読了。
訳書の資料として読んだけど、予想外のところに斬り込まれ、考えさせられた。
著者のジェームズ・ラブロック(御年102歳!)は生物物理学博士、医学博士で、地球をひとつの生命体であるとする「ガイア理論」によって、ひところ環境主義のアイコンとなった。
『ガイアの復讐』は2006年に出版されたもので、人間が野放図な拡大路線をとったことでガイア(地球)は傷ついていて、ガイアの自己修復の過程で人間および地球上のすべてが壊滅的なダメージを受けることになるだろう、と書かれている。
この本では、
- 気候変動により人類は北極付近でしか暮らせなくなる
- 二酸化炭素排出を削減すべき
としていたけど、ラブロックの現在の考えは、
- 5年、10年先の気候予測は無理(不確定要素が多い)
- 人類のこれまでの活動より、たったひとつの火山の噴火のほうが地球温暖化への影響が大きい
と変わっている。
私は科学/化学に明るくないので、なにが環境に良いか、というとどうしてもイメージ先行になってしまうのだけど、科学的根拠を考えるとイメージには間違いも多く、勉強になった。
10年以上前の本なので、状況に変化もあるだろうけれど、考えさせられるところがいっぱい。
以下はメモしておきたい言葉たち。
現代の子供たちは計算機がなければ一列に並んだ数字を足すことも満足にできないという事実を例にとって、彼らはそれは悪いことではない、なぜなら人間は発達段階において不足のない新しいスキルを得ると、それと引き換えに、もはや必要とされないスキルを手放すからだ、と説いたのである。石器時代の人間も、おそらくわれわれと同じくらい生きることに忙しかったことだろう。
こういったダメージを受けた細胞の多くは、どの細胞にも含まれるカスパーゼと呼ばれる死を誘発する酵素を使って、自殺する。これが作動すると、細胞は手順に従って整然と崩壊に向かう。これがアポトーシスと呼ばれる驚くべきプロセスだ。われわれのひとりひとりが、自分は役に立たないどころか害になると判断するや、完璧な手順で自分を分解し、将来他の人間が使えるようにきちんと規則正しくスペアパーツごとに仕分けして果てるところを、想像してみてほしい。
一部の人がヘロイン中毒になるように、国家は経済成長中毒になる。おそらくわれわれはより安全な代替物、つまり経済学者のメタドン(ヘロイン中毒治療薬)を使うことによって、渇望を抑制し続けなければならない。