このイラストのような会合が当たり前だった物理サークルですが、新型コロナで通常の会合は開けなくなっています。(『いきいき物理わくわく実験1』イラストより)
こういうとき動くのは新世代の人たち。
三重の佐野さん、愛知の成相さんが、オンライン物理サークルを提案してくれました。
佐野さんがオンライン会議用のZOOMに強く、メールを利用してサークルのメンバーにZOOM会議を設定してくれるというので、ぼくはおんぶにだっこで参加。
正式の会の前に、一度お試し会をやりました。これが、ずいぶん効果的でしたね。
画面を共有する方法とか、自分の持っている動画をみんなに見てもらう方法とか(まあ、これも画面共有のひとつなんですが)、背景に好きな絵を設定する方法とか、チャットをする方法とか・・・その場で佐野さんに質問しながら、ひとつずつ覚えていきました。
ZOOMはもともと企業内でオンライン会議をするために開発されたソフトということで、一般ユーザーを想定していないため、いわゆるセキュリティ対策が脆弱。といっても、ぼくらのサークルはのぞかれて困るような内容ではありませんから、それほど心配することはないだろう、と。
今回、象徴的だったのは、この画像(実際には動画です)ですかね。
動画として空中に浮かんでいるたくさんの3D磁石が、まるでアニメ『電脳コイル』の1シーンを見ているようで、感動しました。
アニメ『電脳コイル』でも、眼鏡を通して空中に浮かぶコンピューター映像を見たり、操作したり、場合によっては手に持ったり(!)します。
アニメを見ているときは「未来の映像だなあ」と思っていたのですが、こうして実物を見ると感慨深いですねえ。
『電脳コイル』のことは、たぶんサークルの人にはわかんないだろうと思って、発言しませんでしたが、最近、うちの娘がアマゾンプライムの動画を見てはまっているので、この記事では書くことにしました。
三重の植田さんの開発した3Dソフト。VRメガネを装着すると空間に仮想的に置いた磁石が磁石の磁場に反応して、磁場の様子を示してくれます。
これが、動画に普通に写っているのを見て、ぼくはびっくり。
「その3D映像は、後で合成したんですか?」と聞いたら、答はあっけないほど単純。「3Dカメラで見えている映像を、そのまま録画した」とのことでした。
そっかあ・・・
でも、びっくりですねえ。
画面横に並んでいるのは、この時間帯の参加者の面々です。うちの娘の顔はイラストにしてありますが、これは後から貼り付けたものです。
こちらはぼくが紹介した動力源のいらないホバークラフト。以前、うちの娘が参加したサイエンスイベントで、こんな感じのホバークラフトで遊ぶコーナーがあったのです。くわしく装置を見たかったのですが、残念ながら、うちの娘はそのイベントには参加せず、装置を見ることができませんでした。
で、ちらりと遠目で見たところ、穴の開いたビニール袋を牛乳パックにくっつけているっぽかった(遠目なので、ほとんど噂話程度の情報。くやし〜)ので、それを思い出して作ってみました。
イメージ的には、オランダのおもちゃでレンズを組み合わせて遠眼鏡をつくったという噂話から、望遠鏡を作成したガリレオになった気分ですかね・・・
牛乳パックを加工したアメンボみたいなのを作ってみたり、CD板にくっつけてみたりしましているうちに、単純にダンボール板にビニール袋をくっつけるだけでいいんじゃないかと気がつきました。
ビニール袋を膨らませるのに、じつは特別な構造は必要ないこともわかりました。
重力で板の下のビニール袋が膨らむのを使えばいいのです。
最初は板を手で持って上下に動かし、重力でビニール袋が膨らむようにしていましたが、膨らませるのは意外に大変でした。
ほんの少し膨らんでいれば、そのまま床に乗せ、板をもってホバークラフトを床に軽くたたきつけると、どういうわけか、ビニール袋が見る間に膨らんでいくことがわかりました。
装置そのものも好評だったのですが、思いがけず議論が白熱したのが、なぜたたくだけでビニール袋が膨らむのか、という問題。
重力だ、紙風船と同じだ、たたいたときに風が入るんだ、と、大騒ぎ。その場で装置と床(にかわる板)を横向きにした実験ができたので、すぐに重力説は消えました。
その日の結論は、紙風船とは違い、穴が大きいので風の効果の方が強そうだ・・・ということだったでしょうか。
