別居した時から私は必死で仕事を増やし、現在は複数の仕事をしている。

どれも特技を生かしたやり甲斐のあるもので、責任ある立場にも立たせてもらうようになっている。


母は離婚についてある程度の納得をしたあとは、私の仕事に興味を持った。


経済的に自立出来るはずがないという前提が見え隠れした。


「その仕事でいくらもらえるの」

「教えなさい。知らないと私は心配で眠れない」

「責任ある仕事だなんて、騙されているのでは」


家を借りていることが有難かったが、それ以外の母の経済的支援は考えていなかった。

最悪のケースまで全て考えて別居に踏み切ったので心配ないと伝えたが、納得しない。


特技で仕事を増やしていることは

「あなたは運がいい」

「そんな実力で仕事をさせてもらえるなんて、有難いと思え」


「ちゃんとその仕事で稼げるのか」


「仕事を紹介してくれた方のおかげ。わたしがお中元を持っていく」


80にもなる母親が娘の仕事先にお中元を持って行くという発想が奇妙だとも思わないのが不思議だった。



複数の仕事の中には福祉の分野がある。
特技を生かして出来ることをしており、クリエイティブな仕事だ。


ところが母はしたり顔で

「私の知り合いも離婚してヘルパーになった。おしもの世話などとても大変だけど、離婚したらそんな仕事しかないと言っていた。やっぱりそうなのね。かわいそうに」

と言った。


「家の近くにも福祉施設があり、覗くとおばあさんたちが見える。こんなところであなたも働いているのかと思って見てきた」


取締役であることを知り、

「その分野は賃金が低いと聞く。あなたはちゃんと貰えているのか」

「具体的にそこから幾ら収入があるか教えてみなさい」

と何度も迫られた。



母との会話の全てが私を苦しめた。



別居前後から母と距離を置いて付き合うようにしてきたが、この頃さらにもう一歩距離を取るようになった。