予定日の前に前期破水した39週の妊婦さん。


破水したら陣痛が始まるのが一般的ですが、陣痛が中々起こらず、明日の早朝までにお産が始まらなければ入院しなければならないとのことで、それまでに鍼灸で何とかなりませんか?というご依頼を、懇意にさせていただいている助産師の先生から受けました。

 

一刻を争うので、予約の合間を縫って、助産院に往診。
分娩室に入らせていただくと妊婦さんとそのご主人、そして見覚えのあるお顔だなと思っていたら、以前に予定日を過ぎた妊婦さんの陣痛促進剤を使わずに生みたいという希望を叶えるために一緒にお手伝いさせていただいた事がありましたが、その時に市外から助っ人でいらしていた助産師の先生が、今回も助っ人としてスタンバイされていました。

不思議と次の瞬間、ああこの面子なら今回も“いけるな”という気がしました。

 

再会も程々に、早速妊婦さんの治療を開始!

赤ちゃんを包んでいる卵膜が破けたのですから、これは【封蔵】という働きの失調で腎の変動です。

脉診もやはり腎虚でした。
脉状は浮・数・虚で底もとが空虚で、出血した後のような脉状でした。数時間前の破水が脉状にも現れています。

証は腎虚証と立て、通常女性であれば右側を適応側としますが、タイムリミットまでにお産へと導くために気を下げる作用のある左側を適応側としました。

 

 

本治法、左の復溜に銀一寸三分一番鍼を用いて補法。

これで脉が整ったので、次いで標治法、背中の陣促穴を診ると丁度いい位置に降りてきてるので、円皮鍼を貼付。
陣促穴が第5胸椎の高さまで降りてくると、2日以内に陣痛が始まります。
とは言うものの、翌朝までしか時間がありません。

次いで安産灸、破水して羊水が流れているので産道が通りにくくなっているだろうと考えて、陰血を足すために三陰交と中封に知熱灸。
次いで、気を下げるために肩井と合谷に知熱灸。
最後にお腹に止め鍼をして終了。

 

後はみなさんに託して、助産院をあとにし、治療室に戻りました。

22時に臨床が終わりそうだったので、終わってから最後にもう一度治療しに行こうかなと思っていた矢先、21時45分に助産院から一報が!
お産が始まり、もう頭まで見えていますとのこと(≧∇≦)

それからしばらくして無事に生まれたとの報告をいただきました(^o^)v

せっかくここまで来たのだから本人さんも助産院で生みたいやろうし、助産師の先生も生ませてあげたいのが親心(親ではありませんが)というもの。

 

助産師の先生とご縁をいただいてから、ご依頼の難易度が毎回ちょっとずつ上がっていきますが、現代の名工、伝統工芸士・市原吉博氏の言葉を借りれば、

 

“安請け合いしてから苦労する。頼まれ事は試され事。仕事の依頼は全て受け、熱意で応える。NOと言えないアーティスト、それが職人。”

 

深みのある言葉です。

これからも応えられるように精進します。

 

最後に、やっぱり痛くない鍼と熱くないお灸による経絡治療が患者さんに与える影響力は、計り知れないものがあります。
正に安心・安全・完全ですね。

それとやっぱり脉作りの大事に気づかされます。
脉が本当に良い方向に変化すれば、自ずと体も良い方向に向かいます。

これからも、脉作りの臨床にこだわっていきたいと思います。