• IAEAタスクフォース第2回レポート:ALPS処理水放出は引き続き国際安全基準に合致
  • UAE、第一原発完成を間近にして、第二原子力発電所を追加建設の可能性
  • エジプトのエル・ダバ・プロジェクト、建設進捗状況を報告
  • 資金ギャップがEUの原子力拡大推進の脅威に
  • ボーグル 3号機、弁トラブルでの停止を解消して運転復旧
  • ロールス・ロイスSMR、150万ドルのシミュレータ契約を締結
  • 研究: 原子力発電所へのデータセンター併設で送電網への負荷を緩和可能
  • 米DOE、エネルギーと安全保障におけるAIのロードマップを発表
  • BWXT ワイオミング州での TRISO燃料工場建設を検討へ
  • ニジェールのウラン鉱床の探査ライセンスの譲渡
  • Urエナジー、2024年に3310万ドルの収益予想、ウラン生産を拡大へ
  • オクロ、燃料リサイクル プロセスを実証
     

IAEAタスクフォース第2回レポート:ALPS処理水放出は引き続き国際安全基準に合致

IAEA(国際原子力機関)のタスクフォースは、7/18、日本の東京電力福島第一原子力発電所からの処理水放出が引き続き国際安全基準に合致していることを確認した。2023年8月の放出開始以来第2回目の報告書で、処理水海洋放出安全性検証タスクフォースは、IAEAの包括的安全報告書の結論も再確認した。今回の報告書は、4/23~26に実施された、2021年の設置以来7度目の訪日ミッションの調査結果をまとめたもので、次のような結論も下した。

l  既存の規制基盤は、ALPS処理水放出に関する運用上の安全監視を適切に行えるものであり、原子力規制委員会が継続的に現地で活動している場面に直接、立ち会うことができた。

l  機器や施設が日本の処理水放出計画および関連する国際安全基準に合致した方法で設置され、運用されていることを確認した。

l  東電と日本政府が報告するデータの精度と信頼性について、包括的で透明性がありかつ客観的な検証を提供し、信頼の構築に貢献するという点で、IAEAが継続的に検証活動と現地での独立したサンプリング分析を実施することの重要性を指摘した。

東電は2023/8/24に放水を開始し、今後も段階的に放水を続ける予定。7/16に7回目の放水を完了し、これまでに放水された水の総量は約5万5000㎥。IAEAの専門家が7回放出された水を分析した結果、これ までに放出されたALPS処理水の各バッチのトリチウム濃度は 日本の運用基準をはるかに下回っていることが確認されている。

報告書表紙(画像:IAEA)

関連日本語情報:太平洋・島サミット(PALM10)でも理解へ

https://www.jaif.or.jp/journal/japan/23979.html 

 

UAE、第一原発完成を間近にして、第二原子力発電所を追加建設の可能性

アラブ首長国連邦(UAE)では、バラカの第一原発の最終炉である4号機が営業運転開始に近づく中、第二原発の建設が検討されている。IAEA(国際原子力機関)へのUAE常任代表であるハマド・アルカアビ氏によれば、第二原発は2基か4基の原子炉を擁する可能性が高く、2024年中に入札が行われる可能性があるという。

2010/3/31、アブダビ近郊リワ西部付近の送電線支柱鉄塔。REUTERS/Jumana ElHeloueh/資料写真

 

エジプトのエル・ダバ・プロジェクト、建設進捗状況を報告

エジプト初の原子力発電所は順調に進んでおり、3号機のコアキャッチャが現在現場に到着し、2000トン容量のクレーンも設置された。ロスアトムは、1号機の原子炉設備に使用されるブランク材の75%が既に製造されていると報告している。このプロジェクトはVVER-1200ユニット4基で構成される。4基の建設はほぼ同時に行われ、1号機のファースト・コンクリートは2022年7月。その後他号機の建設も順次開始され、2024年1月に4号機のファースト・コンクリートが打設された。1号機の内側格納容器の第1層は5月に完成。新しいクレーンの初の重要な仕事は3号機のコアキャッチャを所定の位置に吊り込むことで、10月に行われる可能性がある。

