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 なくそう子どもの貧困 JPNews 01.02.06


 「なくそう!子どもの貧困」全国ネットワーク(仮称)準備会設立シンポジウム「つながろう!市民発 子どもの貧困解決政策へ」が1月31日、東京都内の立教大学で開かれました。学費払えなくて高校が卒業できない状況にある子どもたちの現状が報告されたり、地域で取り組む貧困対策が紹介されました。そして、全国で活動をしている人たちのネットワークづくりを呼びかけました。

 まず第一部では、何らかの理由によって生じた経済的な困難さから、学費が支払えない子どもたちが報告をしました。

 病死で父親をなくした大学生の森本早紀さんは、親を亡くした子どもたちに経済的な援助をする「あしなが育英会」の奨学生。昨年開かれた「遺児と母親の全国大会」での「子どもの貧困対策基本法」の制定をアピールしたことを報告した。

 同大会で要望した「子どもの貧困対策基本法」は、まだメモ段階で具体的な法文は出来上がっていませんが、1)ひとり親家庭の貧困率(54.3%)を5年以内に半減、10年以内に10%未満へ、2)子どもの貧困の実態や対策を年次報告としてまとめ、公表すること、国の行政組織を改編し、「子ども家庭省」を設立、を求めています。

 また、熊本県は高校授業料の滞納率は全国で2位といった厳しい状況がある。そのため、熊本私立学校教職員組合連合会では「熊本私学教育支援事業団」を設立し、1億円を目標した募金活動を始めています。参加した高校生の1人は、

 「自分の周りには授業料を払えなくて学校を中退した人はいない。でもいつ自分がなるかわからない。だからやっているんです。苦しんでいるのは高校生。だから高校生がやらないといけないと思ったんです」

 と話しました。

 また、ある私立学校の校長が、学校名等を匿名とすることを条件に、

 「お金があるから私立に来ているわけではないことを知って欲しい。休んでいる日も生活費のためにバイトをしている子がいる。その子は半年分の授業料を滞納していた。進学のためにしていた貯金も生活費に繰り入れていた。しかし、滞納分を払えなかったために、卒業式に証書は渡せなかった。『私たちは、滞納分を支払えるのを待ちたい』と思ったが、なかなか難しかった」

 と声を詰まらせながら、報告しました。

 反貧困ネットワークの代表で、現在は内閣府の参与を務める湯浅誠さんは、

 「年度末の問題は卒業問題だけでなく自殺の問題もある。貧困の連鎖の問題が言われている。自己責任だと言われる。もともとつながっている問題をバラバラにされてつぶされていく。言い続ける人は永遠に言い続ける。綱引き。今目の前で解決しなければならない」

 第2部では、各地域での取り組みが紹介されました。東京北児童相談所の川松亮さんは、荒川区などの取り組みを紹介。「子どもの貧困問題検討委員会」を設置し、実態調査を行い、課題を抽出した、ということです。足立区や板橋区でも支援事業を行っていますが、社会施策の充実によって、親子・家庭を支えていくことが必要、と話しました。

 また、弁護士の森川清さんが、日弁連で行った、イギリスにおける子どもの貧困対策の実態調査について報告しました。調査によりますと、1)産まれてから社会に出るまでの継続的支援、2)子どもがいる世帯への経済的支援、3)民間組織の活動、によって、「子どもの貧困はかつて、日本以上にひどかったが、貧困率は下がった」といいます。

 「イギリスの貧困対策から学ぶべきことは、『子どもの貧困は撲滅は社会の責任であることを社会全体に認識させることが重要です。徹底した調査・分析をして、証拠に基づいた議論をすることが大切です。そして、子どもの成長過程を意識して、切れ目のない政策をすることが求められます」(森川さん)

 このシンポジウム終了後、準備会の設立にむけた話し合いがありました。今後の課題としては、1)子どもの貧困対策基本法、2)中高生の卒業クライシス、3)子どもの権利手帳、4)調査研究、5)参院選に向けたマニフェスト作り、6)ファンド開発チーム、といった課題ごとのプロジェクトチームごとに活動をすることを確認しました。

 ただ、貧困のイメージの共有、どこまでが国が解決すべき問題なのか、どのように活動をしていくか、当事者の子どもたちがどのように参加するのか、といった課題があるように思えました。

 厚生労働省は、民主党政権になってから初めて、経済協力開発機構(OECD)と同様の計算方法で、日本の相対的貧困率と、子どもの相対的貧困率を発表した。それによると、2006年調査で、相対的貧困率は15.7%、子どもの相対的貧困率は14.2%だった。OECD加盟国中2位です。

 韓国の相対的貧困率は14.6%。OECD加盟国中、8位。OECD平均は10.8%となっています。

 ちなみに、相対的貧困率は、世界の可処分所得を世帯人数の平方根で割って調整した所得がm、中央値(平均値)の半分に満たない世帯員の割合を指します。子どもの貧困率は、17歳以下で、その中央値の半分に満たない人の数です。

 もちろん、経済的理由によって、進学ができない状況は不幸です。日本は、高等教育の無償化を目指した国際人権規約を留保しています。この条項を留保しているのは、日本のほかには、ルワンダ、マダガスカルだけです。国連からの勧告もされていますが、改善はなされていません。

 できるだけ、社会に出る前の、教育の機会均等がなされるべきではないでしょうか。一部の高校や大学では、貧困家庭には減免、あるいは免除の措置が取られています。しかし、学費外の諸経費も高額だったりします。

 学費や諸経費が安ければ、学生が過度なアルバイトをしないで済むかもしれません。生まれながらの経済的な不公平は、仕方がない面があります。しかし、子どもたちはそうした環境を選んできたわけではないのです。

 経済的な困難さを放置しておけば、子どもたちの将来の選択肢が狭まり、意欲の低下につながります。また、希望を描かなくなったりします。貧困が貧困を呼ぶスパイラルに陥る可能性が高いのです。