陽が沈んだ道を
屋敷へ帰るために

チュンソクはポムを
ひょいと馬に乗せ
自分もその馬に跨り
ポムを抱きかかえた

ポムがチュンソクに
身を寄せるように
すりすりと
背中を押し当てる


寒い   チュンソク様


甘えるような声がする
チュンソクは
よりいっそうポムを
引き寄せ腕の中に抱いた
ポムの甘酸っぱい香りが
チュンソクの鼻腔を
くすぐる
妓生の化粧の匂いなど
比較にならぬくらい
心を揺さぶられる
いい香りだ


チュンソク様
ウネ様に伺いました
妓楼に部下を
連れて行ってるって


ま  まあな
だが
最近はないぞ


でもこの先も
ポムは嫌にございます
チュンソク様が妓楼に
行くなど


思いつめたような顔をして
チュンソクを見上げた


ポムだけでは
満足できませんか?
やはり綺麗な妓生が
よいのですか?


何を言うのだ


チュンソクは驚いた
毎夜毎夜
ポムを愛おしみ
肌を合わせている
妓生の入りこむ隙など
どこにもないと言うのに


妓楼に
引き連れていく役目は
トクマンに任せるから
案ずるな


ほんと?


チュンソクは頷いた


良かった
アンジェ将軍とウネ様を
見ていたらなんだか
心配になってきて
夫婦って   難しい
ちゃんと
話をしなくちゃだめですね


ああ   そうだよ
だからポムも思ったことは
ちゃんと俺に伝えてくれ


じゃあ
チュンソク様


なにか?


夜な夜な
激しすぎます


ん?


きっぱり言うポムに
どぎまぎしながら


嫌ならやめるが


と  チュンソクが
ぼそりと答えた


それが嫌じゃないから
困ってるの


口を尖らせたポムが
今宵はことさら
愛しく思えた


─━─━─━─━─



ウネとアンジェが
仲睦まじく
自分の屋敷に帰り
やっとチェヨン邸も
静かな夕餉時を迎えた

ヘジャが用意した
心づくしの料理が並ぶ

秋の味覚のきのこ
ごはんの隙間から
顔をのぞかせ美味しそうな
炊き込みご飯に
仕上がっていた

また  胡麻油に
きのこがからまり   
つやつやとした
よい香りのする
小鉢も卓に上がっていた


これって
ポソッナムル(きのこのナムル)?
まあ
ご飯にも
きのこが入っているわ
今晩はきのこ尽くしなのね


はい   奥様
美味しいきのこを
どっさりいただきましたから
それにホンシ(紅柿)も
ございます   
よく熟れてきっと
美味しゅうございますよ


わぁ   ホンシのあの
プヨプヨで甘いところが
すごく好きなのよ
この秋初めてかしら?


はい    奥様


あれ?
ヨン?
なんだか浮かない顔?
どうかした?


ああ  きのこがな


えー   苦手だった?


ああ
あまり得意ではない
赤月隊の頃
野営でよく食っていたが
ぬるんとした感じが
どうにもな


うふふ
チャメ以来  久々に
苦手なもの見つけちゃった
たまにそういうヨンを見ると
うれしくなるわ


人ごとだと思って


むぅと口を曲げた
ヘジャが慌てて言う


存じませんで
申し訳ありません
すぐに何か他のものを


いいわよ
ヘジャの料理は美味しいもの
きっと旦那様も食べれるわ
それに私   きのこ大好きよ
ローカロリーで
食物繊維たっぷりだから
女の人のからだには
特にいいのよ


ろー?かろ?


ヘジャが首をひねるのも
かまわずにウンスが
言った


そうだ   ヘジャお酒を
持って来て頂戴


イムジャ   酒など
もっての他


私じゃないわよ
あなたによ
このナムルには
お酒が合うわ
それにウネさんのことで
いろいろ頑張ってくれたから
そのお礼も兼ねてね


ウンスがくすっと笑うと


お礼なら他のものが良いがな


チェヨンは小さく呟く


うふふ
ウンスはチェヨンの呟きが
聞こえないふりで微笑んだ

それから
ヘジャが持ってきた
上等な酒を
チェヨンの盃に
とくとくと   注いだ


お酌するの   久しぶりだわ
私が妊娠して
お酒が飲めなくなってから
ヨンも家では
飲まなくなったもの


イムジャは酒が
好きであろう


うん


なのに   腹に子がいて
飲めぬゆえ


私に遠慮しなくて
いいのよ
たまにはこうして
旦那様にお酌したいわ


そうか?


チェヨンが笑った


うん
あ   でも妓楼は嫌よ


行かぬ


本当?でも
付き合いもあるわよね
うん
大人の女としては
お酒飲むだけなら・・・


うーんと
考える顔をしてから
やっぱりヤダ!
と   ウンスは言った


イムジャは正直だな


だって他の女人の匂いが
ヨンからするなんて
耐えられそうにないわ
たとえインギュさんの
付き合いでも
ウネさん    よく許したわ
偉いなあ~


そうか


うん   そうよ
それにしても二人が
丸く収まり良かったわ
どうもあそこの夫婦は
変に相手を思いやるもの
でもそんなことも
お互いわかっているんで
しょうけど
ウネさんも我慢するから
疲れが溜まっていたのね
たまにはうちに来て
息抜きしてもらわなくちゃ


ウンスは頷きながら
チェヨンに言った
チェヨンはウンスの
頬をふんわりなでながら


俺は
イムジャに出て行かれたら
おかしくなりそうだ


目をじっと見つめて言った
その時
お腹のみぃがウンスの腹を
どんと叩いた


あ   みぃが返事したわ
父上が浮気なんかしたら
きっとみぃも黙ってないわね


みぃに
変なこと言わんでくれ
俺は浮気などせぬ


そうね
そう言うことにしておくわ


ウンスは  ふふっと
笑ってから
チェヨンの口に
ポソッナムルを一口
運んだ

もぐもぐ食べながら
チェヨンが酒を飲む


意外に合うな


でしょう?
酒のつまみにぴったりよ


ああ   そうだな
イムジャ
無事にみぃが生まれたら
一緒に酒を飲もうな


それはまだ当分先かな?
お乳をあげてる時は
お酒を飲めないし
それに


ウンスは照れたように
下を向いて言った


またきっと授かるわ


そうか?
そうだな
ああ   そうに違いない
まだ当分酒は無理だな


チェヨンは
うれしそうだった
それからウンスの耳元に
囁いた


今宵は鍛錬
出来そうか?


もう   知らない!


ウンスはわざと
怒ったふりで
きのこご飯をチェヨンの
口の中に放り込んだ


香ばしい秋の味が
チェヨンの口  
いっぱいに広がった


*******


『今日よりも明日もっと』
秋の味覚を
愛する人と食す幸せ



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