7/2に最大高さ156mで最大2000tの楊重が可能な巨大クレーンが現地到着(画像:ロスアトム)

ロスアトムは、材料部門では原子炉容器や主循環系配管などの主要機器の製造に使用される重量650トンを超える冶金ブランク材の75%の製造を終え、加工工場に向け出荷したと述べている(画像:ロスアトム)

​​ 7/1には、3号機のコアキャッチャがロシアから海路でエル・ダバに到着した。コアキャッチャの3つの主要パーツの総重量は480t(画像:ロスアトム)

 

資金ギャップがEUの原子力拡大推進の脅威に

金融規制に関する研究と擁護活動を行う欧州のNGOファイナンス・ウォッチの報告書によると、EUが原子力発電を大幅に拡大する計画は、資金ギャップのために危機に瀕しているという。将来の電力市場に関する不確実性とともに、高額の負債と財政的制約が大きな障害となっている。報告書は、欧州委員会(EC)に対し、投資不足のリスクを認識し、資本市場の効率性を高めるために財政規則を改正するよう求めている。

ユーロスタットとIMFのデータをまとめてブルームバーグが作成(画像:ブルームバーグ)

 

ボーグル 3号機、弁トラブルでの停止を解消して運転復旧

ジョージア州のボーグル・プラント3号機は、弁のトラブルにより先週停止していたが、運転を再開した。このトラブルにもかかわらず、ジョージア・パワーによれば、1年前の運開以来、原子炉は98%以上の時間稼働率で定格全出力運転を続けている。

左から、2023/7/31、ボーグル3号機と4号機(Arvin Temkar/The Atlanta Journal-Constitution/TNS) ARVIN TEMKAR TNS)

 

ロールス・ロイスSMR、150万ドルのシミュレータ契約を締結

ロールス・ロイスSMR社とGSEソリューションズ社は、ロールス・ロイスの小型モジュール式原子炉(SMR)の開発を支援するため、性能と制御システムを模擬するシミュレータ作成に向け、150万ドルの提携契約を結んだ。ロールス・ロイス SMR のエンジニアリング・ディレクターであるデビッド・ドッド氏は、「シミュレーションと試験のプラットフォームを使えるようになるのは、ロールス・ロイス SMR 発電プラント初号機配備に向けた新たな前進だ。GSEとの協力は、我々のデジタル・ファーストの方法論と、新しい原子力を開発するための真のモジュラー・アプローチの一環でもある。」と語る。

ロールスロイス SMR 設計の断面図 (ロールスロイス SMR 提供)

 

研究: 原子力発電所へのデータセンター併設で送電網への負荷を緩和可能

米国最大の電力網運営会社PJMインターコネクションの元COOであるマイケル・コルモス氏の研究によると、特に競争力のある電力市場において、原子力発電所にデータセンターを併設することで、送電容量の追加を求める圧力が減少し、相互接続の長期遅延を防ぐことができるという。「送電網からサービスを受けないことで、新しい負荷に対するレスポンスは早くできるが、需要家側負担(behind-the-meter)の配電設備コストを支払い、送電網からサービスを受けないことで発生し得るコストとリスクを負わなければならない。」という。

サスケハナ原子力発電所(出典: タレン・エナジー)

 

米DOE、エネルギーと安全保障におけるAIのロードマップを発表

米国DOE(エネルギー省)は、「科学、安全保障、技術のための人工知能のフロンティア(FASST : Frontiers in Artificial Intelligence for Science, Security, and Technology)」プログラムを通じて、17の国立研究所における国家安全保障とエネルギー研究イニシアティブにおけるAIの利用を拡大することを計画している。DOEジェニファー・グランホルム長官は、「FASSTは、17の国立研究所にまたがる先進的なスーパーコンピューティングと研究インフラの国家管理者としてのDOEの役割を基盤として、AIにおける国家的能力を提供し、今後数十年にわたる技術的ブレークスルーを可能にする」と述べた。

