夕暮れが過ぎ
典医寺で待っているであろう
ウンスの元へ急いでいた
チェヨンは
兵舎から典医寺に向かう途中で
叔母チェ尚宮に
呼び止められた


ウンスの所に
迎えに行くところか?


あ?ああ
少し遅くなったゆえ
急いでおる
なんか用か?


なんか用かとはなんじゃ
相変わらず締まりのない
顔をしおって
そんなに妻が恋しいか?


ああ
なんか文句が


チェヨンの答えを
聞き終わらないうちに
ばしんと平手が
肩に飛んできた


よくも王宮で
抜け抜けと


事実であるから
致し方ない


チェヨンはにやりと笑う
呆れたように
チェ尚宮は肩をすくめ


まったく困った夫婦じゃ
此度もまた
とんでもないことを
願い出おって
そなたはどこまで妻に甘いのだ


もう耳に入ったか?


ヨンや
王妃様付きの武閣氏の私の
情報網を甘く見るでない


ああ   わかった
わかった
その話ならば
もうよいであろう
ウンスを待たせておる
典医寺に行かねばならん


ヨンや
人の話は最後まで聞くものぞ
乳母のことじゃ
そろそろウンスも
産月が近いであろう?


まだまだ先ではないか?


たわけ!
ニカ月くらい
すぐ過ぎるわ
ウンスは乳母をいらぬと
言うておるが
チェ家の跡取たるもの
そうもいくまい


そうか?


ゆえに
そろそろ
乳母を決めねばならぬ


しかし
ウンスの気持ちを一番に
いらないというなら
乳母はいらぬ


何をたわけたことを
ヨンや
そなたそれでよいと
まさか言うたのか?


よいも何も
言い出したら聞かぬ気性で
あることくらい
叔母上も知っておろう


なれどな
典医寺で医仙として
役目を果たすつもりならば
乳母なしでは
立ち行かぬぞ
ソンオクが若ければ
あの者に任せたい所だが
いささか無理があろう


そうだな
ヘジャもやりずらい
であろうしな
だが   もう少し待って
やってくれ
自分が納得しなければ
決して首を縦には
振らぬ方ゆえ


まあ   そうかも知れんが


この件は今日は
もう仕舞いだ


まだ何か言いたげな
叔母チェ尚宮の話を
無理やり畳み
チェヨンはウンスの元へと
急いだ


まったく呆れて
開いた口がふさがらぬわ


足が宙に浮いたように
軽やかに典医寺に向かう
甥の後ろ姿を眺めながら


まあ幸せそうで
何よりではあるが


そう呟くチェ尚宮だった


辺りは薄暗く
もうすぐ闇に包まれる
空には星が瞬きはじめ
夜が来たことを告げていた


なかなか迎えに来ない
チェヨンを思い
ウンスは自分の部屋の窓から
外を眺めていた

ポムとヨンファは部屋の外で
何やら楽しげに話している
この見慣れた光景も
あとわずかだとウンスは
気分が沈みかけた

幸せには少しの寂しさが
ついてくるのだろうか?

ポムが幸せになることは
勿論何よりうれしく
ましてや相手がチェヨンの
もっとも信頼する部下
チュンソクなのだから
喜びも倍になる

ウンスは
くだらない気持ちを
振り落とすかのように
頭を振った


ちょっとのことで
すぐに不安になるなんて
やっぱり妊婦だから
気が乱れたりするのかしら?


気が乱れておるのか?


チェヨンが部屋に入って来て
尋ねる


ヨン
遅いからどうしたかと
思っていたのよ
それに例の件


戸口のポムには
聞こえないように
顔を近づけ密やかに
ウンスは聞いた


ああ   大丈夫だ
チュンソクには
言い含めたゆえ


そお?
よかった!


ウンスがうれしそうに
笑って言った
その笑顔にほっとして

気の乱れはもうよいのか?


チェヨンが聞いた


ええ   ヨンの顔見たら
直っちゃったわ


そうか
では   帰るとするか


うん   帰ろう我が家へ
ねえ   今日はお風呂で
背中を流してあげようか?
いつも
面倒見て
もらうばかりだから


ウンスの甘い囁きが
頭の芯に届く


あ?
そうか?


にやつく気持ちを
押し殺してチェヨンが
平静なふりで返事をした


ますます
早く帰りたくなるな


うん    そうね


屋敷につくのも
待ちきれないくらい
熱い気持ちを持て余し
屋敷を目指すふたりの影

チェ家の夜は
今宵も
熱い夜になりそうだ


*******


『今日よりも明日もっと』
まったりとした夜を過ごし
あなたのことを
癒してあげたいな






其の三十八にたくさんの
予想ありがとうございます

婚約パーティーが
ダントツ人気予想みたいです
それも素敵!うふふ

さて正解は?
もう少しお待ちくださいね

まだまだ予想受け付けます
戯れ言に
おつきあいくださいませ

当たり!の方には
メッセにて
ご連絡いたしますヨン