結局 昼過ぎとなり
遠出は出来そうになかった


もう だから言ったのに


ウンスはご機嫌斜めだ


まあ たまには
この辺りを歩いてみないか
イムジャ あまり知らぬであろう


なんだか いいように
だまされてる 気がする・・・


そういえば トクマンから
霜花餅の評判の店を聞いたが


お餅?
霜花店(サンファジョム)?
元のお餅よね
好きな人に贈るって
聞いたことがある
それを食べにいくの?


ついでに市でも見てくるか?


チェヨンがそう言うと
ウンスの顔色が変わった


外套を着て屋敷を出る
昨夜からの雪が積もる道を
足元に気をつけながら
ふらふらと
ふたりでそぞろ歩く


考えてみたらこんな風に
ゆっくりとした時間って
なかなか ない
たまには
いいかもしれないな~

ウンスはそう思った

雪道に足元をとられ
ウンスがよろけると
チェヨンがさっと
抱えてくれる
それがまた頼もしくて
うれしかった・・・


イムジャは目が離せぬ
雪道に慣れておらぬであろう


チェヨンの腕の中は
いつだって暖かい・・・


チェ家の屋敷の周りには
豪華な屋敷が連なる
この辺りは両班でも
高官が多く住んでいるのだろう

高麗時代の家屋は
二階建ての家もあり
両班の屋敷は王宮にも負けない
朱色の派手な屋敷もあるが
チェ家の屋敷は家訓の通り
重厚だが 派手な装飾などは
いっさい みられない
ウンスはそんな我が家を
気に入っていた


しばらく歩くと
書堂(ソダン)があった


幼き頃 ここの書堂で
学問を習っておった


と チェヨンが言う


書堂から わいわいと 
子供達が出てくるのが見えた


ああ 子供の頃はあんなふうに
学びんでいたのかな~
どんな子供だったんだろう?

ウンスの知らない彼がいる


ねえ もし
私達に子供が出来たら
ここに通うのかしら?


ウンスのもらした言葉が
くすぐったいような気がして 
チェヨンは笑みをもらす


いつか 自分も親になる日が
くるであろうか
俺の子をイムジャが
産んでくれるのか・・・


心の中にふわりと温かいものが
流れた気がした・・・


霜花餅は トクマンの言う通り
ウンスを満足させた

チェヨンはウンスが餅を
頬張る口元を眺めながら
その餅よりも柔らかいウンスの
頬の感触を思い出していた


なあに?
なんかよからぬことを
考えてる時の顔だわ


ウンスが笑って言った


また よからぬことを
したくなったと言ったら
イムジャは頬を
膨らませるであろうか・・・




都の真ん中には
大きな市場があり
諸国の珍しいものが
取引されている


通りの脇に 簪屋があった
ウンスはなにげなく 
店を覗いた
かわいいかんざしがいっぱいある


あまり髪は結わないけれど
こういうアクセサリーを
見るのは楽しい


紅い珊瑚のかんざしと
深い緑の翡翠のかんざし
どちらも美しく心惹かれた


自分へのご褒美に
買って帰ろうかな?
どっちにしようかと 
じっと考えた 


チェヨンはつき合うのが
面倒くさくなったのか
少し離れたところの 
柱にもたれて
目を閉じていた


疲れているのかな?
つき合わせちゃったかな
かんざしは また今度にしよう


手に持っていたかんざしを
置こうとした時


右だ


チェヨンの声がする


右?


目を閉じたままの
チェヨンが言った


ウンスは自分の右手を見る
その手には翡翠のかんざし


店主 それをもらう


チェヨンが店主にそう告げて
さっさと買い物を済ませ
ぽいと ウンスにかんざしを渡す


イムジャにはこの方が似合うている
それに男どもの虫除けにもなるしな


優しい目をして笑った


全然 気にしてないと思ったのに
全然 見てないと思ったのに
ちゃんと 考えていてくれたんだ
チェヨンが選んだかんざしが
うれしくって 
ウンスはぎゅっと握りしめた


イムジャは翡翠の玉の
意味を知っておるか?


チェヨンが不意に尋ねる


魔除けとか 不老長寿とか
そんな意味じゃなかったかしら?


と ウンスが言うと


正妻


そう言った


俺はこの先 
側室を持つつもりは
まったくないが 
イムジャが俺の正妻だと
皆に知らしめるには
ちょうど良い


だから 虫除けか・・・
ウンスはくすりと笑って
チェヨンにぴたりと
くっついて言った


ありがとう 大事にする


チェヨンがウンスの肩を
抱きしめた・・・


まだ寒い冬の日 昼下がり
どんな場所も
ふたりを優しい日差しが
包んでいる



*******



『今日よりも明日もっと』
幸せって ささいなところに
転がっている・・・



★amybftp357様
もうご本人がお忘れになっている
のではないかと言うくらい
以前にいただきました
「ふたりの散歩風景」のリクエスト
やっとお応えできました
気に入って頂けるとうれしいです



お話の後半は 先日の「火急の用」で
アメンバー様に
お贈りしたお話を加筆いたしました
皆様にお贈りしたお話と読み比べて
いただけると また面白いかと
おもいます




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