ミニ小説(もどき)『四葉のクローバーと赤いカミ』


1:

もう高校も卒業したのに、なんだか皆に取り残されているような
気がする。


親友のさっちんは自分の夢を信じて留学したし、トモミは声優に
なるんだって専門学校で頑張っている。


親の薦めで一応大学には入ったけれど、そこで出来た友人は、
サークル活動とかいって、池麺(イケメン)探しにやっきになってる。


くだらない・・・。
というか、本当は羨ましいのかな?
私はそういうの、ちょっと苦手だから。
本当は私を大切に思ってくれる彼氏も欲しいし、
一緒に千葉にあるネズミの国にも行ってみたい。


はぁ。
いつから異性を意識しすぎるようになったんだろう。


「ねぇ美優、イベント行くでしょ?」


「えっ?」


いきなりユミに言われて、我に返った。
そうだ、ここは大学の食堂。


食堂といっても、ちょっとしたCafeみたいな感じで大きな窓
があり、木洩れ日がガラスを通して癒しを与えてくれる空間と
なっている。


「美優が来てくれると助かるのよね。美優、かわいいから
池さまが寄ってくるし~」

※池さま=イケメンのこと

「え、何いってるの?そ、そんなことないよ。からかって
面白いんでしょ?何にも知らないとかこの前も笑われたし」


そう、なぜかユミが好む池さまとやらが、声を掛けてくること
があるのだけれど、遊ばれそうな気がして怖いし、
その取り巻きの女の子も苦手。だからこっちこないで!
というのが正直な感想。


「もう美優の分もチケット取ってあるのよねぇ」


また勝手な・・・。と思いつつも、ユミが私を色々なところに
連れ出してくれることに感謝している。それが無かったら私は、
大学と家の往復だけになっていたかもしれない。


もっと色々なものを吸収しなくちゃ。
早く大人の考えを持てるようになりたいから・・・。


「分かった。行く」


「本当?ありがとっ。じゃぁこれから私3時限あるからまたね!」


こうしてユミを見送って、私はまた一人学食で物思いに耽った。
4時限まで間が開くのは辛いなぁ・・・。




2:

中学生になりたての頃、家のそばに開発が頓挫したままの結構
広い空き地があって、そこにクローバーが群生したことがあった。


「な、知ってる?例の空き地、クローバーがわんさかだぜ?」


幼馴染のカズシが、その情報を教えてくれた。


「え!そうなの!行きたい!四葉のクローバー欲しい!」


丁度占いの本で、ラッキーアイテムが四葉のクローバーと出て
いて、欲しいなと思っていたところだった。


放課後、家の方向も一緒だったカズシとその空き地に寄り、
四葉のクローバーを探すことになった。
ちなみにカズシは唯一、意識しないで付き合える異性だった。


「あったか?」


「ない・・・」


30分ほど一緒に探してくれたのだけれど、四葉のクローバーは
見つからなかった。


「ちょっと待ってな」


そういうと、カズシは行ってしまった。
待ってと言われても、どうしよう。でも、まだ陽は高いし、
もう少し探してみようかな? そう思い直し、一人で探して
いると・・・。


「美優ちゃん~、なにやってんのぉ?」


クラスの悪ガキ軍団だ。
思わず身を固くしたその時、カズシがその軍団の中から現れた。


「美優、お待たせ。こいつらにも探させるからさ」


カズシが声をかけてくれたらしい。ちょっと迷惑。


最初は目を合わせないように、ぎこちなく端っこに寄って
いた私。でも。彼らが一生懸命地を這って、クローバーを
選り分けている姿がノミ取りをしているサルに見えてきて、
なんだか可笑しくなってしまった。


「クスっ」


「美優ちゃん、何サボってんのぉ!頑張っちゃいましょ!」


軍団の一人に声を掛けられても、その時は素直に受け入れる
ことが出来た。なんだか楽しい気分にもなってきた。


そうこうしている内に、たまたま通り掛かったクラスの女子
数人も参加することになり、総勢10人くらいで四葉のクローバー
探しをすることになった。


「うぉおお!あったぁ!!」


「どれ、みせろ。ん?違うじゃねーか」


悪ガキ軍団たちは、大人しく探すということを知らない
らしい。何かしら笑わせるようなことを言いながら、それでも
手を休めず、探してくれた。


合計1時間くらい探しただろうか? その時、クラスの女子の
一人が四葉のクローバーを見つけたと声をあげた。


カズシはその女子から四葉のクローバーを受け取ると、私に
それをくれた。ちろっと女子を見ると、ちょっと悲しそう。
私は、彼女にクローバーを返すことにした。


「四葉のクローバーは自分で見つけるといいことあるんだって。
気持ちだけ貰うね。ありがとう!」


このことがあってから、ちょっと苦手だった女子グループとも
仲良くすることが出来たし、避けていた悪ガキ軍団とも普通に
会話することが出来るようになった。


中学生活はとっても楽しいスタートとなったのだ。


・・・ところが、それは長くは続かなかった。


【次回は明日夜更新予定です】

※読めそうですか?大丈夫ですか?(不安・・・MAX!叫び