さざなみ
45 Years

2015年イギリス
脚本 / 監督 : アンドリュー・ヘイ
原作 : デヴィッド・コンスタンティン

さざなみ

結婚45周年記念パーティーを控えた夫婦、ケイト (シャーロット・ランプリング) とジェフ (トム・コートネイ) のお話。

若いときに山の事故で亡くなった、ジェフの昔の恋人の遺体が発見されたことがきっかけで、ケイトの中にもやもやが生まれ不信感を募らせていく姿が、ケイトの目線で描かれてました。

終始静かなトーンだったけど、ケイトの目線で見たジェフの言動と、それに対するケイトのリアクションが、ケイトの心情をものすごく雄弁に語ってました!

ジェフは良くも悪くも正直な人で、言葉には本当に嘘はないんでしょうね。良くも悪くも。

「人生は、全てに白黒つけられる程シンプルじゃないんだよ」的に、「若い恋人を引きずる気持ちも、ケイトへの愛情も、全て自分なのさ」って背中が語ってて。

「いやそうなんでしょうけれど!そうなんでしょうけれど、もうちょっとあるでしょう~?!」というケイトの心の叫びも聞こえてくるようでした。

私にとっては、ジェフとのやり取りで感じたケイトの「ジェフの今の答えはどうなのか?アリなのか?」という表情はとても共感するものでした。

例えば、
ケイト「子供がいないから写真が少ない」ジェフ「写真撮ってないで楽しもうってケイトが言ったんじゃん」...子供がいない (恐らくほしかったけど授からなかったのでしょうね) 寂しさを汲み取ってほしい。返事は「これからいっぱい撮ろう」くらいでいいから!

ケイト「事故が起きてなかったら彼女と結婚してた?」ジェフ「そうだね!」...いやいや。
しかも後で彼女のお腹には赤ちゃんがいたことが判明して、ケイトのショックの大きさは計り知れない。
つうかあんな場所に昔の彼女の思い出一式を置いておいて、分かるように懐かしんでるのってどうなのか?
ジェフからしたら「昔のことなのだから」なのでしょうが、気遣いが感じられないわ。

ケイト「スイスに行くの?」ジェフ「行かないよ。足が悪いから」...いやいや。

。。。こういうの、ジェフ (殿方) にしてみたら「面倒くさい!」ってことなんでしょうけどね。

ケイトが「パーティーに来るだけでいいから」と言ったとき、ジェフへの期待値がそこまで下がってることにジェフは気づくべきだったと思いますが、それを言ったら「口で言わなきゃ分からないよ」ってことで。

ケイトの不信感も、当初はちょっとした嫉妬レベルだったのが、こういうやり取りの積み重ねで、「この45年は何だったのか?」という自分の存在意義レベルに発展してしまったような気がします。

ジェフの諦めの人生 (余生) のパートナーだったのか、と。
がっかりだわ!

ラストの後ケイトはどうしたのかな?と想像したけど、多分持ちこたえたんじゃないかしら。
それこそ「こんなのさざなみ!」としなければ、本当に45年間の自分の人生は何だったのかってことになってしまうから。
もう意地で。

あと、パーティーのスピーチ、あれはどうすればケイトのOKが出るものだったのかは、考えても分かりませんでした。。。


シャーロット・ランプリングはもう70歳なのね!
かっこよくて美しかった!!
静かに鬱積を溜めていく表情や所作が、生々しい、生きた女性でした恋の矢
美しく年齢を重ねられてて、本当に憧れますねこ

(シネスイッチ銀座)