2019/7/22、ワシントンDCのDOE庁舎(アラステア・パイク撮影/AFP、ゲッティイメージズ経由)

関連報道:

https://www.axios.com/2024/07/16/exclusive-energy-department-proposes-ai-strategy 

 

BWXT ワイオミング州での TRISO燃料工場建設を検討へ

BWXテクノロジーズ(BWXT)社は、米国ワイオミング州でTRISO核燃料生産施設を新たに建設できる可能性のある場所を評価するため、同州エネルギー局と協力協定を締結した。この協定に基づき、BWXTはワイオミング州に燃料加工施設を建設するための要件を評価する。約18か月の作業で、施設候補地、製品仕様、施設設計エンジニアリング、推定資本費及び運転費、人員配置と従業員のスキル要件、サプライ・チェーンへのニーズ、許認可およびその他の要件などの事項を評価する。

TRISO燃料粒子完成品の入ったバイアル瓶 (画像: BWXT)

 

ニジェールのウラン鉱床の探査ライセンスの譲渡

米国に拠点を置くアフリカン・ディスカバリー・グループ(AFDG)社は、ニジェールのオウリチャ-3鉱床のウラン探査ライセンスをセントラル・グローバル・アクセス・インターナショナル・ニジェール(CGAIN)社から取得する意向書に署名した。デラウェア州に拠点を置くAFDG は、完了に合わせて社名をアフリカン・ ウラニウムに変更する予定であり、取引完了後はアフリカ大陸でのウラン探査に専念する。オウリチャ-3はニジェールの北部アガデス地域にあり、アフリカ最高品位のウラン鉱床ダサ・プロジェクトの北西35㎞、世界最大級のウラン埋蔵量を持つイモーラレン鉱山の南20㎞に位置している。

一方、ゴビエックス(GoviEX)社はマダウエラ鉱床の採掘権の撤回に対する損害賠償を求める予定である。2023年7月、ニジェールでクーデターが発生した影響で、カナダのゴビエックス・ウランは最近、マダウエラ鉱床の採掘権を取り消されていた。

オウリチャ3鉱床の地図(画像:CGAIN)

 

Urエナジー、2024年に3310万ドルの収益予想、ウラン生産を拡大へ

第2四半期に7万5,000ポンドU3O8のウラン精鉱(イエローケーキ)を販売し、今年下半期には49万5,000ポンドの納入を見込んでいるUrエナジー社は、2024年のイエローケーキ販売で3,310万ドルの収益を見込んでいる。同社は来年、最大73万ポンドの納入を見込んでおり、シャーリー・ベイスン鉱山への拡張を計画しており、年間生産能力はほぼ倍の220万ポンド(846tU)になる。

Urエナジー社長兼CEOジョン・キャッシュ(パット・マイオ、カウボーイ・ステート・デイリー)

 

オクロ、燃料リサイクル プロセスを実証

カリフォルニアに拠点を置く液体金属高速炉開発企業オクロ社は、アルゴンヌ国立研究所(ANL)およびアイダホ国立研究所(INL)と共同で、先進的な燃料リサイクル プロセスの主要段階のエンド・ツー・エンドでの実証を初めて成功裏に完了した。米国DOEエネルギー先端研究計画局(ARPA-E)の「放射性廃棄物と先進的原子炉における処分システムの合理化(ONWARDS)」プログラムの下で500万ドルのコストシェアを獲得したこのプロジェクトは、商業規模の先進燃料リサイクル施設の展開促進を目指している。同社の燃料リサイクル技術は、使用済燃料から残りの潜在的エネルギーの90%以上を抽出するよう設計されており、同社が開発中のマイクロ原子炉「パワーハウス」でのクリーンエネルギーを生成に利用されるという。この技術には、超ウラン元素を一体で維持するなど、独自の核拡散防止機能が組み込まれている。

ANLの化学・燃料サイクル技術部門の技術者ら(写真:ANL)