抱き上げて
離れに連れて行った

武閣氏として
鍛錬を積み
身体を鍛えているはずの
ポムのからだは
思いのほか軽くて
抱きしめると
壊れてしまうのではないかと
不安になった

くるんとしたまつ毛が
伸びる目元
ころんとした鼻筋
艶のある瑞々しい唇

初めて間近で見る
ポムの愛らしい顔を
じっと見つめた

離れには
天蓋から
ふわりと薄絹が垂れた 
大きめの寝台が一つ


これは ちときつい


男としての本能と
まだ手は出せぬという
自制とのせめぎ合い

ゆっくりと布団に
降ろして
その顔をまた見つめた


ポムの心臓は
すでに限界を超えていた
いつか口から飛び出すんじゃ
ないかと思うくらい
どくんどくんが
どどどどどどどに変わり
跳ねるように鳴り響いている


もう まだこんなに
明るいじゃない
それなのに
お閨に運べだなんて
大護軍様の意地悪!


心の中で何度
恨めしく思っても
取り返しがつかない


まさかこのまま
まじ? まじ?
交わるとか!?
ない ない
絶対駄目!


寝た振りをしようと
う~ん と言って
寝返ってみた


その声にチュンソクは
驚いた

寝ているのか?
起きているのか?
そのつやのある声は
誘っているのか?


ポム


声をかけて身体を自分の方に
向けさせた


起きていますか?


心臓がはち切れそうなポムは
寝た振りを決め込んだ


寝ているのか?


少しがっかりしたように
チュンソクが言った

ポムが 今更 
起きているとは言い出せずに
いると

突然 唇の上に
へにゃへにゃと柔らかく
暖かな物体が舞い降りた
ざらざらとした感触が
顎の辺りを這う

びっくりして目を開けた
顔の上にチュンソクの顔


いや その
これは つまり


チュンソクが慌てて
はね除けた


今のは 今のは
まさか 接吻?


その 寝顔があんまり
かわいくて つい


つい
ついって
ひどい!
チュンソク様の馬鹿!
嫌い!


ポム そんなに怒らんでも


だって 初めてだったのに
寝てる間にするなんて
ひどい!
情緒も何も 
あったもんじゃないわ


ポムは泣き顔で抗議した


馬鹿 チュンソク様の馬鹿
もう知らない
医仙様~


ポムは離れから走り去って
しまった



やっと 宿屋の一室で
二人きりの時を過ごせると
チェヨンの心は
弾んでいた

軍議のせいで一緒に
宿屋に来られなかった
今から たっぷりと
ウンスの肌に酔いしれよう


「お手柔らかに 旦那様」


甘い誘惑がからだ中に広がる
はやくひとつになりたくて
心が急く
耳たぶにかじりついた

葵色の衣 
チマをたくし上げると
白く細い足があらわになり
目が釘付けになる

さて これから
こうして ああして

チェヨンが幸せなひと時を
思い描いていると


どんどんどん
部屋の扉を叩く音


誰かしら?


いせんさま~


ポムの声が聞こえ
開いた足を
慌てて閉じた


あ?
放っておけ


そんな訳には
それに今にも
飛び込んできそうな勢いよ


は?


まだふたりとも寝台の上
あられもない姿で
いるところにポムが
飛び込んで来た


いせんさま~


飛び込んでから
目を覆った


すみませぬ


ウンスが急いで寝台の上に
起き上がり衣を整えた
脱ぐ前でよかったと
ほっと胸をなでおろす



どうしたのよ
急に?


だって チュンソク様が
チュンソク様が


途中で邪魔をされた
チェヨンが不機嫌そうに
ポムに聞いた


あいつに襲われでも
いたしたか?


ど ど どうして
それを?
まさか 見ていたとか?


馬鹿が!
こっちはそれどころでは
なかったわ
邪魔したのはそちらで
あろうが


す すみませぬ


泣きそうなポムが
なんだか可愛くて
ウンスはぷっと
吹き出してから
チェヨンの耳元で
何やら告げた

チェヨンは頷き
やっと表情を緩め


約束したぞ


そう告げると
部屋をあとにした


うなだれるポムに
椅子に座るように促すと
ウンスもその向かいに
座った


何があったの?


せ せ 接吻


ん?口づけ?


寝てる間にするなんて
ひどい


真剣なポムの抗議とは
裏腹に
その時の困った顔の
チュンソクが思い浮かび
思わず声を立てて
笑ってしまった
ウンスであった


風にざわざわと
木の葉が揺れている

のどかなはずの昼下がり

空に浮かぶ綿雲が
呆れるように
流れて行った


*******


『今日よりも明日もっと』
人の恋路を邪魔する奴は
馬に蹴られて・・・
なんとやら



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