何かと落ち着かない毎日を過ごしているうちに10月に突入し、今年もあと3ヶ月となった。非常事態宣言が解除となったことで今度こそ社会的にも少しずつ落ち着いていけるのだろうか? そうだと良いな…と強く思うけど、第6波を懸念する声も大きく、まだまだしばらくは今のままの生活が続くのだろうなぁ。あちこちの神様たちものんびりと出雲大社に行っている場合ではないかもしれない。

そんな中、ポコっと一冊の絵本が届いた。
あまり聞かない出版社からの平べったい小包を手に、これは一体何だろう??? としばし考え込んだ挙げ句に、そう言えばもうずいぶん前(2年以上にはなるかも)にwebで絵本を注文していた気がする…とうっすら思い出した_(^^;)ゞ
ボローニャ・ブックフェア(イタリアで開催される世界的な児童書の見本市)で2008年に絶賛されてから注目を浴びた南インドの小さな出版社Tarabooksの「The Night Life of Trees(夜の木)」
タラ・ブックスでは古布を漉いた手漉き紙にシルクスクリーンで印刷し、職人さんが一冊ずつ丁寧に製本する工芸品のようなハンドメイドの絵本を作っている。日本語版は2012年から出版されているが、ハンドメイドなので量産できず、一冊一冊にシリアルナンバーがふられているらしい。再版されてもすぐに完売してしまうほどで、中古品で売りに出されているものには定価の何倍もの値段がつけられていて手が出ない。図書館に行ってもなかなか出会えず、一度実物を手にとってみたい思いが高まっていたところに、次回入荷時の予約ができる通販の本屋さんを見つけて登録していたのだった。
包んでいた紙から取り出すと、インクの匂いが漂ってきて、手触りもしっくり馴染む気がする。小さな頃にお土産で絵本を買ってきてもらった時のような懐かしい気持ちになった。ページをめくるたびに現れる不思議な木のイラストと短いインドの伝承にみとれて時間を忘れてしまう。
ボローニャ・ブックフェアで受賞したラガッツィ賞は、作家やイラストレーターにではなく編集、装丁を含めた総合的にその本そのものに贈られる賞だ。そのことが心から納得できた。
届いたのは第10版、シリアルナンバーは456/3000と入っている。インドでのコロナウイルス感染拡大についても連日かなり厳しい状況が報道されていた。予定よりも大幅に時間はかかったけれど、職人さんたちが集まることができない状況を乗り越えて、この本は日本の我が家にやって来たのだと思うと感無量だ。