

脳卒中・脳梗塞ランキング
⭕️「リハビリは裏切らない」は本当?
「リハビリは裏切らない」という言葉を良く聞きます。
似た言葉で「リハビリは嘘をつかない」と言ったのは、巨人軍の元監督の長嶋茂雄氏です。
長嶋茂雄氏はご存じのように2004年に心原性の中程度の脳梗塞を発症した経験者です。
長嶋茂雄氏は、次のように語っています。

「振り返ってみれば、倒れてからの6年はリハビリの6年間でした。1日、1日がリハビリの連続、それが週となり月になり、積み重なって6年になり、こうして今の私がある。身体機能回復のリハビリは、薄紙を積み重ねていくようなもので、急に目に見えるような成果が現れるわけではありません。あきらめないこと、続けること、これがすべてではないでしょうか。
◎ハードなリハビリに耐えられるのは選手時代の練習のたまもの
そのことをちょっとお話しましょう。
朝は5時半に起床です。ここからリハビリがびっしり詰まっている。午前中のスタートは散歩、ウォーキングです。これを40分から45分。家に戻ってからはマッサージとリハビリですが、午後が本格的になる。リハビリテーション病院でトレーナーと一緒に、器具を使って上半身、下半身をたっぷり動かします。ときどき「合宿」と称して日常メニューから外れて、きついリハビリを集中的に数日間続けることもある。正しいウォーキングからエアロバイクを使ったヒザの強化。腕、脚の内側、外側の筋肉の強化。背筋、腹筋も鍛える。不自由になった右腕の筋肉を取り戻すトレーニングはもちろんですが、身体全体のバランスを取るメニューを終日やる。5、6時間くらい続けますかねえ。日中は、仕事や用事で出掛けることもありますが、夜10時には決まって就寝します。
そういえば、NHKテレビでちょっと紹介されたことがありましたが、観た人から「リハビリというよりトレーニングですね」と感想を言われました。たしかに他の人ではやれないと思いますよ。ハードですから。
◎自分との戦いは投手との戦いよりつらい逃げてはダメだ
リハビリは苦しく、つらいものです。「なぜ、続けられるのか」と自問自答することもある。そんな時に思い出すのは選手時代の練習です。イチローが「自分以上に練習する者がいたら、自分と同じか自分以上の者が出てくる」と言ったとか。ゴシップかもしれませんがうなずきます。私も誰よりも練習したという自負があったから、どんな投手にも、誰にでも勝てると信じていた。
けれども、こういう相手のいる戦いは、ある意味では簡単なんですね。リハビリには目標になる外部の"敵"がいないんです。敵は内部にいる。弱気になる自分ですね。効果が上がらない、苦しい、それで止めてしまう。そんな意志の弱い自分が敵になります。私は、負けるのは相手が自分でも嫌でした。そんな弱い自分に「勝とう」と決めました。気持ちをアグレッシブにもって「やるからには勝ってやる」。それで、ここまで来ました。この先にはゴルフをやったり、始球式で投げたりが待っていると思っていますよ。
私と同じように脳梗塞の後遺症と闘う人は200万人とか。いいですか、弱気になり、逃げてはダメです。「リハビリは嘘をつかない」。これを信じて、と言うよりそれが事実ですから、自分との戦いを続けていくだけです。」
参考文→頑張るシニアの応援サイト・おとなの安心倶楽部・SECOM
長嶋茂雄氏の完全回復を目指す一生懸命な姿に頭が下がり敬意を払います。
長嶋茂雄氏は、
「筋肉の強化として、1日に5〜6時間きついトレーニングをする」
と書かれています。
果たして、「リハビリは裏切らない」とか「リハビリは嘘をつかない」は本当でしょうか?
