10:30am

教科書で記憶に残っているといえばこの絵だった。『PEOPLE』で見ることができる。

Henri Rousseau
THE SLEEPING GYPSY
1897

ぼくの好きなビデオインスタレーション作家のGary Hillも、なぜかこの時代に混じって出展されていた。もちろん『PEOPLE』のコーナーで。

Gary Hill
IN AS MUCH ASIT IS ALWAYS ALREADY TAKING PLACE
1990

MoMA（The Museum of Modern Art）は、World Trade CenterやEmpire State Bulding同様、観光名所のチケットをまとめたCity Passにも組み込まれているNYの観光スポットのひとつになっており、はっきり言って人が多い。そして広すぎるほど広い。そんな中、今は "modern starts"と題された、来年までいくつかのパートに別れて開催される近現代絵画の総ざらいの企画展が開催されている。この期間は1880年から 1920年にかけての『PEOPLE』『THINGS』『PLACES』の三つのパートを見ることができる。それぞれ、人物にモチーフを取ったもの、モノのモチーフを取ったもの、風景にモチーフを取ったものを一同に集めて見せるものだ。ただ、どうしても企画優先になる中で、広いMoMAを埋め尽くすことも合わせて、分厚い美術の教科書を順番に見ている感覚がぬぐい去れない。絵を楽しむには人が多すぎ、作品を楽しむにはいろいろな作家の絵が多すぎる。

このページの一番上の作品はMaria Fernanda Cardosoのインスタレーション "CEMENTERIO-VERTICAL GARDEN"（1992）

11:30am

学生の頃チューリッヒを訪れた際、Munchの大回顧展が開催されていて網羅的に作品を見たことがある。できれば見たくないのに見てしまうような、言い様のない怖さと魅力を持った何かに憑かれたような作品ばかりだった。中でもスミだけで表現された版画作品は、その黒と白だけの紙の上に言い知れぬ深みを持っていたような気がした。今回、この "modern starts"の中の『PEOPLE』では、10点近くの彼のリトの作品が出展されていた。そして、それらは変わらず不思議な魅力を携えていた。しかしながら、何も知らなかった学生の頃の自分が見た感覚と、この歳になって見た感覚はやはり違って、理解はできないもでも、理解の短所ぐらいは感じることができるようになっていたのには、自分でも驚いた。少しは人間の感情の襞や、複雑さ矛盾を感じることができるようになってきたのだろうか。

Edvard Munch
MADONNNA (WOMAN WITH THE BROOCHI; EVA MUDOCCI）
1903

12:15pm

足早に"modern starts"を見終えて、地下に足を伸ばしてみたら、というバーチャル企画展をPC上で開催していた。正確には継続性のある企画のようで、アップロードが行われるもののようだ。この"dot.jp"は、日本の若手の作家で比較的ノンジャンルに近いユニークな作家を取り上げて、ハンディビデオでインタビューした映像を画面上でReal Audioを使って見せるような、比較的ビデオジャーナリスト的な手法を使った企画展だ。実際、数人のキュレーターが作り上げたようだ。Post Petで一躍有名になったHachiyaさんなどがインタビューとともに紹介されている。もちろん網羅的に全ての作家が紹介されているわけではないが、面白いところは外してなくて、キュレーターの人たちの日本の理解は意外と確かなもののように感じられた。この感覚は、日本市場に進出したいアメリカ企業を対象にした、Seattleで開催されたE-commerceのセミナーに参加しても、日本の理解の確かさに驚かされたのと似ている。もちろんほとんどのアメリカ人は、多くの日本人がそうであるように、ステレオタイプで外国を見ているが、数少ないとはいえ理解している人たちは、日本人以上に日本を客観的に把握しているような感に捕らわれる。外からの方が、中は見やすい。

02:00pm

Li- ying姉妹が来たからには、やはりChineseを食べに行く。China Townに行き、なぜか日本人は安いテレフォンカードを買い、Taiwaneseはお土産用のTシャツを買い、そのお店のおやじにおいしいレストランを聞き、Mott Streetまで歩く。Li-yingによれば、この雑多な感じはTaipeiのマーケットの雰囲気に近いとのこと。そんな中から、お客の入りのよかった京新飯店に入る。マーボー豆腐を久々に食べ、日本人は満足。Taiwaneseにはマーボー豆腐に対する何の思い入れもないようだが、今や日本の家庭料理にもなっているマーボー豆腐は日本人には感慨一入のようだった。

京新飯店
69 Mott St
212-233-5877

03:30pm

Chinese をみんなで食べた後、Li-ying姉妹、TetsはEmpire State Buldingへ向かい、ぼくとNaomiはP.S.1 Contemporary Art Centerへ行った。P.S.1は昔小学校だった建物をそのまま利用し、主に現代美術、とくにインスタレーション系を中心に美術館として運営されていて、いくつかの教室でこの企画、いくつかの教室であの企画というように一度にいくつかのギャラリーを見ることができる。今は大きなものでは"CHILDREN OF BERLIN"が開催されていて、冷戦の象徴だったベルリンの壁以降のBerlinのシーンを描いた作品をキュレーターの手によって、Children of Berlin: Cultural Deveropments 1989-1999として、そのシーンが再構築されている。作品そのものはあまり興味が持てるものは少なかったが、企画そのものはなかなか面白かった。 P.S.1についても、箱は面白いが、中身があまり興味深くはなかったというのが、正直な感想だ。

P.S.1 Contemporary Art Center
22-25 Jackson Ave at 46th Ave Long Islandcity
718-482-9454

【NY紀行】MoMAとP.S.1。