世良公則さんはスター街道を猛スピードで駆け上がっていく、出す曲は全部大ヒット。ドラマ「太陽にほえろ!」の刑事役に抜擢されるなど、本来の才能を開花させて絶好調!
一方冴えないサラリーマンの私は真面目に一生懸命働くも、20代30代は、勤務していた会社が解散、そして自身が失業、家族の会社も倒産、親が借金を背負い夜逃げ同然の引っ越し、好きだった女性との別れ、自分の交通事故など降ってわいて浴びたようなもらい事件もらい事故が続いた。
そんな時。テレビで世良さんの活躍を見るたび、つま恋を思い出して少し元気になった。「あのときご一緒させて頂きました」と画面に勝手に言って勇気を出した。
真面目に真面目に働いて努力していればいつかチャンスが来る!きっとまともな生活が出来る!と考えるようにした。
預金が底をつき、「もはやこれまでか」と思った時、1997年(平成9年)にある会社に縁があって就職させていただいた。おかげさまで今まで20数年お世話になっている。人の縁は偶然の出逢いと別れの繰り返しだとつくづく思う。
十数年前のあの日、仕事で、ある会社で打ち合わせを終え、帰社しようとして下りエレベーターに乗っていたら、途中から世良公則さんが乗ってきた。こんな事ってある?
赤いメッシュのベースボールキャップ姿。
とても礼儀正しく大きな声で「失礼します」と言って世良さんはエレベーターに乗ってきた。
直ぐに本人だとわかった。ほんの数十秒のことだった。逢うはずのない人に逢ったのである。なんでだろう?という不思議な感じ。
「世良さん。俺、30年前、あなたの勇姿を目の当たりにしていたんだよ!」
「世良さんから勇気をたくさん貰ったよ!」
「世良さんと違って茨の道で、お金も大変だった時期もあったけど、今こうして同じエレベーターに乗れる日が来て嬉しい」と言いたかった。
その時私も50代になっていた。(おわり)