今日はGRADOの新作・『The White Headphone』に目が眩んだが、この夏お世話になったイヤホンついて書いておこうか。


ようやく秋と言える空気になって来たがここ二、三年は夏の暑さが身にこたえている。自分が寒さに弱い体質である事はこれまでにも幾度となくこぼして来たが、今度は暑さまで駄目になってしまったか。
これを異常気象のせいにでもしないと加齢を認めることになるので、ここはひとつ地球の仕打ちという風に決め込んでおこう。

なんにせよ暑い。汗かきではなかったはずの身体から自分のものかと疑う程の汗が出た。こうなると危機感をすら覚えてしまい少しでも通気性の良い服を選ぶことと、身に付ける物の軽量化を図ることが外出前の習慣になっていた。
仕事に出る時の持ち物リストはその時の業務内容によって様々だが、プライベートであれば僕は財布と携帯と音楽プレイヤーで事が足りる。
足りると言ってもここからが僕の性格の面倒なところだ。音楽プレイヤーは昨今主流のMP3ではなくポータブルのCDプレイヤーかカセットウォークマン。出力先もそれに応じてこだわりが伴う。ブルートゥースも試してみたいが再生機器側が80年代のテクノロジーで停止しているため未対応である。
外で聴く音楽なんて程々の音質で良いのだと自分に言い聞かせて何度か適当な物で試した時期もあったが、やはり答えはNO。
音を楽しめるレベルに達していない製品は例え使い勝手が良かろうが居心地が悪い。そんな物を使うくらいならば手ぶらでよいのだ。

ヘッドホンとイヤホンを音質で選ぶなら9:1でヘッドホンの圧勝だろう。これは構造的なアドバンテージがイヤホンにはあるため仕方のないこと。しかし携帯性や遮音性を重視するならばイヤホンに分があるとも言える。そもそも比べてはいけないのかもしれない。多少嵩張ったとしても出来れば年中ヘッドホンを持ち歩きたいのだが、前述した暑さの問題で真夏のヘッドホンはほぼ自分には不可だ。そんなことで仕方なくイヤホンにするのだが、もう音質は諦めてデザインで探すことにした。アロハシャツを去年から常用しだした為、それに合うようなものが見つかればせめてファッションとしては楽しめるというもの。
物は探すと決めた瞬間が一番楽しい。まずイメージをいくつか思い浮かべるところから始める。
・夏らしく少々カラフルな物も悪くない

・最近流行りのマルチドライバーは筐体が大きく煩わしいので出来るだけ小型の物

・ハウジングが木製のものがビクター以外であればそれも良いな(ビクターウッドシリーズは既に試し済みなので)

・着脱が瞬時に出来、シリコンイヤピースのままでも良好な装着感が得られる物。コンプライは汗に弱いので。

・野口五郎さん〜なぎら健壱さん〜バニラビーンズまで上手く鳴らせる物(生録モノに強いモデルはjpopモノが煩く聴こえるので平均的な鳴り方でよい)

・ひと夏の消耗品になりかねないので出来るだけ安価なもの

これは持論だが、物を探すときはイメージをより具体的に固めれば固めるほどゴールが見えてくる。この時、大切なのはカタログで探すより先にイメージをすることだ。
カタログから探してしまうとイマジネーションの幅を狭めてしまい、結果として充実感を逃してしまう。未だ見ぬ世界のものを脳内で作り出しておくことで、仮にドンズバの物が存在していなかろうと近しい物を発見した時にそれが喜びに変わる。
また実店舗に足を運び(近くにそのような商業施設があるならば)現物を見て品定めすることも大切だろう。特にイヤホンやヘッドホンといった身に付ける物は手に取ってみないと良し悪しは判断しづらい。写真映えしている物もあれば、その逆もある。特にヘッドホンはサイズ感が予想と異なることがままあるのでご注意を。

イメージしたものを脳内に家電量販店のヘッドホン、イヤホンフロアへと足を運んだ。まずそのルックスからかなり少数派であることは確かだ。木製ハウジングのモデルは過去にも数種類しか見たことがないため在庫自体の有無を懸念しなければならない。
流して見ているととんでもない物が目に飛び込んで来た。何がとんでもないかって…見た目がまんまの物があるではないか!

それがこれである。
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木製ハウジングにアロハシャツに合いそうなケーブル、そして価格も3000円を切っているとある。

House of Marley(ハウスオブマーリー) SMILE JAMAICA というモデルらしく、名前とデザインからボブ・マーリー氏へのリスペクトから生まれた製品だということがわかる。自分はこの手のジャンルは一切聴いて来なかったのでこのようなモデルがあったことを見落としていたようだ。

外見とレゲエのイメージから低音誇張系を想像して店頭試聴機を耳に入れた。着け心地は良好である。そして持参したプレイヤーから『私鉄沿線』を流す。僕はヘッドホン、イヤホンを吟味する際のレファレンス音源をこの歌にしている。理由は二十年間あらゆる環境下で聴いて来た歌であり再生機器の能力を見切るのに最も適した音源だからである。
聴いて驚いた。帯域は極めてフラットに近く音場もイヤホンにしてはかなり広い。能率が良いのかポータブル機直差しでも音に元気がある。特筆すべきは通常イヤホンでは表現しづらいコンプの掛かり具合も判断がつくのは珍しい。ましてこの低価格でこのような機種には初めて出会った。迷う間もなくすぐさま購入し帰り道から色々と試聴した。
うん、なかなか良いぞ。歩きながらでも程よく外の音が入ってくるので安心感もある。遮音性が高すぎるモデルは座って聴いている分にはいいが、歩きながらだと自身の足音の振動がビクンビクン響くのでこのくらいがむしろ音楽の邪魔をしなくて良いのだ。また乱暴に片手で差してもポジションがすぐ決まるのもポイントが高い。着ける度に耳たぶを下に引っ張り、グリグリとポジションを探さなくていけないモデルはいくら音質が良かろうと使う頻度が下がってしまう。
いやはや、探せばまだまだ未開のイヤホンも有るものだと感心した。いくつも高価格帯のイヤホンをスパイラルして来たが、安価でもこのような物が存在しているところが‘音’の面白いところだ。
この夏はこれ一本で通してしまった。これからはまたヘッドホンの季節になる。



最後にHouse of Marley(ハウスオブマーリー) SMILE JAMAICAの各ジャンルの向き不向きを三段階評価させて頂いた。
参考に不向きなデータだと思うが。

・野口五郎さん:◎(特にリサイタル音源◎)
・なぎら健壱さん:◎
・高田渡さん:◎
・山口百恵さん:◯
・バニラビーンズ:△
・半田健人:◯
・LUNA SEA:◯
・伊集院光さんのラジオ音源:◯





半田より。