泣いておるのか?


肩が震えていた


私は大丈夫
もう
守ってくれなくていいから


あなたが言った


あなたを守ることが
俺の生きる道しるべ
そんな気がしていたのに
もう守らなくていいと
あなたは言った


俺はまた道を失った


息することさえ面倒な
俺が息を吹き返し
あなたが俺に
もう一度生きよと
この世に
色彩をもたらしたのに


もう守らずとも
よいと言うのか?


ならば最後に
あなたの為に出来ることは
なんだろう?

俺があなたに
してあげられることは?


一番簡単な方法


この命賭けて
キ・チョルから
あなたを守ること
キ・チョルを倒すこと
ともに奴と果てること


キ・チョルとの決闘のさなか
血相をかえて
俺とキ・チョルの間に割り込み
自分の首に小刀をあてたあなた


もうやめてと
その瞳が俺に訴える

命を粗末にしないでと
その瞳が揺れていた


━─━─━─━─━─


人影のない石段に座って
俺の手に
息を吹きかけるあなた


お湯があればいいのに
凍傷になるわ


あなたの暖かい息が
キ・チョルの氷攻で
凍った俺の手を
ゆっくりゆっくり溶かしていく
俺の心を 一緒に
溶かしていくみたいに


どうして こんな無茶するのよ


あなたの肩が震えてる
少しの怒りと
安堵から
あなたの肩が震えてる


挑んで駄目なら
それまでかと
これが一番簡単な方法だと
思ったのです


震えるあなたの顔がみたくて
俺の為に
泣いてくれているのかと
その想いが切なくて
柔らかなその赤い髪の毛を
そっとかきあげた


あなたの涙が 
手のひらに落ちる
あなたの涙は 
いつだって暖かい


もう二度と
無駄に命は賭けませぬ
もう いたしませぬ
イムジャを悲しませること
もう いたしませぬ
だから   泣かないで


俺はあなたに誓った


どれくらい石段に
座っていたのだろう

あなたの華奢な体が
冷たい夜露に濡れる

重ねられたその手が
愛しくて
その手を
離されたくなくて


「王宮へ戻りましょう」
俺はこの一言が言えなかった


あなたも言わなかった


寒いゆえ
こちらに


腕を広げると
あなたが素直に腕の中に
収まる


暖かい


あなたが目を瞑る
あなたが寒くないように
俺はあなたを抱き寄せた


このままずっと
夜が明けねばよいのに


暗い夜空に星がまたたく


あの星が俺達を照らして
くれるだろうか?



********



まさか 命をかけるなんて
そんなこと
想いもしなかった


あなたを傷つけたくなかったの
これ以上私のことで・・・
あなたを守るには
あなたから離れることが
一番だと そう思ったのよ


この手の凍えはあなたの心
この手のように
また あなたの心が
凍ってしまったらどうしよう


私のこと 
大切に思ってくれてるの?
私のこと 
自分の命をかけるくらい
大切にしてくれてるの?


そんな あなたが愛しくて
そんな あなたが恋しくて


どうしよう 
私もう 後戻り出来ないわ
あなたのこと 愛してしまった


あなたが おいでと言って
胸を貸してくれた
あなたのからだ 暖かい

あなたが 生きているからよ
あなたが そばにいるからよ
あなたの 心があたたかい


目を閉じた


あなたの鼓動
心地いい


あなたの凍った手を
離したくない
いまは ただ それだけ・・・





夜空が だんだん薄くなる
東雲(しののめ)の空


ウンスはチェヨンの腕の中で
夜を明かした

冷たく凍ったチェヨンの手は
暖かさを取り戻し
ウンスの手と重なって
膝の上に乗っていた

目を開けるとチェヨンが
じっとこちらをみている

鼻先が触れそうなくらい
顔を近づけて
チェヨンが言った


夜が明けました


そうね


王宮に戻りましょう


うん


静かに立ち上がったのに
ウンスはふらっとよろけ
チェヨンがその
たくましい腕でウンスを
支えた


目が離せませぬ


そお?


そばにおります
イムジャをお守りします
イムジャが
天界へ戻るその日まで


ウンスは黙って
つかんだチェヨンの手の甲に
唇を押しあてた

チェヨンが息をのむのが
わかる


おまじない
早く 
凍傷が治りますようにって


ウンスが笑った


「まだ手が冷たいから
医者として今は離せない」


ウンスがチェヨンに
言い訳をして
王宮への道のりを
手をつないで戻った

ただ 互いの手のぬくもりを
感じながら
その息づかいを
心地よく思いながら
てくてくと
王宮へ続く道を歩く

手はもうとっくに
暖かいと
ふたりとも分かっているのに
繋いだ手を離す気になれなくて

朝陽が光る靄の中を
ただ 黙って歩いて行く


初めて互いの心が触れた
初めて互いを愛しいと
そう思った夜が明ける



*******


『今日よりも明日もっと』
恋しい 愛しい
あなたの 心
もう泣かないで   



☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*


agemaki様
reshion様
pana2683様 から

頂いたリクエストを
構成しながら
お届けいたします

リクエスト
ありがとうございました


にほんブログ村 小説ブログ 韓ドラ二次小説へ
にほんブログ村