一生懸命にリハビリを頑張って実施すると、筋肉は疲労して硬くなって行きます。
参考→脳卒中(脳出血・脳梗塞)と有酸素運動・無酸素運動‐1+2
https://ameblo.jp/hapikuni/entry-12860942876.html
https://ameblo.jp/hapikuni/entry-12860942981.html
特にハードなトレーニングは無酸素運動になってしまい、使用している筋肉に酸が溜まり硬くなって行きます。
そして、疲労して傷付いた筋細胞(筋線維・筋原線維)は、身体の反応で修復しようとしますが、麻痺側の筋肉は筋肉の収縮で起こる筋肉ポンプが稼働していませんから、血流障害・低酸素状態のために、正常ではないコラーゲン線維が多い状態での修復(=線維化)が進行することになってしまいます。これは、更に痙縮・拘縮を悪化させることに繋がります。
この事はリハビリの難しさを表しています。頑張れば頑張る程に筋肉は疲労して硬くなって痙縮・拘縮を悪化させてしまいます。
特に、日本人は日本人の美徳として「一生懸命に頑張ってリハビリを実施すれば、必ず良い結果になる」と思って実行しています。
この美徳は美徳と言うよりも罠です。私は、このリハビリの罠にはまってしまい回復が停滞するリハビリの壁に突き当たっていると思います。
また、動き始めた麻痺側の手足の筋肉は脳からの電気的指令が弱いために筋肉の収縮も弱く動き難い状態です。無理に動かそうとすると心拍数が上がり無酸素運動になり筋肉に酸が貯まり筋肉が硬くなってしまいます。例えれば赤ちゃんに筋トレをさせるようなものです。
その点、私はビューティーローラーで徹底的に筋肉を解し柔らかくしてから、反復動作訓練や筋トレなどのトレーニングをする方が良いと考えています。
以前にも記載しましたが、ビューティーローラーで筋肉を繰り返し・強制的・受動的・規則性なリズミカルで動かすことは、筋肉が受動的に動かされる疑似運動であるとも言えます。つまり、心拍数を上げない疑似有酸素運動です。
ビューティーローラー使用で身体を傷付けるという欠点はありますが、効果絶大です。また、殆ど寝て実施しますので、とても楽です。
また、
「敵は内部にいる。弱気になる自分です」
とも書かれていています。
勿論、私も弱い自分自身が敵というよりはライバル的な存在だと意識してトレーニングをしていますし、またスポーツジムにいる健常者の他の人を仮想ライバルとしてやっています。
このように、とても努力している長嶋茂雄氏ですから、かなり良くなっていることは当然だと思っていました。
しかし、東京オリンピックの開会式で、聖火ランナーとして元ジャイアンツのプロ野球選手の長嶋茂雄氏の姿を観た時の光景は、期待を裏切る驚きの光景でした。
その姿を観て、私は涙が出る程の感動と共に愕然とした覚えがあります。
参考写真→スポニチ
それは、ホームラン王のSO氏とHM氏との間でHM氏に身体を支えてもらいながら、麻痺側の右腕は曲がったままで走っていたのです。
長嶋茂雄氏は、2004年に心原性の中程度の脳梗塞を発症した経験者で、思うに一流のリハビリプログラムで、一流の理学療法士さん達が関わり完全回復を目指していたと思われます。
身体も年齢の割には、元プロ野球選手ですから、素晴らしい筋肉の持ち主で完全回復も夢ではないと思われたのに、なのに、オリンピックでの開会式では、あの姿でした。
やはり、完全回復が出来なかったのは、
末端の線維化が脳血管障害の後遺症の運動障害の一番の原因であるに、
現行のリハビリ治療では、
末端の線維化を阻止して回復を計る発想が無かったか?
若しくは不十分だったのでしょう。
「リハビリは裏切らない」と思い一生懸命に頑張っていたのでしょうが、頑張る程に筋肉は疲労して硬くなり短縮して行きます。
要は筋肉を徹底的に解し柔らかくすることが不充分できついトレーニングをしていたのではないでしょうか?
