姉のような存在

 

京都から福岡に戻った翌日、僕はクラシックコンサートの会場にいた。亡き妻が、姉のように慕っていた女性が出演する恒例行事。彼女の歌を聴くため、毎年欠かさず、行くようにしている。

 

 

女性は、イタリア・ミラノ在住の声楽家、吉田由季さん。

この日、僕の席の後ろには、妻の大学時代の親友、稲森奈津子さんが座っていた。

 

 

開演前のステージを見つめながら、僕は18年前を思い出していた。

 

2008年2月20日。

妻と由季さん、奈津子さんは同じステージに立っていた。「抗がん剤で声が出ない。もう歌えない」と出演に尻込みする妻の背中を2人が押してくれた。その日は娘の誕生日だった。5歳の娘が見た妻のラストステージとなった。

 

由季さん(中央)と千恵

 

奈津子さん(右)と千恵

 

 

クラシック音楽は、心を安定させるセロトニンの分泌を促す。ところが、僕の場合は、その逆で、感情がたかぶる。由季さんの歌声を聴くと、妻の最後のコンサートを思い出してしまうからだ。

 

あれから18年。

 

こればかりは、どうしようもない。

 

 

 

映画にも妻のラストステージの場面が収録されています。