人気blogランキングは? (1/19 からのつづき)  実のところ、私は「お葬式」が苦手だ。まァ得意という人も少ないだろうが…。
 私ほどの年齢、しかも親類縁者の多い田舎ともなると、「お弔い」は必然多くなる。
 いつだったか、親しい人の告別式の知らせに、「お悔やみには、出ないと決めているの…」と囁いたのはホキだった。
 彼女のような生き方をしてきた女性なら、世間様も然りと思ってしまうから、ひち面倒くさい「断り文句」はいらない。
 だが普通、そうはいかない。
 江森さんに「しかるべき礼儀」を尽くさなければと、「マナー育」や「行事育」の講演や執筆も多い我がカミさんは言う。
 けれど、「遅ればせながら名乗り出たお妾さんか落胤」のような気持ちといったら、ちょっと喩えはよくないが、どうしてもすぐさまそれができないそんな風な迷いが私にはある。
 「満中陰」の忌明けも過ぎ、おまけに新年を迎えたご遺族に、私の落ち度で遅れた礼儀を今さら尽くしてしまったら、一方的に「彼らの時」を引き戻し、一旦整理したであろう「心の中」に揺らぎを引き起こしかねないのではないか。よしんば、そんなことはなくとも、そんな私は完璧な「間抜け」である。
 いや決して、これは、お葬式苦手の私が独りよがりの申し開きをしているわけではない。
EMORI  ここは、一人静かに、江森さんへの思いに浸る「儀式」もあるような気がする。と、こんな呟きにも似たことを縷々書き始めているのだ…。
 そもそも「お葬式」ってのは、こちら側にいた人があちら側に逝き、どこかで繋がっていた人々が、なんとか「踏ん切り」をつけ、これからの時を生きていくための、こちら側の人々の儀式…つまり、私たち一人ひとりの極めて個人的な「黙示」ではないのか…。
 

 1983年から86年にかけて、江森さんは、テレ朝の「モーニングショー」(朝ワイドの草分けとして、このキー局の看板番組だった)のメインキャスターをつとめた。
 当時、今の六本木ヒルズあたりにあったテレ朝の正面玄関脇の喫茶で、「遊びにおいでよ」という江森さんの本番後を、よく待っていた。
 同局では、午後のワイドショー「おんなのひろば」やクイズ番組「ヒントでピント」をやっていたり、すぐそばに「$1000パーティ」の事務所があったりしたので、今でも局舎の周辺の街をとても懐かしく思い出す。
 なにしろ、六本木には、テレ朝だけでなく、江森さんの事務所があったし、その後、カミさんのディオール本部が日産ビルに、日本に帰ってきたホキも「北回帰線」などのクラブを開いたりした。
 日本放送作家協会の事務所や俳優座、打ち合わせに使ったコーヒーショップ、仕事先のプロダクション、飲んだり食ったり踊ったりのプレイスポットetc.…いやはや、とてもじゃないが、筆が追いつかない。
 ところで、舞台は一転、LA「パブクラブHOKI」…江森さんがらみで、オネエこと「マイク」を思い出す。
 いつも粋な着流し(ほとんど故江利チエミさんから、その舞台衣裳やら何やらを譲り受けたもの)でホキに寄り添うように、ちょこんと浅く腰掛けていた。
 マイクについては、ホキも『文豪夫人の悪夢』(主婦の友社刊)の中に、詳しくふれているが、83年の夏頃だったか、「日本人で初めてAIDSに!故郷・新潟の雪を見たいといって日本へ…」などと、明らかにマイクと思われる人物が、「週刊朝日」に書きたてられた。
 この記事の掲載を私は、江森さんからの電話で知ることになった。
EMORI  「コダマ、マイクって、ホラ、ホキのとこにいた、どんなヒトなの?」
 「で、AIDS、っていうんだけど、そんな話、聞いてた?」
 ホキに確認してみると、「マイクは、食道の入口を塞いだ動脈瘤かなにかで、その年の5月にみまかっていた」のが真相で、AIDSなどでは決してなかった。…自らの性にズッポリとはまることで、難しい時代にみごとな「オネエ道」を貫いての大往生であった。
 この一件…どうやら、ガセネタをもっともらしい記事にしたてあげたLA特派員の「尻ぬぐい」の役を江森さんがやったわけだ。
 ところで、LAに滞在していたとき、ホキに連れられてマイクの部屋を訪ねたことがある。
 マイクに「タマちゃん」と呼ばれていた私は、江戸弁のオネエ言葉で「ネェ、いいこと、タマちゃん、ホキちゃんを大切にシタげるのよ」とまるで母親のように頼まれたのを覚えている。
 その時、マイクとホキと私のいる空間に見たデジャヴのような感覚が、今こうして思い出をたどっている私が見ているものと奇妙に重なっているのは、どうしたことだろう…。

 おそらくエイジングってのは、ちょっと「宇宙からの俯瞰」つまり「神の目」にも似たポジションに近づいていけることのような気がする。
 それは、己の心がピュアであればあるほど、あるいは、己の経験や知識などの蓄えが多ければ多いほど、そのような「目」を輝かせることができるのではないか…。
ところで、エイジングした私は、今、江森さんをどのように見ているのだろうか? 
 (つづく) 

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