筋肉を徹底的に解し柔らかくすることによって身体が動き易くなり、この動き易い環境が脳の可塑性を引き出すと私は考えています。
その後に、新しい回路を太く(多数のシナプス結合)するために反復動作訓練や筋トレをすべきです。
筋肉を解し柔らかくすることが、線維化を阻止して、且つ正常な身体の修復反応として線維化されていない正常な筋肉に代わって行くのだと思います。更に、正常な筋肉からはマイオカイン(特にイリシン)というホルモン様物質が放出されて脳を活性化して行きます。
筋肉を解し柔らかくする事を最重要視しないで反復動作訓練と筋トレばかりしているとリハビリの効果が停止した状態のリハビリの壁に突き当たってしまいます。それは回復の頓挫を意味します。
◎結論
脳卒中(脳出血・脳梗塞)の後遺症の運動障害は、
急性期病院で医師の治療方法として、辛うじて生き残っている脳神経の領域=ペナンブラ領域を少しでも残そうという治療方法が実施されています。
その後に続くリハビリも、この延長上の考えの元に、ペナンブラ領域に新しく作成される神経回路を太く(多数のシナプス結合)するために反復動作訓練や歩行訓練といったリハビリ療法も行われていると思います。
しかし、このリハビリ療法を一生懸命に頑張ってやればやる程に、筋肉は疲労して硬くなって行き痙縮や拘縮を悪化させてしまいます。
結果、回復が停滞するリハビリの壁に突き当たってしまいます。老化が更に回復の停滞に拍車をかけてしまうこともあるでしょう。
私が何度も言うように、
脳卒中(脳出血・脳梗塞)の後遺症の運動障害を完全回復に導くためには、
【線維化・拘縮+老化】 VS 【筋肉を解し柔らかくすること】
との競争であり、戦いといった意識で臨まないと完全回復は困難だと考えています。
「普通に元に戻るように頑張る」という意識レベルでは無理だと言うことです。
先ずは、ビューティーローラーなどの繰り返し・強制的・受動的な規則的なリズミカルな刺激(=振動周波数は90Hz㌹以下と少なく長い波長)は、痙縮を悪化させることも無く、筋肉の深部まで届くので、硬くなっている筋肉を解し柔らかくすることが先決です。
筋肉を解し柔らかくした後、麻痺側の身体が動き易い環境が脳の可塑性を引き出して、更に、正常なフィードバッグが正常なフィードフォワードを生み出して、好循環を起こすことです。
「リハビリは裏切らない」
「リハビリは嘘をつかない」
といった考えが広く行き渡っていますが、私は疑問に思っています。
リハビリを一生懸命に実施すると硬い筋肉が更に疲労して硬くなって痙縮・拘縮を悪化させてしまいます。
結果、脳卒中後遺症の運動障害の回復が停滞して裏切られると、私は考えています。
つまり、スポ根のアニメのようにエビデンス(根拠)のない根性論では完全回復への道は開かれないのです。
寧ろ、後退させ悪化させて行くのです。
「激しく同意です。脳卒中から数年間、頑張れば頑張る程身体は硬く拘縮し歩きにくくなりました。ちなみにリハビリ病院では療法士たちから鉄人と呼ばれてました。何で止めてくれなんだんや(涙)」
要は、長嶋茂雄氏と同じように、一生懸命に頑張ったリハビリの結果が、痙縮と拘縮を更に悪化させてしまったとのことです。
医師は、リハビリ療法はセラピストさん達任せ、セラピストさん達は保険診療では特に、「言われた事をこなすだけの仕事で深く考えていない仕事」になっているのかも知れません。
もしかしたら、全てがそうではないと思いますが、セラピストさん達は「軽度〜中程度ならまだしも、重度の脳卒中後遺症の運動障害の完全麻痺からの完全回復は無理・不可能であると思っていること」と「所詮他人の身体」と言う思いがあるのかも知れません。