映画サマーオブソウル見どころと【日本初公開】開催された場所を一挙紹介 by NYハーレム松尾公子 | ニューヨークとハーレムと音楽のはなし

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NYハーレムの高級住宅街に暮らして22年。「好き」を仕事にした女社長、音楽プロモーター&NYコーディネイターKimikoが綴るニューヨークの話、ハーレムの話、音楽の話、エンタメ、差別問題、映画、ファッションetc.


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50年前、誰も興味を持たなかった40時間の映像が、

2021年、世界を興奮させることになった。



全米で7/2に公開され、
この夏の話題となっている映画「サマーオブソウルが、

いよいよ8月27日(金) 日本で公開される。



1969年夏、
NYハーレムのマーカス・ガーベイパークで開催された無料コンサート、
「第3回ハーレム・カルチュラル・フェスティバル」。
(今でも夏にハーレムで行われる屋外イベントは基本的に全部無料、豪華アーティストが出演します)


黒人の街として知られるハーレム住民が、
「こんなに黒人が集まっているの見たことなかった」
と新鮮に驚いたと言う。




【日本初公開!これがマーカス・ガーベイパーク】
ブラック・ウッドストックと呼ばれた伝説のコンサート、のべ30万人を集めた無料コンサートが行われたのは、こんな小さなハーレムの公園だった↓

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自分がその場にいる気分を味わっていただければ幸いです。

YouTuberではありませんので、自分が出てきて喋ることも無い、静かな、脚色のない映像を目指しています


1960年代
ジョン・F・ケネディ、マルコムX、キング牧師…
リーダー達が暗殺され

暴動、強奪、警察暴力、デモ、薬物蔓延….



1969年は
色々な節目、新しい始まりの時だった。




<見どころ① 「BLACK」の誇り>

●映画サマーオブソウルの中で、
特に心に残ったシーンのひとつが

ニューヨーク・タイムズ紙の黒人女性記者の「BLACK」の話。


BLACKと書いた記事の見出しを
白人編集者に(当時黒人の呼称だった)ニグロに当然のように修正された。

それでもBLACKにこだわり続け、
最終的に、
新聞はニグロでは無く「BLACK」で印刷された。



Negro died, BLACK was born.




ニグロという蔑称から、

Black Power, Black is Beautiful, アフロヘアー, ダシキ…

誇りを持った「BLACK」に世の中が変わっていった時だった。




※警察と闘うブラックパンサー党がコンサートの警備をしていたというのも時代の象徴




-<見どころ② ファッション>

●黒人のファッションに対するこだわり、センスも、映画全編で見逃せない


特に、
当時テンプテーションからソロになって
アイドル並みの人気だったデヴィッド・ラフィンが

「My Girl」を歌う際の
真夏なのに毛皮には是非注目して欲しい。



他にも、

予算が無くてシンプルなセットなのに

色合わせの才能に長けた黒人アーティストの衣装のお陰で

今見ても色褪せないステージシーンになっていることに是非注目したい。


※エドウィン・ホーキンスとゴスペル隊が歌うO Happy Day。クワイヤーの鮮やかなローブの色がステージセットに見事にマッチしている


※全回を通して、フリンジを多用した衣装を着ているアーティストがやたら多い、当時最も旬だったヒッピーファッションの先駆け。



※アメリカではかなり有名なのに、日本では余り知られていないグラディス・ナイト&ザ・ピップス。
予算の関係か、このたった一本のマイクでコーラスを入れるThe Pipsブラザー達のキレのある斬新な踊りに、とにかく瞬きを忘れて釘付けになる



観客が一気にステージに詰め寄るスライ&ザ・ファミリー・ストーン のパフォーマンス、


ハーレムが誇る作家ラングストーン・ヒューズから「扉を開け!」と言われたことを語り、歌う、
ニーナ・シモンの “Young, Gifted and Black”

は、

ここで多くを語る必要も無く、とにかく素晴らしい。




< 見どころ③ 50年経過し、今もなお…>

1968年、キング牧師が暗殺され、
ハーレムでは暴動・強奪が起こり、
繁華街の店は一斉に鉄のシャッターを取り付けた。



2020年5月、ミネソタでジョージ・フロイド氏が警官に殺害され、ハーレム繁華街の店は強盗を恐れてガラス面を板貼りにした。全米で、ハーレムで抗議活動が続いた。私もすぐに運動に参加したひとり。


