の顔をして
笑った
そこへチェ侍医がやって来て
ウンスとウネの容態を
なにやら話をしている

顔を近づけて
チェ侍医の話を聞くウンスに
「少し離れろ」と
顔をしかめた
ウンスがふふふっと笑って
チェヨンのそばに戻り
チェ侍医には見えないように
すっとチェヨンの手を握った


あんたたち何なの?


寝ていると思っていたウネが
急に 
チェヨンとウンスに向かって
言った


な なに?


握った手を 
ぱっと離したウンスに
ウネが笑う


仲がよろしいようで


ウンスは顔を赤らめて


それだけ話せるなら元気ね


と 言い返した


アンジェ将軍は?


ああ あいつなら
禁軍兵舎へ戻ったよ
また来るって


え~一日中付いていて
あげてもいいのに


役目優先
それに居てもらっても
することないし
あたしは寝てればいいから


そうかな
お水を貰ったり
手をさすってもらったり
汗を拭いてもらったり
ごはんを食べさせてもらったり
やってもらえることは
いっぱいあるじゃない
身体の自由が利かないんだもの


それ 全部ウンスさんは
やってもらったの?


ウネがからかうように
ウンスに言った
恥ずかし気に顔を伏せる
ウンスに
ウネはふふんと笑って言う


チェヨンはいい旦那様だわ
ほんと 驚くくらいよ
昔の無愛想な男はどこに
行ったのやら


お前も相変わらず
口が減らないなあ


チェヨンが言った


ごめんね
口が悪いのは昔からさ


チェヨンとウネの攻防の
最中に アンジェが
戻って来た
チェヨンを見るなり
目を伏せた


あん?アンジェ
どうかしたか?


チェヨンが尋ねる
アンジェは朝のウンスの
言葉を思い出していたが


いや 何でもない


と かわした
怪訝そうなチェヨンの
気をそらそうと
ウンスがウネに話をしようと
したところ
ウネがくつくつ笑って言った


そりゃ 言えないよね
ウンスさんの乳を
吸うとかさあ


ウネさん!


ウンスが真っ赤になって
反駁する


そんなこと 言ってないわ
ウネさんが言ったのよ
あいつならいい出しかねないって


な 何の話しだ?


チェヨンのろうばいぶりに
チェ侍医がぶっと吹き出した
それから
おろおろとチェヨンとウネの
顔を見比べているウンスを
見つめて
「かわいいお方だ」と
そっと思った


では 脈診しましょうか?


話題を変えるのに
チェ侍医が
ウンスに助け舟をだす
ウネの手首に意識を集中して
静かに時を刻み 頷いた


よろしいですよ
乱れはありません


よかった
じゃあ 起き上がっても
大丈夫かな?


ウンスがチェ侍医に言うと


はい 少しずつ
頑張りましょうか?


チェ侍医はウネに微笑んだ


先生って 本当いい男だねぇ


アンジェのむっとした顔をよそに
ウネが笑って
いててっと顔を歪めた


よし じゃあ
起きて ウンミちゃんと
ウンチェちゃんをだっこしようか


ウンスが励ます


うん


じゃあ アンジェ将軍
ここへ


ここ?
ウネの後か?


アンジェが困惑した顔をする


そうよ
ウネさんを支えなくちゃ
ここに座って
背もたれになるのよ
妻がいまから激痛に耐えるのに
夫が助けなくてどうするの?


ウンスの剣幕に渋々と従い
アンジェはウネの枕元に
腰を下ろした


ウネさんが起き上がるのを
補助してくださいね


ウンスが畳み掛けるように
アンジェに言うと


合いわかった


と 声が聞こえた


チェ侍医とチェヨンが
壁際で見守る中
ウンスがアンジェに指示を出す


ゆっくりね
ゆっくり 背中に手を入れて
少しずつ 起こしてあげて


アンジェは頷き
ウネが恐る恐るアンジェに
身を預けた
身体が少しずつ浮き上がる


今まで経験したことのない
お産の時とはまるで違う
激痛がウネの身体を支配する
みしみしと音を立てて
傷口が開くのでは
ないかと思うくらいに
身体がきしんだ


ア だ~~~ぎゃー
痛い
痛いわ ちょ
ちょっと まって


お腹が引きちぎれそうだ
と ウネは思った
さすがにアンジェも心配になり


大丈夫か?
頑張れ ウネ


背中をさすっている


うん うん


アンジェが差し出した手を
握りしめてウネが答える


ほら 双子ちゃんが待ってるわ
オンマに早く
抱っこしてもらいたいって


ウンスが励ます


うん うん


激痛に耐えて
それでも諦めることなく
我が子を胸に抱く為に
ウネは歯を食いしばって
痛みに耐えた
肩で息をして
少し動いては また休む
これを繰り返す
天界ならば痛み止めも
もっといいのがあるだろうに
ウンスは歯がゆさと
申し訳なさでいっぱいになった

チェ侍医の焚いた香が
いい香りを部屋に放ち
心を和ませるが
それでも痛みには効かなかった


ぐわーーーっ


ウネは力を振り絞り
なんとか起き上がると
気が遠くなって
後へ倒れた
アンジェが胸で支える


よく頑張ったな


チェヨン達がいるのも忘れ
ウネの乱れた髪をなおし
額の汗を手で拭った


う・・・ん
でも 痛い・・・


ウンスがすぐに
一人目のウンミを
ゆっくりとウネの腕の中へ
置いた
赤くて小さい娘
弱々しいけれども
すうすう寝息を立てている


無事に生まれてよかった


ウネが愛しそうに赤ん坊を
見つめた
さっきまでの激痛は
もはや忘れたかのような
笑顔だった

しばらくして
ウンミをウンスに渡すと
ウネは
ウンチェを腕に抱いた
手をぐっと伸ばした
ウンチェに


元気そう いい子ね


指で頬をつついて言うと
偶然 目を開けた


ウンスは
アンジェにウンミを渡す
両親の腕の中で
すやすや眠る双子たち


かわいい双子
あたしの赤ん坊
生まれてくれてありがとう


ウネの目から涙がこぼれた
ウンスの目からも涙が溢れる


これから少しずつ痛みは
なくなるけど
ゆっくり養生するのよ
お腹を切っているんですもの


ウンスの声が優しく響いた
チェヨンがいつの間にか
ウンスのとなりに立って
ウンスの肩を抱いている

チェ侍医は二組の夫婦を
見守るように微笑むと
静かに部屋を出て行った


雪がやんで
星が空に瞬き始めた


晴れるとよいな


チェ侍医は空を見上げて
呟いた


*******


『今日よりも明日もっと』
どんな苦しみも
乗り越えていきたい
あなたに出会えたから




☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*


めりくり~♪

イブですね
素敵な夜になりますように



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