チェヨンはなかなか減らない
倭寇の群れにイライラしながら
鬼剣を振り下ろし続け
雷光を放ち続けた
バサバサと倭寇が倒れていく


チェヨンは
あのまま話もせずに
王宮に残してきたウンスのことが
どうにも気になって仕方なかった

一晩で片がつくかと思った戦も
次の日の昼までかかってしまった

なんとか   都への進入を阻止し
這々の体で逃げ出していく
倭寇を深追いすることはせずに   
チェヨンは
全軍に帰還命令を出した


チュンソク後は任せてよいか?


はっ
もう大丈夫でしょう
これ以上の被害は出ぬかと
倭寇も沖へと船を出したようですし
王宮へ一足早くお戻りを


すまぬ   チュンソク


こう言う時に多くを尋ねぬ
部下はありがたい

チュンソクはニヤリと笑うと


医仙様がお待ちでしょう
と言った


愛馬チュホンに鞭打って
王宮のウンスの元へと急いだ
テマンが後ろを追随する


ウンスの寂し気な顔が頭をよぎる


俺は大軍を率いる
高麗の大護軍としては
失格だ
こんな俺に命を預ける部下に
申し訳がたたん

だか許せ
俺にとってはいつも
イムジャが一番なのだ
イムジャがいないと戦う意味もない

誰に呆れられても構わぬ
とにかくイムジャの顔を見ぬうちは
なんとも気が落ち着かぬ

愛馬チュホンは主人チェヨンの
意のままに全力で王宮へと
向かっていった


*******


さてそろそろ
医仙様を寝台へ運ぶとするか


トギとチェ侍医が顔を見合わせて
いると
ウンスが誰に聞かせる訳でもないのに
寝言でチェヨンの名前を呼んだ


ヨン
ヨン   


その呼びかけに応えるかのように
テマンが走り込んできて


大護軍がお戻りになりました


と   息急き切って
典医寺に伝えた

トギがウンスのからだを揺すり
起こそうとしたが
ウンスは眠ったまま起きようと
しない

テマンよりやや遅れて
ウンスの部屋に到着したチェヨンは
卓の上で酔い潰れている妻を見て
やや驚いたような顔をした

テマンがトギに目配せする

トギがウンスを庇うように
大護軍を心配していたから
気を紛らわせるために
酒に付き合ったと伝えた

酒は王妃様からの差し入れだとも
伝えた

チェヨンはウンスの目尻の跡を
見ると    何も言わずに
おもむろにウンスをおぶった


皆があっけにとられ

チェ侍医が


屋敷までそれでは
大変でしょう
輿を用意させましょう


と申し出てくれたが


よい    このまま背負って帰るゆえ
すまぬ   妻が世話になったな


そう告げると
チェヨンはテマンにチュホンを頼み
ウンスを背負って帰路についた


ゆらりゆらりとおぶられて
温かい背中に守られて
ウンスは夢見心地で眠っていた

温かい
温かくって気持ちいい


まったく   イムジャには
困ったものだ
あんなに酔い潰れて
俺が戻らなければ
チェ侍医に介抱させたのか?


独り言のように呟いた


耳元で自分の名前を呼ぶ
声がする
起きたのかと思って
イムジャと声をかけても
返事はなかった
ただ寝言のように


ヨン
ヨン    ごめんなさい
ちゃんと見送らなくて
ごめんなさい
ヨン    早く戻って来て
お願いよ


と言った

チェヨンの首筋に温かいものが
流れて落ちたのを感じた


イムジャ
俺の帰る場所はイムジャのとこだけ
イムジャ以外の女人のことなど
考えたこともない    まして
昔のことなど思い出したこともない
何も心配することなどないのに


酔い潰れて寝ているウンスに
向かってチェヨンは語りかけた


うん・・・
ヨン    
ヨンがいないと生きていけない
私どうしよう


眠ったままウンスが答えた


イムジャ
イムジャを置いて逝くなど
あり得ぬゆえ
俺のつまらぬ意地で
イムジャには寂しい想いをさせて
しまった
すまぬ    イムジャ


ヨン
ヨン
あいしてるわ


背中で自分を呼ぶ
いとしい女人の声がする

屋敷まではまだ遠い
背中に感じる重みが心地よい

チュホンと後ろをついてくる
テマンに聞こえぬように
チェヨンは小さな声で囁いた


イムジャ   俺も愛してる


今宵もまたイムジャが
離せぬ夜になりそうだ



*******


『今日よりも明日もっと』
愛する者を背負う重みは
幸せの重み・・・



次回はアメ限で
お会いできますように☆-( ^-゚)v


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