1969年、アメリカのアポロ11号が月面着陸。みんなテレビに釘付けになっていた時に、ハーレムではこのフェスティバルが開催されていた。


2021年、テスラ、Amazon、億万長者達が、月旅行を始めた。


今も昔も、多くのハーレムの人たちは、
そんなことより暮らしを楽にして欲しいと口にした。


マスクをしているかいないか、の違いこそあれ
その光景が私の目には重なって見える。
50年、変わっているようで変わっていないのか。




<見どころ④ ゴスペルは黒人のセラピー>

いつもハーレムでお世話になっている牧師であり人権活動家のアル・シャープトンにこう言わしめた↑
映画中盤から、圧倒的に盛り上がりを見せるのが
ゴスペルのステージ。

彼らは、教会の中で歌うときも、
教会の外でいかなる観客を前に歌うときも、

魂は天だけに向いている、

全身全霊で、全てを振り絞って、なりふり構わず歌う。叫びのように。



特に、
マヘリア・ジャクソンとメイヴィス・ステイプルスが歌う Take My Hand, Precious Lord には、
1ミリのエンターテイメント性もない。

それぞれが、そして聞いている観衆もが、
心を天に向け手を合わせる瞬間、
まるで時が止まったかのように。


実は、
本来ここは、アレサ・フランクリンとマヘリア・ジャクソンが共に歌うはずだったところ。

直前のアレサのキャンセルで、急遽、若きメイヴィスにこの機会が回ってきたという。

そんなことにも全く動じることなく、
大先輩であるゴスペルの女王マヘリアから途中マイクを奪い取ってメイヴィスが歌う姿に、、、
〜 ゴスペルの真髄を見る。



(キング牧師の側近として活動していた若きジェシー・ジャクソンが二人を紹介する。現在79才コロナで入院中、ハーレムでお世話になったひとです。是非お祈りください)



最後に、

このサマーオブソウルが初監督となったアーティスト、クエストラブ。
The Rootsとして毎晩毎晩人気TV番組Tonight Showのハウスバンドも務めながら、


この40時間のオリジナル映像を
可能な限り、至る所で見て編集していったという。



既に今年1月サンダンス・フィルム・フェスティバルにて、

“グランド・ジューリー賞” と “オーディエンス賞” を受賞している。



この映画を見た誰もが、

音楽のこと、その背景、もう沢山のことを語りたくて喋りたくてしょうがなくなる。


私もこの長いブログで、思っていることの半分以上を削ぎ落としてもこの長さ。


それだけ観た人に、沢山のものを残す映画なんだと思う。


本当に、クエストラブに「Great Job! 有難う」と言いたい。




2021年4月22日グラミー授賞式のミュージック・ディレクターを務めたクエストラブ。ゴールドのクロックスサンダルで登場。
このグラミー授賞式放送中、「サマーオブソウル」のCM映像と映画公開日が突然発表され、一斉に話題となった。



⚫︎全米7/2公開に先駆け、奇しくも6月12日Juneteenth黒人奴隷解放記念日に、52年前の舞台であったハーレムのマーカス・ガーベイ・パークで、Questloveと共に先行試写とトリビュートライブが開催され、私も参加した。その後も、試写会&パネルディスカッション、ブロックパーティ試写会など、何度も何度も映画を見る機会に恵まれ、ハーレムの人達がいかに誇りに思っているかを身体で感じた映画「サマーオブソウル」である




コンサートが開催されたマーカス・ガーベイパークは、ブラックハーレムとスパニッシュハーレムの境にある。
ブラック&ブラウンの観客が集まり、
ソウル、モータウン、ジャズ、ブルース、ブロードウェイ、ポップス、ゴスペル 、アフリカン、ラテン、アフロキューバン、、、
あらゆる音楽が演奏され、音楽がメッセージとなり、誇りとなった、伝説の無料ライブであった。




※全米公開前の6月に書いた映画情報、こちらもどうぞご覧ください↓


< 関連過去ログ>


映画「Summer of Soul」30万人がNYハーレムで狂喜した夏 サマーオブソウル今週公開(2021年6月)


 





●NYハーレム案内人 松尾公子 Kimiko Matsuo

NYハーレムの黒人コミュニティにどっぷり浸かって19年の音楽プロモーター、ディレクター、NYコーディネイター、日本人ながらハーレム黒人教会ゴスペルクワイヤーのリーダーに任命されている。

Harlem Japanese Gospel Choir主宰(2010年マクドナルドゴスペルフェスト史上日本人初出場で初優勝)、2014年アメリカの黒人コミュニティより、日本人女性初「ウーマン・オブ・エクセレンス&マン・オブ・ビジョン」受賞、米国最大のエンタメ・スーパーボウルの日本人初ゴスペル部門役員、2019年世界初公式ライセンスにてアポロアマチュアナイト日本大会開催など、日本人初を次々切り開くパイオニア。



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