劇団四季「夢から醒めた夢」で現実を考える。
劇団四季「夢から醒めた夢」を観劇。
赤川次郎氏原作で、
2人の女の子が入れ替わって・・・、
というから、軽いタッチのドタバタコメディーかと思いきや、
号泣しました。
観終わって写真撮った頃には、顔が泣き疲れていました。
物語は、不思議大好き、好奇心旺盛の少女ピコが、
マコという女の子と友達になるところから始まります。
しかし、彼女は幽霊だったのです。
そして、
「一日だけ自分と入れ変わって欲しい。
必ず霊界に戻って、自分が天国に行くから」
とピコに頼みます。
マコの代わりにピコが霊界の空港へ行くと、
待合室は死者で溢れかえっていました。
彼らの行き先は、
生前の行いによって、天国行きと地獄行きに分かれています。
ピコになぜ自分が死んだのかを語ります。
いじめを苦に自殺した少年、
過労死したビジネスマン、
バイクで事故を起こした暴走族…、
彼らは生前に罪を犯したり、人を悲しませたりしたため、
天国行きのパスポートがもらえません。
空港で何年も働いて罪が洗い流されるのを待っています。
この日、天国に行けるのは、なんと子供たちでした。
この子たちは災害や戦争の犠牲となって死んだ子供たちなのです。
「地雷を踏んで死にました」
「のどが渇いて汚れた水を飲みました」
澄んだ声で悲しく歌う短い人生に涙が止まりません。
なぜなら、これは今も現実世界で起こっていることなんですよ。
決して『夢の中の出来事』ではないのです。
そして、マコ自身も悲しい死を迎えた女の子でした。
マコはほんとうにピコの元に戻って来てくれるでしょうか。
もし戻らなければ、代わりにピコが死んでしまいます。
天国に行ける死者も行けない死者も、
みなそれぞれに
「生きてるうちにこうすればよかった」と後悔や、
「これをしたかった」とやり残したことを忘れられません。
せめて『劇の中』だけでも、
心の中で、「絶対ハッピーエンドにしてください」と願っていました。
果たして、エンディングは、
ちゃんとみんなが納得するような慈愛に満ちたものでした。
泣いて泣いて、観終った後、
ただシンプルに「人に優しくしよう」と思いました。
これって、口にするのは簡単です。
でも、行動に移すには、気持ちだけでダメなのです。
どうしたら喜ばれるのか、
知恵を働かせなければ届かないのです。
私が現場リポーターになって、
事件事故などの被害者の方に接する度、何度も耳にした言葉。
「あの時、ただ一言謝ってくれれば」
「あの時私の気持ちに気づいてくれれば、・・・」
そう、事件や裁判を起こそうと思って日々過ごしている人はいません。
だけど、望んでいないのに巻き込まれてしまうのは、
あと一つ何かが満たされないからなんです。
「相手に気づいてもらいたい」、
「ほんの一言謝ってくれれば許したのに」、
大きなトラブルになる前に
気づいて防いであげられるように一人一人が心がけたら、
世の中の諍いなんてうんと減るのにといつも思うのです。
『夢物語』で終わらせず、
しっかりと目を開けて周りを見渡そう。
みんなが「生きていてよかった」と思えるように、
思いやりを持ちたい。

