私に最初聞こえ出した幻聴は、漫才のツッコミみたいな声だった。


通りすがりの人を、「〇〇(所属)の〇〇さんだよ」と言うのはスタンダードで、


私が会話する、たとえばお医者さんとかカウンセラーさんとかの言葉に、合いの手を入れるのはしょっちゅう。絶妙すぎてゲラゲラ笑わせられることもしばしば。「先生はなになにと思っている」とか「いま、時計を見ました」みたいな実況的なものもあった。


「あなた(←私のこと)は〇〇に向いていません!」とか「ハイと言ったらイイエの意味ですよ」とか、「県警の〇〇さんが向かってきてます」とか、クソデカボイスで話しかけ続けてくるので、景色とか味に集中できない。


観光地や繁華街に行こうものなら、観光案内的な声まで発生する。不思議と観光地のその声は割と正しいことを言ってくれていたようで、タクシーとか巡る順番とか、土産物屋さんの珍しい品を示してくれた。勘が働かない主人の思いつきとか真偽のわからないネット情報に頼るよりは、そのくそやかましい幻聴のお陰で(?)スムーズに移動できたかもしれない。


でも真夜中の止まない、調子の良くないリズムの声の幻聴は、しんどかった。なんでこんなに大きな声で聞こえているのに主人はなんとも無いように寝ていられるのだろうと、恨めしくもあった。(当時の私は、それを「幻聴」とも思えず、特殊無線のように一定の、ある程度の人たちに聞こえているものだと思っていた。)



この間私は通院が不可能になって、薬が無いまま一年近く放置だったから、余計悪化したように思う。