体外受精(IVF)は容器の中で卵子に直接精子を振りかけて受精させる方法ですが、

中には受精せずに終わってしまう卵子もいます。

その様な受精しない卵子に対して顕微授精(ICSI)を行っていくのがレスキューICSIです。


この方法は合理的でとても良さそうですが、一方でそのまま培精(精子と一緒に培養すること)していれば受精していたのではないか?

とか、そのような卵子はICSIしても育たないのではないか?

といったような疑問もあり、その効果に懐疑的な意見もあります。
 

そこで今回はレスキューICSIについてまとめた研究をご紹介します。
Effect of coincubation time of sperm-oocytes on fertilization, embryonic development, and
subsequent pregnancy outcome. (媒精時間と受精率、分割、妊娠率の関係)
 

こちらは中国のDai氏らが2012年のSystems Biology in Reproductive Medicine誌に発表した論文です。
この論文では、まず媒精時間によって短時間媒精群(4時間)通常媒精群(16-18時間)の2群に分けています。


 

上の表の結果を見てみると、精液所見が正常な群においては、受精率、妊娠率ともに差がないことが分かります。

つまり、受精は4時間までに起こっており、それ以降は時間をかけても受精率は増えないということになります。

一方で、精液所見異常群では受精率が62.6% vs 68.7%と通常媒精群の方が高くなっています。

これは精子の総数が少ない場合は卵子の周りの顆粒膜細胞の層を突破するのに時間がかかるからと考えられます。

 

 

 

続いて、短時間媒精群で受精しなかった卵子に対して行ったレスキューICSIの結果ですが、受精率71.3%、妊娠率34.7%と上記の体外受精の結果と比べてもそれ程遜色のない結果になっています。

そのまま媒精していたら受精しない卵子であった事を考えると上出来ではないでしょうか。

ということで、レスキューICSIは短時間媒精において受精障害を認める場合には有効な手段であると考えられました。


ちなみに短時間媒精群のみレスキューICSIを行っている理由は、卵子を受精しない状態で1日置いておくと卵子の老化が起こり妊娠率が極端に下がることが確認されているからです。


まとめると
精液所見が正常な場合、体外受精の媒精時間は4時間でも18時間でも結果に影響しない。
4時間の媒精で受精しない場合、レスキューICSIは効果がある。
ということでした。


英ウィメンズクリニックではこのような知見から体外受精で受精障害のある場合は積極的にレスキューICSIを行っております

また、精液所見が悪い方に関しては始めからICSIを提案しております。

受精方法だけでも色々選択肢がありますので、納得できる方法を選択してくださいね。


(文責:医師部門 江夏徳寿、 理事長 塩谷雅英)
 

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