私が中学生のころ、どこのクラスでも大なり小なりいじめがありました。

 

まだ不良もいた時代。

 

 

ある日突然、机の上にゴミ箱のごみが山盛り乗せられていたのがいじめの始まりでした。

 

私自身は、不良と呼ばれたりオタクと呼ばれたりする人とも一対一で仲良くなるタイプで、グループに属するのはもともと苦手。

友達はいましたが、一人でも平気。

 

いじめもいつものことなので「ああ次は私に回ってきたのか」と思うぐらいでした。

 

びくびくしない、後ろめたいことがなければ堂々としていればいいわけで、私は「散らかしたら片付けないとね」といい、先生が来る前にパパっとゴミを片付けました。

 

いじめっ子たちは、いじめられる側の反応を楽しんでいるわけですから、泣いたり驚いたりしない私の反応はつまらなかったと思います。

 

しかし無視され続けるのももちろん面白くありません。

いままで何気なくしていた「おはよう」とか「じゃあね、バイバイ」の挨拶が突然返ってこなくなるのです。

 

私は、それならば返ってくるまで続けよう!と思いました。

 

最初は「おはよう!」と挨拶しても思いっきり無視されました。

 

次の日はもっと大きな声で「おはよう!」と言いました。

 

もちろん無視されました、いじめですから。

 

3日目にはもっと笑顔で「おはよう!」と言ってみました。

 

小声で返してくれる人が出てきました。

 

4日目には小声で返してくれる人と、遠くから私を見つけると挨拶される前に急いで逃げる人に分かれました。

挨拶をされて挨拶を返さないというのは、無視する側もとても居心地の悪いもののようです。

 

そうなると私を見た途端逃げ出すので「どっちがいじめてるんだかわからないな」とちょっと面白くなってきます。

 

だんだんゲーム感覚で、「おはよう」と言って返してくれる人が増えてくるのを楽しみ始めました。

 

そして1週間もすると今まで仲の良かった子は普通に挨拶をしてくれるようになりました。

 

10日もするとクラスのみんなのいる前でも普通に話してくれました。

 

クラスの調和が乱れ始めます。

 

「なんで挨拶を返すの?」と責めるクラスメイト、「だって挨拶されたから」と平然と返すクラスメイトの会話が聞こえてきました。

 

そのころには「ごめんね、無視しろって言われて無視してしまった」と謝ってくる子がいたり、またある子は私のところにきて、今回のいじめの本当の首謀者はあのコバンザメだよ、あることないこと言ってるよ、と教えてくれたりしました。

 

リーダーにくっついているコバンザメの子も、自分がいじめられる側になりたくないとか、自分が認められたい、力があると思いたいがために次々にいじめのターゲットを作っていたのでしょう。

 

小学校から一緒だったそのコバンザメの子の弱さを知っていたので、恨む気持ちはありませんでした。

 

リーダー格の子についても、本当は家族思いでやさしい、責任感のある子だと思っていました。

たまたま休みの日に、デパートでその子を見かけたとき、年の離れた末っ子の弟をずっと抱っこしてあやしていた姿がとても素敵だったからです。

 

次の日私は、下駄箱にいたリーダー格の子に駆け寄って笑顔で「おはよう!」と挨拶をしました。

 

その子は目をまんまるくして驚き、「あっ・・・」とだけ言ってそのあと逃げるように教室に向かいました。

 

その日の放課後、部活の途中でクラスの前を通りがかった時のことです。

 

クラスの数人が話している声が聞こえました。

 

「〇〇(私の名前)はいい子だよ、もういじめるのやめよう」

リーダー格の子が仲間にそう言っているのが聞こえました。

 

結局2週間もたたずにいじめは止みました。

それどころかリーダー格の子がとびきりの笑顔で私に「おはよう!」と挨拶してくれました。

 

その後卒業するまで私のクラスでは二度といじめはありませんでした。

 

挨拶にはすごい力がありました。

 

もちろん、そのあとも私は人間関係で何かあると挨拶を心掛けました。

もっと元気にもっと笑顔で。

 

新しい環境での友達作りや、社会人になり営業として働いたときには得意先と仲良くなれたり。

 

前任者が担当していて全国最下位だった営業成績がトップになれたのも、まずは挨拶をしっかりすることが助けになったのだと思っています。

 

挨拶って敵を味方に変えてしまう、まさに無敵なんですね。