寝顔の鼻筋を指でなぞる
すっと通った鼻筋
その鼻の頭に唇を寄せた

どれだけ触れても
まだ触れていたい


寝顔のあなたも好き


小さく言うと
腕をつかまれ
引き寄せられた


起きてたの?


イムジャが悪戯するゆえ
目が覚めた


腕の中に収まって
からだに伝わる優しい声を
聞いていた


俺が触れたら
すぐ悪ふざけだと
怒るくせに


だってヨンは
あちこち触るから


ウンスが小声で反駁する


触りたいのだから
仕方あるまい


平然とチェヨンが言う


恥ずかしいもの
うっかり声も出るし


肌を露わにしたイムジャを
目の前にして
我慢しろと言う方が酷だ


チェヨンは内心そう思う


ほらまた


胸に伸びた手を払いのけ
ウンスが言った


ねえ
昨日はアンジェ将軍も連れて
急いで来てくれたんでしょう


あ?まあな
チェ侍医と二人には
しておけぬしな


でもチェ先生がいて
助かったわ
お義母様も話を聞いてくれたし


そうか   まあ
それはよかった


チェ侍医を褒めたウンスの話を
渋々聞いた


でもね    ウネさん
これから大変だと思う
双子の子育てもあるし
その前に出産だってあるし
もちろん私もウネさんを
支えるつもりだけど
家族だけで
抱えきれないことも
たくさんあるもの


そうだな


考えてみると
チェヨンは早くに両親にも
死に別れ
周りに歳を重ねた人が
いなかった
思い返すと
わずかに残る祖父の記憶も
曖昧だった


昨夜は
戻ったアンジェに
ウンスが義母の状態を話し
ウネだけで支えるのは
大変なことだと伝えた
アンジェは
じっと話を聞いていた

ウネ思いのアンジェなら
きっとウネが
苦しむようなことには
ならないと
ウンスがほっとしたのを
チェヨンは横で見守っていた

四人で久しぶりに話をし
チェヨンとアンジェは
酒を酌み交わして
屋敷を後にしたのだ


ねえ   ヨン


思いを巡らせていると
突然真面目な顔のウンスが
チェヨンをじっと見つめた


私がおばあちゃんに
なっても
変わらず愛してくれる?


間髪入れずに
チェヨンが答える


無論
俺のずっとは一生だと
前にも言うたであろう


うん   そうだった


ウンスはチェヨンの胸板に
顔をすり寄せて
返事をする


ヨンはきっと
かっこいい
おじいちゃんになるわね


そうか?


ええ    
屋敷の中庭にみぃの子供
私たちの孫がいて
あなたが剣術を教えるの
子供相手でも
きっと手を抜かないわね
うふふ
私はそれをお茶を飲みながら
眺めているわ
子供も孫もたくさんいて
きっと屋敷は賑やかね


ならば   イムジャは
かわいいおばあちゃんだな


顔を見合わせて微笑んだ
そして   そんな未来に
ふたりは思いを馳せた
ずっとふたりでこうして
一緒に歳を重ねていきたい


そのためには
みぃが生まれたら
またすぐにイムジャは
はらまねばならぬな
たくさん
産んでくれるのであろう?


チェヨンが笑った


ヨンにも頑張って
もらわなくちゃ


ウンスが笑って
言い返す


それなら心配いらぬ


そうでした
心配した私が馬鹿だった
うふふ

あ   みぃが怒ってるわ
まだ生まれてもないのに
次の子供の相談かって
ほら


ウンスはチェヨンの手を取り
自分のお腹に当てた


勢いよく蹴りつけるみぃ


すまぬ
すまぬ
まずはそなたが先だな
元気に生まれて来いよ


チェヨンがなだめるように
お腹をさすると
みぃの動きが静かになった


薄雲の合間から
お日様が降り注ぐ

ふたりの一日が
また始まった


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『今日よりも明日もっと』
ずっと一緒が
ずっと続く未来へ