風が舞い 陽射しも変わり
季節が移ろうこの時期
どうしても患者が増える

天界で言うアレルギーとか
気管支炎とか
気候の変化に対応出来ずに
風邪を引くとか
高麗も例外ではない


典医寺は連日満員御礼

患者に備えて念入りに
診察の準備を終えた
ウンスとチェ侍医は
診療室で待機していた

トギは薬草園に薬材を取りに
行っている

今日からまた診察に励もう
そう意欲に満ちたウンスと
それを見守る典医寺の仲間
チェ侍医

それは 王妃様の
朝の回診に伺う前のことだった

チェ侍医が思い出したように
ウンスに言った


そうそう 
お休みされている間に 
医仙様に
頼まれていたものが
出来上がりましたよ


チェ侍医が大事そうに
手に携えて 
ウンスの前に
ことりと置いた


ウンスが目を輝かせて
手に取った


すごい すごいわ
高麗の職人さんって
ほんとうに
天界にも負けないわね


興奮気味に捲し立てる


そ そうですか?
これで良いのかどうか?
言われた通りには
作らせましたが


いいの いいの
これよ これ
これから役に立つわよ
そうだ チェ侍医も
扱い方を知らなきゃね


ウンスはそれを持ち
おもむろに
診察台によいしょと
上がって寝転ぶと


ほら 来て来て


戸惑うチェ侍医を
手招きした


ほら 早く
これはね 天界では
医者の必需品なのよ
もっとも天界のは
これとは少し違うけど
聴診器っていうの
前にも
作ってもらったんだけど 
今度のは改良版
ほら ここが
広くなっているでしょう


そう言って寝転んだまま
チェ侍医に指差す


はあ


この方がより
正確に心音が聞こえるの
聞いてみて


自分の胸の上に
先が広がっている方を
押し当てると
カーブしている木筒の
反対側に
耳をつけるように促した


ここにですか?


ウンスの胸のうえに
聴診器は当てられている


い いくらなんでも
医仙様の心音は聞けませぬ


あら どうして?
聞いてみなきゃ
説明出来ないわ


どうしてもです
それに大護軍にこのような
ところを見られたら
いかがしますか


かまわないわよ
だって 
これは医療行為だもの
変なことしてる訳じゃない


なれど


もう 
じゃあ 私がチェ先生の
心音を聞いてみる
それならいいでしょう?
使い勝手も確認したいし
ほら 横になって


ですから 医仙様は
私の言いたいことが
本当に おわかりか??


つべこべいわない
いいから 横になる


起き上がった自分と
入れ替わるよう
チェ侍医に命令口調で
告げたウンスに
渋々と従い チェ侍医は
寝台に仰向けになった


ちょっと失礼
衣の上からだと
よく聞こえないかしら?


ぶつぶつ言いながらも
目を閉じて
心音に集中した


どどどどどどどど・・


え? なんかすごく
速いんだけど音
乱れているし?
大丈夫?
緊張してるの?


ウンスが顔を
チェ侍医に向けると
その柔らかな髪の先が
チェ侍医の顎に触れた


思わず 飛び起きる


びっくりした!
やだ どうしたの?急に


もう 俺
いや 私はいいですから
だれか 他のものに
やらせましょう


滅多に荒げぬ声を
荒げて チェ侍医が言った
それに気圧されて


そ そお?
じゃあ ポム・・・は
はしゃぎ過ぎるからだめね
ヨンファ?は?


薬草園から戻ったトギに
戸口の外にいる
武閣氏を呼ぶように伝えると
ヨンファはいないと
身振りで伝えた


あら? ポム
ポムはいる?


はい 医仙様
何か御用で?


満面の笑みでポムが
戸口から顔をのぞかせた


ねえ ヨンファは?


さあ ちょっと外すと
言ってましたが・・・


まったく 肝心なときに
いなくちゃ困るわね


ウンスはぼやいた・・・


その頃ヨンファは
典医寺でウンスがチェ侍医に
先ほど話していたことを
報告せねばと思っていた
身重のお体で
医仙として職責を担うなど
大丈夫なのであろうか?
ヨンファに不安がよぎる


ちょっと厠へと何食わぬ顔で
ポムに言うと


典医寺近くで待機していた
別の武閣氏を呼び
耳打ちしていた


「職責再開
大護軍様も了解の旨」


伝え聞いた武閣氏は坤成殿の
方角に消えていった



再び 典医寺では・・・
ウンスが
思い直したように
トギに言った


じゃあ トギ
トギの心音を聞こう
横になって


はあ?なぜ私が??と
不満を顔に丸出しし
トギが
思いっきり拒否をする


ウンスは はぁと
ため息をついた



********



『今日よりも明日もっと』
人の気も知らないで・・・



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