「J・エドガー」 2011年アメリカ映画

 

★★★☆☆ (個人評価 ★多めならおすすめ)

 

監督 クリント・イーストウッド

出演者 レオナルド・ディカプリオ  ナオミ・ワッツ  アーミー・ハマー  ジョシュ・ルーカス

 

初代FBI長官として40年以上も権力を手にし、数々の歴代大統領につかえてきたジョン・エドガー・フーバーの生涯を描く。
エドガーは母に可愛がられ期待されて育った。
若くして司法省で長官の役職を与えられた彼は、独自の権限を持つ捜査組織を作る。

実力のある者を取り立て、科学捜査を用い、犯人検挙へと尽力した。
しかしその一方で、大統領他、有力者たちへの盗聴等により彼らの弱みを握り、自分の権力を脅かされないようにもした。
虚実入り乱れる彼の謎に満ちた私生活とは…。

 

 

彼はどうやら母親に溺愛されて育ったよう。
ずっと母親の庇護から逃れられず、相当なマザコンに。
大人になってもずっと独身で母親と暮らしていたらしい。

 

J・エドガー

 

FBI創設者として40年以上権力を握った切れ者のイメージがあるエドガー。
犯人検挙のため科学捜査を取り入れたのも彼らしい。
ところがその彼の私生活を知るにつれ、彼の人となりが暴かれていく。

 

【ネタバレあり。未見の方は注意してね】

 

長官の座についたあとも、自分に害を成す人物には、諜報活動によりその弱みをつかみ、それを脅しに使っていたらしい。
ただ自分のためというよりかは、FBIを愛するがあまり…とも言えなくもない。

 

J・エドガー2


彼はコンプレックス(低身長)を抱え、母から自立できず、そして同性愛者であった。

そういう噂はずっとあったらしいね。
側近@男と一緒に休暇を取ったり、女装癖があると言われたり。
それをこの映画は赤裸々に描く。

 

主演がディカプリオで若い頃から70歳あまりまでを演じる。
特殊メイクだろうけど、違和感はない。
高齢になってからと若い頃が入れ替わり描き出される。
FBIを作った初めの頃、ずっと一緒にいたらしい側近との出会い、一度は求婚した秘書、母べったりの生活、そこに高齢になったエドガーが口述筆記により自伝を書かせているシーンが交代で出てくる。

 

初代長官の活躍っぷりはあまり知らないんだけど、今までは地域ごとにやっていた捜査をアメリカ全土網羅できるようにした功績だとか、指紋を犯罪者の識別に使うとか、色々画期的な捜査方法を導入したらしい。
けれど、自分の部下が有名犯罪者を逮捕し英雄視されるようになると首にしたり、自分が逮捕現場に赴き一番いいところで手柄を横取りしたり…、映画では結構嫌な人物になってる。
 

まぁそれでも憎めない人物として成り立ってるのはディカプリオの可愛さのおかげかもしれないな。

監督がクリント・イーストウッド。
それを知らずに観ました。
やはり彼の監督作品って、まぁそんなに観てるわけでもないんだけど、視点や捉え方が独特な気がする。
人物の斜め横から観る感じ。
普通にまっすぐ前からライトを当てないんだよねぇ。
斜め上からとか、後ろからとか、下からとか。
視点が独特だから、人物に深みが出るし、ただ感動したとか、ただ泣けるとか、そういう単一の感情ではなく、観ててもっと複雑な気持ちになる。

 

エドガーは長官という肩書のわりにはすごく卑小な男で、しかも正義を行使する役目にもかかわらず、脅したり盗聴したり卑怯な手段を取ったりする。
マザコンだし。
低身長を気にして面接のときは椅子に座ったまま、しかも椅子の下には辞書を置いて自分を大きく見せたり。

長官として英雄として奉るのでもなく、かと言ってめちゃくちゃ悪い人物にも見えない。
可愛げがあるというか。
 

信用できる人物が周囲にいなくて、だからこそ側近に対し愛情に代わるほどの気持ちを持ってしまったのだろうしね。

政治家が介入できない特別な組織で、自分が権限を持ち、どのような捜査も可能に…という目的を達成し、そのFBIを40年以上統率してきたんだから並大抵の人物ではなかったはず。
でもこの映画ではどちらかと言うと彼の弱い部分にスポットライトを当てて、表の長官ではなく、裏の長官を赤裸々に描きだしている。
すごい人なんだろうけど、案外人生は孤独だったろうし、同情してしまう部分がある。

 

決してエドガーを悪者には描いてないし、どちらかと言うと弱者であったり、正義の名のもとに間違った方向へ突き進んでもいた少し憐れみを覚える人物となっている気がする。
他者を支配したいという欲求が母親の過保護から来ているのかどうかはわからないけど、彼が部下のみならず、アメリカ国民、そして大統領までもを支配下に置きたがったのは、屈折した人格のせいであることは間違いない。

結果、彼の功績はFBI設立、そして内部のエリート意識、を残したことなのかな。
 

自己愛が強く、自己顕示欲も強く、自分のためであれば他人の弱みを握りそれを脅しに使うことも厭わない、正義の味方とはとても言えないエドガーだけれど、この映画に関して言えば憎み切れない人物となっている。
ディカプリオが演じたせいもあるけど、やっぱり監督自身が、エドガーに対し巨悪だと思っていないんだろうな。

今まで知ることができなかったFBI長官の裏側を見れて、なんか芸能人のスキャンダルを見ているような、そしてエリートというのはこうして作られていくのか…と大変興味深く観れました。
歴代大統領も大抵の人は弱みあるんだな…とも思いました。
なかなか面白かったです。

 


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