ルーティーンズ 

長嶋有 講談社 2021年11月




 

 

無数のルーティンで、世界は回っている。作家と漫画家夫婦と2歳の娘がおくる、コロナ下のかけがえのない日常。長嶋有デビュー20年目の家族小説。
 
 2020年春、緊急事態宣言で娘の通う保育園が休園になった。あらゆるものが静止したコロナ下でも、子どもの成長は止まらない。作家の夫と漫画家の妻は、交替で育児をしながら非常時の日常を歩きはじめる――。



自転車が盗まれたり、隣人の腕時計を覗き見したりといったなにげない日常がほほえましい。

コロナ下では、保育園が休園となり、交代で育児をする毎日。
娘といる毎日は、たいへんだけど、楽しんでいるようでもあった。

不要不急とは何をいうのか?
娘を連れて公園へ行くのは、不要不急ではないのか?

娘の保育園を筆頭に、いろんなことが「静止」した。ドラム教室や映画館が休む。そのことは感知できる。公園のブランコや滑り台のように変化をみせた事物も感知できる。だがそれ以上にこの世界がさまざまに動かなくなっていることを、我々は感知しきれていない。>p158

コロナによって目に見えないところでおきている変化を、私たちは見逃しているのだ。

やりようがある世界と、ない世界がある。同じ朝に並んでいる。表現二つ。やりようがないのは、落ち度があってのことではない、ただの不運だ。一方で、全部にやりようがないわけではないと知ることは、これは無駄ではない。希望を感じる。>p164

これは、テレビ放送の撮影のストックがなくなった時、名場面を振り返る特番が始まった時の感想だ。

やり方によって、いい作品が作れるということ。
たいへんなコロナ下だけど、新しい発見があり、工夫すればなんとかなる。

いろんなことにガマンしている生活、この作品を読んで、ああ同じだと、何か安心した気持ちになった。

お気に入り度★★★★