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なんと馬鹿な、よほど阿呆な、たわけた戯言と、罵声を己自身に
あびせながらも、しかと “生”を実感できるのは、をかしな夢の中。
いまや 夢こそがうつつ…唯ひとつの “ほんとうの居場所”。
夢は、それが夢想で妄想で虚構で、はたまた、歪んだ私のリビドー世界
だとしても、“私”に内蔵されたところから生まれ、意識され、存在するもの
に違いない。
私の そんな夢の中で、
私の女…“彼”に愛された女が、私に涼やかに微笑んでいる。
ベッドの上、衣擦れの音の狭間に、女の歌うような声が漂っている。
恐らく“彼”は、そんな時を過ごそうとした…多くの時を刻んだ挙げ句、
それらと同じ価値と意味を持っているに違いない、女と重なり合う時を…。
夢の相貌が、ゆらゆらと揺らぎながら消えていく。
私は、瞬く間に失われていってしまいそうな“夢の尻尾”をムンズとつかむ。
粘液でツルツルとすべる掌の指の力を、あらん限りにこめて、
いつまでも緩めないつもりだ。
女の残り香を口腔に投げ込んで、夢の命がなくなるまでは、秘やかに密やかに
味わいつづけるのだ…。
夢が 渦巻いている
軋む ベッドを そっと下り 足音をひそめ
廊下をはさんだ 二つ先 ロックをはずしたドアに
向かう
白い繭のように 眠る 女
“彼”の言葉が 私の背を 押す
「蝶に なるのは まだ早い しとど濡れ そぼつ時まで
オマエの心は オレのもの」
壁に 寄り添い 静かに “彼”が 佇んでいる
私は ベッドの傍らで 身を焦がしている“彼” を思う
マグカップの縁を なぞりながら 女が つぶやいたことがある
「多くの ものを くれたわ でも それは あなたの ようじゃ ないの」
いにしえの日々に 女が 拒んだのは
彼の 首筋に 深く刻まれた 人生の皺
寝息の 美しい 女の 繭の糸を ほぐし ほぐし
柔らかな中心に 打ち込むのは 熱く研ぎ澄まされた “彼”
紛れもない 女への 愛憎の くさび
飛散する 薄い棘は チクチクと 女の心に 突き刺さるのだ
掌に もて遊ぶ 憐れみの瞳が チクチクと 痛い はず
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