困惑顔のチュンソクを
目の前にして
チェヨンも弱り果てた
もともと 面倒なことに
巻き込まれるのは苦手だ
特に男女の機微などは
自分とウンスのことで
手一杯

だが他ならぬチュンソクの
婚礼話 捨て置く訳には
いかぬ
さて どうしたものか?

チェヨンはふぅと息を
吐き出してから
チュンソクに尋ねた


聞いたか?


はあ・・・


で どうする?


どうもなにも
昨夜 
急に屋敷に戻るようにと
言づてがあり
急ぎ戻れば パク殿からの
婚儀の約定が届いたと
寝耳に水とは
まさにこのこと


渋い顔がさらに渋くうなる


ああ 俺も昨日パク殿から
意見を求められてな


はあ


そなたは申し分ない男ゆえ
そのように伝えた


はあ


その後 気にかかることが
あったゆえ 
そなたには
会わずじまい・・・


少し申し訳なさそうに
チェヨンが言った

気にかかることは昨日の
軍議のもめごと
それとそれを医仙様に
伝える気の重さであろうと
チュンソクは思った
だが その割に朝から
浮かぬ様子はない
医仙様とは上手く折り合いを
つけたのであろうと
チュンソクは推察した


はあ 某は
いずれにせよ
お断りしようかと
そう思っております


やはりそうなるか


家柄もパク家と言えば
チェ家に並ぶ名家
家門の誉れ高き御家
とても婿がつとまるとは
思いませぬ


家柄とか名家とか
あちらはそのようなことには
こだわってはおらぬ
そなたの働きぶりを
間近で見て 娘御を託そうと
思われたようだが・・・


はあ なれど
年も違いすぎます
あちらは確かまだはたちとか
親子ほども離れております


親子は言い過ぎであろう
それにそこはそれほど
気にせずとも
好いてしまえば
年がどうのなど関係ないで
あろうが
我妻は年上であったしな


はあ


今 ウンスが娘御と話を
しておる頃だ
いかかであろう?
向こうが 会いたいと言えば
一度くらいいは
席を設けても構わぬか?


なれど この戦のおり
そのようなことに
時間を割くなと


チュンソクが渋る


それは分かっておるが
戦が近いからこそ
パク殿も急いているのであろう
それに戦の話を聞いて
意気消沈していたウンスが
興味をしめしてな


はあ


俺の顔を立てると思って
すまぬが 会うだけでも
会っては見ぬか?


結局は医仙様の御為か?
チュンソクはふっと笑った
まあ そう言うことならば
仕方ない
大護軍の顔を立てると
するか・・・そして
あちらから
断ってもらえばよい
と 思った


はあ では御意に


そうか すまぬ


チェヨンは安堵したように
チュンソクに言った


それにしても一日分
話をした心持ちだ
他人のことに
一生懸命になるウンスの
性分が
自分にも乗り移ったか?
とチェヨンは一人苦笑した



その頃ウンスは
泣き顔のポムと話をしていた


とにかくポムは
嫌でございます


どうして嫌なの?


武閣氏をやめたくは
ありませぬ
医仙様にお仕えしとう
ございます


うん それは聞いた
でもね チュンソクさんは
ほんとうにいい方よ
あの 面倒くさがりで
すぐに丸投げしちゃう
上役の大護軍にも
よく尽くしてくれてるわ


はあ でも
それはポムには
関係ありませぬ


そんなことないわ
結婚するなら
彼みたいな人が
いいと思うの
今時 珍しいくらい
堅物で実直
女遊びや賭け事なんて
もちろんしないし
優しくて思いやりもある
それに
いい男でしょう?


なれど 婚姻を結べば
武閣氏を
やめねばなりませぬ
まだ 医仙様の
おそばにいたいのです


でも 私はポムに
幸せになってほしいわ
チュンソクさんは
ヨンの部下だから
この先 一生家族ぐるみで
おつき合いも出来るし


一生?家族ぐるみ?


ええ そうよ


なれど・・・


考えるように天を見つめて
それからポムは
神妙にウンスに言った


やはり婚儀など
無理にございます


どうして?


我らのようなものは
たしかに
家同士が決めた婚儀が
当たり前にございます
なれど 私は
医仙様と大護軍様の
お姿を知っております
互いに想い思われ
慈しみあって
うらやましゅうございます
ポムもだれかを
一生懸命お慕いして
その方と添い遂げるなら
まだしも・・・


で でも
チュンソクさんと
そうなるかもしれないわ


なりませぬ


どうして分かるの?


