最近の講演会では「ありがとうは、もっとも美しい言葉であると同時に最強のペップトークです!」と締めくくるようにしています。

 

すると「うちの子供はありがとうと言わないんですよ。」と相談に来たお母さんがいらっしゃいました。「どうすればありがとうを言うようになるんでしょう?」というご質問でした。

 

そこで質問返しをしました。「お母さんは、お子さんにありがとうを言っていますか?」即答でした。「いえ、あまり言っていないと思います。」本当はまったく仰っていないんじゃないかなって雰囲気でした。

 

「ぜひ、お母さんがお手本になってたくさん「ありがとう」を言ってみて下さい。きっとすぐに変化が現れますよ。」とお話しさせて頂きました。

 

実は、お母さんは子供にありがとうと言いなさいと強要されていました。「ありがとうと口に出していたら、運が良くなるからたくさん言いなさい。」と、しつけられていたようです。これでは言われた側が納得できません。「なんで感謝していないのに、ありがとうと言わなきゃならないんだ。」と思ってしまいますよね。「私が、ありがとうと言いなさいって言っているんだから、言いなさい!」では、パワハラぽくて全く説得力がありません。

 

励ましの言葉ペップトークを伝える時に大事なポイントのひとつに、「聴く側が分かる話をする」があります。聴いていて、納得できる、共感できる、良く分かる話をされると、できそうな気がします。この「分かる感」が「できる感」につながると、相手の行動を喚起する可能性がでてくるのです。

 

分かる気がして、できる気がして、やる気になる。この三つの「気」が一つになると、準備完了。後は、具体的にいつ、どこで、何をどうすれば良いのか、自分で考えるのか、誰かに教わるのか、とにかく最初の一歩を踏み出すだけです。

 

前述の例に戻ります。子供に「ありがとう」を言って欲しかったら、まず自分がやってみせる。お母さんも、あまりありがとうと言っていなかった。だから、これからは些細なことにもありがとうと言う。生まれて来てくれてありがとう。手伝ってくれてありがとう。今日も元気でいてくれてありがとう。たくさんの「ありがとう」が、日常生活の中でも聞こえてくるようになると、子供たちは、それを真似て言うようになります。親の口癖が、環境遺伝子となって子供の口癖となっていくと言われています。

 

「いつどこで誰に言われても、心からのありがとうは嬉しいよね。だからお母さんも、お父さんもできるだけたくさん、ありがとうと言っているんだよ。」と、その訳を説明します。

 

たくさんの「ありがとう」が飛び交うようになると、家庭も職場も明るくなったという事例が、たくさんあります。「ありがとう」を十万回言おうと決めて、末期がんだった患者さんが、治ったという感動的な実話(工藤房美著『遺伝子スイッチオンの奇跡』)もあります。講演家の五日市剛先生も、魔法の言葉の一つとして「ありがとう」をあげておられます。

 

お互いを思いやり、気配りをして、些細なことにも感謝して「ありがとう」のキャッチボールができるようになると、家庭内の雰囲気が良くなります。そうすると笑顔も多くなり、人間関係が円満になる。健康の定義の中には「家庭的にも、社会的にも健やかであること」が大事だとされています。そのためのキーワードが「ありがとう」なのです。

 

率先垂範とは、「自分が進んで手本を見せること。模範を示すこと。」と定義づけられています。子供は親の背中を見ている。生徒は先生の姿を見ている。部下は上司の行動を見ている。そして選手はスタッフの背中を見ているものです。自分の言動や行動を棚に上げて話しても、全く説得力がありません。しっかり、して欲しいことをして見せて、聴く側が、「分かる感、できる感、やるぞ感」の三つの感覚を持てるような話し方をすると、すーっと腑に落ちるかも知れません。

 

ここまで読んで頂いて「ありがとうございます<(_ _)>」