数分の発表のつもりで用意した実験だったのですが、あっという間に二三十分経ってしまったのではないでしょうか。
これは伊藤政夫さんのパイプオルガンみたいな楽器の紹介。パイプを横向きにして風を送っても音が出る、ということで、熱することではなく、空気の流れがあることがポイントだろうという報告でした。
画面の横を見ると、チャット機能でいろいろ質問してますね。
オンライン会議ホストの植田さんが、チャットからうまく質問を拾ってくれて、会議はけっこうスムーズに進んだと思います。
これは、伊藤ひろしさんのIHヒーターの実験。
導線で輪をつくり豆電球につなぐと、豆電球が光ります。
カメラをうまく使うと、こういう感じで部屋で実験する様子も見られるんだなあと感心しました。
実験自体は面白かったのですが、ぼくは伊藤ひろしさんが「このまわりは等電位になっている」という一言に引っかかって、けっこうしつこく議論させてもらいました。どうも、すみません。
というのは、磁場変動の周りにできる電場については、通常の意味の「電位」が定義できないからです。
もともと電位など、ポテンシャルと呼ばれる概念は、ポテンシャルエネルギー(位置エネルギー)と密接に関係した概念です。
位置エネルギーの特徴は、2点間のエネルギー差、つまり、ものを運ぶときに必要な仕事量が、経路によらないことです。閉じたループを一周すれば、その経路にそった仕事量、つまり電位の増減は0になります。
しかし、磁場変動の周りにできる電場では、電気力線に沿って一周すると、電荷を運ぶのに必要な仕事はどんどん増え続ける(あるいは減り続ける)ことになり、一周するときの仕事量は決して0にはなりません。
したがって、こういう電場には通常の意味の電位が定義できないのです。
もうちょっといろいろ話したのですが、専門的な電磁場の理論になってしうので、やめておきますね。
こちらは、同じく伊藤ひろしさんが前に作ったプログラムで、導体表面の電荷一つ一つが及ぼし合う力を合成して、それぞれの電荷がどう動くかをシミュレーションしたもの。うねうねと電荷が動くのが見えて、おもしろかったです。紫の点は等電位面を示していて、黄色の線は電場を示しています。
これは、ZOOM会議を提案した佐野さんによる、新型コロナ休校3ヶ月の報告。オフレコの内容も含みますので、残念ですが、タイトル画面だけ紹介します。(すごくオモシロイ話だったんですが。まあ、会に参加した人だけの特典、ということで)
こちらは、三重の川上さんの発表。ガリレオ・ガリレイの『新科学対話』にある【速度は落下距離に比例するか】という問題提起に対して、自分なりにこういう感じで理解すればいいのかと考えたので、との報告でした。(**)
どこに書いてあったのか確認していない、とのことだったので、ぼくが手持ちの『新科学対話』を本棚から持ってきて、その場で調べることができました。これは、オンライン会議ならではの利点ですね。
会議に自分の本棚を持って行くことはできませんから。
(**)【速度は落下距離に比例するか】が【速度は落下速度に比例するか】というなぞの文章になっていました。川上さんから指摘を受けて気づきました。さっそく訂正しておきます。なお、速度などの量が時間にともなってどう変化するかという発想で調べたのはガリレオ・ガリレイが最初の人。今の物理学で当たり前になっている時間を基本にして物理現象を考えるというメソッドは、ガリレオが開祖ということになります。
こちらは鈴木久さんの発表で、タニタの電子秤の話。
なんと、地域ごとの重力の違いを補正する機能がついているとか。
おそるべし、タニタ!
たしかに、北海道から沖縄まで、緯度に応じて5つの地域に分け、補正できるようになっています。
なぜ重力が違うのかは、高校の物理で習います。おおざっぱに言うと、地球の自転による遠心力の効果ですね。
じっさいには、地下の岩石構成によっても重力の違いがありますので、遠心力だけの効果ではありません。
今回は、このくらいで。
オンライン会議、それなりに面白かったんですが・・・
ぼくはやっぱり、往復の不便を考えても、普通の会合の方が楽しいですね。
オンライン会議、次回は6月13日だそうです。
<物理サークル>
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