東京のぼる坂くだる坂
ほしおさなえ 筑摩書房2021年5月




アラフォーで母と二人暮らしの富野蓉子。 父・タカシは引っ越し好きの変人で、亡くなるまでに移り住んだ家は20箇所を超える。 それらはすべて東京の有名な坂の近くに建っていた。 幼い頃家を出ていった父の遺言状には、自分が住んだ坂のリストがあった。 その一つ「幽霊坂」を通りかかったことをきっかけに、蓉子は父の足跡を辿り始める。 坂をめぐりながら土地に刻まれた記憶をたどり、坂のある風景が、父の、母の、そしてわたしの さまざまな人生模様を描き出す――。


蓉子の父は、坂の家に住み、引っ越しを繰り返していた。ある日、父は出ていき、帰ってこなかった。
その父が蓉子に残したのは、いくらかの預金とこれまで住んできた坂の名前の一覧だった。蓉子は父が坂にこだわる理由が知りたくて、坂めぐりを始める。

父のこと、母のこと、自分のことを見直すうち、父のことや母の知らない一面を知ることになる。
それでも、父や母のことはわからない。
しかし、のぼったりくだったりしながら人生を歩いていくしかない。という蓉子なりの答えが得られたことがよかったと思う。

東京の有名な坂がイラスト入りで紹介されている。
地方に住む私には、馴染みのないところばかりだが、坂めぐりもおもしろいかもしれない。

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