地上界、つまり人間が住む地球では、一人溜息を吐いている少女がいた。
彼女の名前は木元優子。高校二年生になったばかり。普通にどこでも居る女子高生だが、悩んでることがある。
『自分に生きている価値なんてあるのか?』
視力が悪いため眼鏡をかけると、地味さが増す。
そのせいで中学の時にイジメに遭い、それ以来、他の人とうまく話せない。
うまく話せないのでいつも俯いている。だから友達と呼べる人が全くと言っていいほどいない。
こんな負の連鎖の極みのような自分は、生きている価値なんてきっとない。
ずっとそう思ってる。
新学期が始まり、新しいクラスになったが、そこにも馴染めずにいた。
断りきれない優子の性格を知ってか知らずか、副委員長を押し付けられ、他の役員の仕事すらも押し付けられたりしている。
溜息を吐くのが日常になっていた。
一方天界では、そんな優子の様子をじっと見守る天使がいた。
「ヨークッ。何しかめっ面してんだよ」
仲間の天使、ダンが話しかけてくる。
「別に」
「……。あの子のことか?」
ダンに図星を突かれ、ヨクは黙り込んだ。
「気持ちは分かるけどさ」
「俺らは……ただ見てるだけしかできないのか……?」
ヨクの呟きにダンは何も言えなくなった。
「あの子は自分でも気づいていないような、良い所がたくさんあるのに……」
「ヨク。そんな人間、今までもたくさんいたじゃないか。でもある時期が来ればきっと分かるときが来る。あの子だってきっと同じさ」
ダンが言うことは分かる。でもほっとけない。
「お前、もしや地上に降りようとしてるのか?」
ダンに言われ、動揺する。
「よく考えろ! 地上に勝手に降りることの大罪を分かってるのか?」
「分かってるよ。一度地上に降りたら、二度と戻れないことくらい……」
ヨクは呟くように答えた。
「分かってるなら、もう必要以上に考えるのを止めろ。いいな」
ダンに強く言われ、ヨクはコクンと頷いた。