評価:75点/作者:水島司/ジャンル:歴史/出版:2010年
『世界史リブレット127~グローバル・ヒストリー入門』は、山川出版社の歴史シリーズ、「世界史リブレット」の第127弾。
宇宙の誕生から、現在に至る、歴史について、考古学、自然科学の知見を含めた、グローバル・ヒストリーに関する、入門書。
本書の作者である、水島司氏は、東京大学文学部卒業後、同大学院人文科学研究科修士博士課程終了。
東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所教授を経て、本書執筆の2010年時点では、東京大学大学院人文社会系研究科教授。専攻は、南アジア近現代史。
グローバル・ヒストリーの潮流が、現在、大きく、高まっている。アメリカにおいては、世界史協会が設立され、普及活動が行われている。
日本では、近年、多くの本が、翻訳、出版されている。グローバル・ヒストリーは、従来の世界史とは、何が、異なるのか。
第一の特徴は、対象の時間の長さである。従来、考古学の範囲であった、有史以前の人類の誕生から、現在までを扱うのは、無論、場合によって、宇宙の誕生までが、含まれる。
宇宙の誕生、生物の誕生、種としての人類の特殊性、人類の臣下、農業の出現、農業文明の諸章を経て、ようやく、紀元千年以降の時代を扱う、本もある。
人類を地球環境の一つの要素として扱う、研究においては、自然科学系の学問的手法が、援用される。
宇宙史、人類史全体を含まない場合でも、数世紀に渡る、長期的歴史動向を扱う場合が多い。歴史を巨視的に見ることに関心があるためである。
第二の特徴は、対象のテーマの幅広さ、空間の広さである。
従来の歴史研究において、扱いの少ない分野、疾病、環境、人口、生活水準など、日常に近い、しかし、社会変動、歴史変動における、その役割の重要性を考えている。
対象の空間は、ユーラシア大陸、インド洋世界等の様に、陸域、海域全体の構造、動きを問題とする。一国史と呼ばれる、一つの国に限定された、分析に終始することはない。
また、地域比較で終わらず、異なる、諸地域の相互連関及び、相互の影響を重視する。
第三の特徴は、従来の歴史叙述の中心にあった、ヨーロッパ世界の相対化、あるいは、ヨーロッパが、主導的な役割を果たした、近代以降の歴史の相対化である。
ヨーロッパの歴史的役割、先進性の意味が、再検討され、その対比として、従来、重要しされなかった、非ヨーロッパ世界の歴史、その歴史発展のあり方を重視する。
ヨーロッパ世界の相対化は、「東アジアの奇跡」と呼ばれる、日本を筆頭に、東アジアの諸地域の休息な経済成長及び、中国、インドの近年の経済大国化という、現実の世界での劇的な変化が、過去の歴史過程に関する、解釈の見直しを迫ったと言える。
本書は、ヨーロッパ世界の相対化、環境、移動と交易、地域と世界システムについて、研究書を紹介することで、入門書の役割を果たしている。
広い視点で、歴史を理解したい、グローバル・ヒストリーに興味のある、歴史家にとって、本書は、最適な一冊である。
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