話したこともありませぬ


じゃ じゃあ
うちで会わない?


ウンスがここぞと
ばかりに畳み掛ける
ポムが一瞬泣き止んで
ウンスを見た


ほら 我が家は 
チュンソクさんの
上役の家な訳だし
それにポムは私専属の
武閣氏なんだから
うちで会うのが一番いいわ
それにポムをお客様として
お招きしたことは
まだ一度もなかったわよね


お客様・・・
ポムの目が少しだけ
見開いた


じゃあ お招きするわ
素敵な夕餉にしましょう
美味しいものを用意するわ
そう 
パーティを
しましょうよ


? ぱーちい?


ポムは天界の呪文に
すっかりかかって
しまったようだった


ええ そうパーティよ
そこでチュンソクさんと
お話ししたらいいわ
お互いを知らないで
お断りするなんて
もったいないわよ
確かに年は離れているけど
その分大事にしてくれそう
じゃない?
とにかく 善は急げよ!


ウンスが
張り切った声を出す


明日はどうかしら?
私もちょうど典医寺から
お休みを頂いていたし


ぱーちい・・・
うるっとしてたポムの目に
輝きがもどった


かわいい子
チュンソクさんも
ポムの
素直で明るいところに
惹かれるといいんだけど
ウンスは胸の内で
思っていた


*******


朝のひんやりした空気も
どんどんと暑さを増した

昼を過ぎた頃に
チェヨンが典医寺の
ウンスの自室を訪れた

ウンスはどうも
暑さに弱いようで
椅子に腰掛け
ぱたぱたと
扇で顔をあおいでいた
見ると
足元をたくし上げ
白く細く
きれいなふくらはぎを
あらわに出していた


扉を開けたチェヨンの目に
それが飛び込んで来る
はっと息をのみ
だれにも
見られなかったことを
確認してから
ほっとため息をついた


イムジャ チェ侍医でも
入って来たら
いかがするのだ
そのような なりをして


だれも来ないわよ
一人なんだから


なれど


チェヨンは
裾を降ろした


だって 暑いんだもの
そのままにしておいてよ


不満げにウンスが言う


ならぬ
閨ならば いざ知らず
少しは俺の身にも
なってくれ
他の男になど見せられぬ


おおげさなんだから
誰にも見られないわよ
それに
これくらい足を出すのは 
天界では当たり前よ
もう 暑い日は
肩も おへそも
あ 胸も出しちゃうかも


ウンスはわざと
挑発するように
チェヨンに言う


イムジャ 
イムジャはまさか天界で
む む


胸?
ええ 
谷間のこーんなに
開いた服だって
来てたわよ


ぐっと胸元を広げると
柔らかに丸みを帯びた
ふくらみ


ならぬ とにかく
そのような衣は
ならぬ


昨夜のお預けもあって
その豊かな胸に
喉を鳴らしながら
チェヨンは
ウンスに言った


もう 暑いのにな
ねえ みぃ


ウンスが
お腹に話しかける


みぃ 母上がこれ以上
薄着になるなら
思い切り蹴るのだぞ


ヨンたら
なんてことを
みぃにさせるのよ


ウンスが笑った
それからふと気がついて
チェヨンに尋ねる


あら?何か用事だった?
それとも私が恋しかった?
とか?


そのどちらもだ


チェヨンがウンスを
暑くても
問答無用とばかりに
椅子ごとぎゅっと
抱きしめた


まったく イムジャは
目が離せぬ
困ったお方だ


うふふ 
目を離しちゃ いやよ
いつでも見ていて


ウンスがチェヨンに
口づけをねだる


唇が触れる
すんでのところで
ウンスが思い出したように


そうそう 
明日ね うちでふたりを
会わせてみたいの
チュンソクさんに伝えてね


そうか わかった
俺もそれを確かめにきた


そう よかった
これで心置きなく


ああ 心置きなく


チェヨンの言葉が
唇の上ですべる


ふたりの唇が重なった


*******


『今日よりも明日もっと』
一緒にいると心地よい
暑さを忘れてしまうくらいに




☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*


暑中お見舞い申し上げます

暑い! 夏です
妊婦のウンスには
ほんとに暑くて大変な夏!
でも 高麗は日本よりは
涼しいかな??


さて 今日は土用の丑の日

皆様の夕餉の膳に
鰻が 上るのかしら?


どうぞ
夏バテしませんように


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