こんにちは、がんチャレンジャーの花木です。
今日は退院後初の通院をしています。療養中に問題が出ないよう、週一回のペースで通院しなければなりません。
かかるのは、主治医のいる頭頸内科をはじめ、歯科、放射線科と多岐に渡ります。
実際、副作用の収まりに時間がかかり、まだまだ喉が痛く、食事もあまり口から取れていませんので、それぞれに少し相談してみようと思っています。
さて今日は、先週入院時に読了した「あしたのジョー」という漫画について、触れさせてください。
入院中貪るように読みふけり、学生時代初めて読んだときの熱い気持ちが蘇ってきました。
呆れられるかもしれませんが、とある新卒時の入社面接の際、「好きな本は?」と聞かれ、「あしたのジョーです」と答えたことがあるほど、僕はジョーの生き方に心酔していました(もちろん面接は落ちました)。
少年・矢吹丈(ジョー)が、丹下段平という酔いどれのトレーナーとドヤ街で出会い、そこから物語は、ボクシングを中心に進んでいきます。
過酷なトレーニングやそのあまりにも真っ直ぐすぎる性格ゆえの逆境もあり、ジョーにとってはボクシングの世界がほとんど人生そのものと言っていいような生き方を貫きます。
恋や遊びもしたい年頃、かつ、そういった相手がいないわけではないのに、彼はあえて自分をボクシングの世界にのみ押し込んでいく。
しかし、彼は決して、それを不幸と思っていない。ボクシングのプロテストに合格したときのこんなセリフから、そのことが見て取れます。
「いままで世の中をわたってきて……な、なにをやっても不合格の烙印をおされつづけてきた。それが……け、拳闘だけがおれを合格させてくれたんだ。そ…そいつがうれしかったんだ」
唯一の拠り所。それだけに、彼は、拳闘(ボクシング)がすべての生き方とする覚悟を厭わなかったのです。
一見、選択肢があることは、人生を生きやすくするように思われがちですが、僕は逆にジョーのように、「これしかない」と思うものを、ひたすら追い求めていく生き方も、迷いなくシンプルに充実感を得られる生き方なのではないかと思っています。
もう一つ、印象的なシーンがこちら。
「橋がなけりゃ、橋をかけりゃいいんだ。俺たちの手でよ!」
というジョーのセリフです。これは、トレーナーである丹下段平氏が、かつての不祥事が原因で、ボクシングジムの会長としてコミッショナーの認可を受けられないことが分かったときのセリフです。
【出典:『あしたのジョー』ちばてつや他著、ホーム社刊】
ジムの認可が降りなければ、当然配下のジョーもプロテストが受けられない。しかし、彼はそこで、周囲に迎合するのではなく、自分たちの力で運命をたぐりよせることに挑戦します。
道がなければ作ればいい。僕たちはつい、今ある選択肢からできる範囲で何かを選び取ろうとしてしまいがちですが、本当にやりたいことなら、自分の力でその道を作っていけるはず。そんな勇気をもらえるひとコマです(この後ジョーは、とある試合会場に殴り込みをかけ、結果、とある選手とプロのリングで決着をつけざるを得ない状況を自ら作り出すことに成功します)。
そして最後は、もはや言葉のいらないラストシーン。
世界チャンピオンであるホセ・メンドーサとのタイトルマッチを15回最後まで戦い抜き、判定負けした後の姿です。
【出典:『あしたのジョー』ちばてつや他著、ホーム社刊】
戦前からすでにパンチドランカーと言われ、試合はおろか、命の危機さえも覚悟しながら、決して後ろを向くことなく全力を出し切ったジョー。
燃えカスすら残らない、真っ白な灰のようにリングで燃え尽きることこそが自身の目標でもあったジョーは、ついにこのタイトルマッチで、その念願を叶えます。
そう、彼にとっては、目標は勝利ではなく、全力を出し切ること。そして、それを果たした者にだけ許された、この満足感に満ちた表情。
連載当時は、「ジョーは死んだのか、生きているのか」とその疑問が社会現象にまでなったそうで、今もなお多くの諸説がある名シーンです。
高校生のときに初めて読んだ僕も、「死んだのか、いや、やっぱり生きているのか」と自分なりの考え方を示したものですが、今回読み返して意見を新たにしました。
「生きていようが、死んでいようが、ジョーはこの瞬間幸せだった」。これに尽きると。
そういう見方で幕を引くと、僕の中にも、また沸々と人生への意欲が湧いてきます。
人生を完全燃焼させる。
そう簡単ではありませんし、ジョーほどの根性はありませんが、今回有り難くも救われようとしているこの命を大切に使い、これからの人生をできるだけ完全燃焼させていきたい。
少なくとも、無駄にはしたくない。
そんなことを思うわけですね。
読破には少々時間がかかりますが、入社試験で堂々と答えたほどのオススメ漫画です。良かったら、手にとってみてください。
それでは皆様、明日から4連休ですね。ぜひ有意義なGWをお過ごしください。
(了)