(1)大混乱を招いた介護予防
以前は今のように要介護と要支援が明確に分かれてはいなかった。要支援でも5000単位程度は使える。そうすると月に20回ほどヘルパーが入る事も可能だった。
しかし平成18年の改正で、要支援が介護予防という位置づけになり、契約は地域包括支援センターで、居宅介護支援事業所は委託という形になった。
問題になったのは報酬である。今まで1万円ほどであったのが4千円に下げられた。そして書類も記入が細かくなり、さらに地域包括支援センター職員の所見まで必要となる。つまり自分の作ったものは絶対にチェックされる。
そんなこんなで要支援の委託を受けない事業所も相次いだという。そうなると要支援の時はA事業所で、要介護になったらB事業所でと、更新のたびに担当ケアマネも変わるという事態が起き、大混乱を招いたというのはどこの自治体でも抱えた事実であろう。
(2)介護予防はギクシャクから始まった
更に言えば、利用者のサービスの選び方も制限がかかった。要支援1であればヘルパーは週2回、デイサービスは週1回に限定された。
今まで週3~4回ヘルパーに来てもらっていたのが、週2回が限度となる。それは利用者とすれば納得のいくものでは無かった。
そして、そこのクレームをケアマネが一身に受けた。
ケアマネにすれば、利用者との信頼関係構築に人一倍気を遣う。何とか信頼関係を築けてサービス導入までこぎつけ、利用者の生活を支えることが出来たのに、制度が変わった為に「話が違うじゃないか」とクレームを受ける事になる。
しかし自治体は「信頼関係が築けているなら、制度の改正の説明も出来るだろう」と自治体が利用者への説明に走ることは無かった。
介護予防はこうしたギクシャクから始まった。
今でもそれは残る。
今まで要介護だった人が更新で要支援になった時に「体は変わらないのに、どうして判定が軽くなるんだ」と言われたことは一度や二度では無い。そのたびに説明はするのだが、納得いかなければ自治体に電話するよう利用者には話している。
(3)笛吹けど踊らず
そんなこんなの介護予防だが、最近、居宅介護支援事業所でも直接契約が出来るよう、介護予防支援事業所として指定が取れるようになったという。
それは介護予防が始まって20年ほどたち、制度が醸成された事や地域包括支援センター業務の膨大さの軽減やら言われているが、何のことは無い右から左へという程度の話だろうと思う。
しかし笛吹けど踊らずで指定を受ける事業所は殆ど無いという。そりゃそうだろうと思う。報酬は相変わらず低いままだし、別にチェックされるとは言っても「確認しました」程度のコメントしかもらわないのであれば、下手に責任を負わない方が良い。
だからこれは「仕組みを作って終わり」の制度改正になるだろうと思う。
後は何も知らない新規事業所がこういう歴史を知らないまま、指定を受けるという事だ。そういう事業所が多くなればそういう時代が来るかもね。