ここで祖父の人間性を書いたりして感情移入させようと考えたけどやめておく。
ただ、大好きな祖父だった。
遺品整理の際、
俺は祖父が晩年過ごしていた部屋にある衣類などを、そのまま残して欲しいと言った。
祖父の部屋は、部屋ごと、俺にとっての祖父の形見となった。
やがてその部屋は、上京した俺が帰郷するたびに荷物を置いてく物置と化した。
そんな、
時が止まったままの祖父の私物と
時を重ねるたびに増えていく俺の歴史と、その部屋の物語を
このブログで伝えていこうなんてこれっぽっちも思ってないのにつらつら書いてしまった。
本題は
クローゼットに入っていた、祖父の玉虫色のスーツの話である。
日の光を浴びると見事に…緑やら紫に光るそのスーツの裏地には苗字が刺繍してあって
若い頃の祖父がオーダーメイドで作ってもらったものなんだろうと容易に想像出来た。
それだけではなく、戦後の洋服屋で細いメジャーでサイズを計ってもらっている若かりし頃の祖父の姿まで想像出来た。
その類稀なる俺の想像力によって
俺にとっては、その玉虫色がカッコいいかカッコ悪いかなんてどうでも良くなり
ただ素敵な、祖父の形見となった。
(中略)
ホストになったばかりの俺が、その祖父の形見である玉虫色のスーツを着て出勤したあの日、
めちゃめちゃダセーって爆笑してバカにしてたのがS太朗氏である。
40歳の誕生日を迎えた日に、
「もう城へのプレゼントは決めてんだよ。銀座でオーダースーツ作りにいこう」と言ったのもS太朗氏である。
ということで今日はザギンまで飛んで行きました。
「城!ほら裏に名前刺繍しないと!」と笑ってたので、忘れていた玉虫色のスーツを思い出し
S太朗氏の色々な計らいの上でのプレゼントだったんだなと気付き、
俺の類稀なる想像力は、祖父が玉虫色のスーツを作ったから俺は今ここにいるんだろうという、大いなる運命の流れを感じるまで発展していた。
裏地を悩んでるとS太朗氏が「裏地は結局なんでもいいんだよ、どーせ孫の代になってそれ見てダセー!ってなんだから笑」
とここにも類稀なる想像力の持ち主が…寝る。