• IAEA事務局長、世銀に新規原子力発電所建設への融資を要請
  • ポーランドのSMR展開を支援する複数の企業間契約が成立
  • 韓国の i-SMR 開発用シミュレータが始動
  • コペンハーゲン・アトミクス、溶融塩炉臨界実験でポール・シェラー研と協力
  • 米エナジー・ノースウェスト、ワシントン州リッチランド近郊に12基のSMRを計画。
  • WSJ:米ハイテク大手、原子力発電を囲い込み、送電網からのクリーン電力を狙う
  • 需要の変化で苦境に立たされる米国の電力網
  • グリッド・ストラテジーズ社創業者が米国送電の問題とと蓄電の意義について語る
  • 米連邦最高裁、連邦政府機関の規制権限を縮小
  • 核融合プロジェクトITERの最終マグネットが現地到着
     

IAEA事務局長、世銀に新規原子力発電所建設への融資を要請

IAEA(国際原子力機関)ラファエル・マリアノ・グロッシ事務局長は、世界銀行(世銀)やその他の多国籍開発銀行に対し、急速かつ徹底した脱炭素化の実現に向けた取り組みの一環として、原子力発電新設プロジェクトへの融資に着手するよう要請した。事務局長は2024年6月最後の週、米国ワシントンで世界銀行理事会のメンバーに語ったコメントの中で、「アフリカからアジアまで、エネルギーミックスに原子力を追加しようとしている国々は、技術的および財政的支援を必要としている。・・・しかし、資金調達は依然としてハードルとなっている。民間セクターが資金調達にますます貢献する必要がある一方で、世界銀行などの多国間開発銀行は、原子力プロジェクトの融資可能性を評価し、手頃な利率で融資を行うことで、持続可能な開発を推進することができる」と述べた。一部の多国籍開発銀行は、既存の原子力発電所の廃止やアップグレードに融資を行っているが、新規建設プロジェクトの資金調達には貢献していない。 国際エネルギー機関(IEA)は、気候目標を達成するには原子力エネルギー容量を2050年までに2倍以上にする必要があるとし)ており、原子力への年間投資が2倍以上の1,000億ドルになるとIAEAは見積もっている。

(画像:D.カンダノ・ラリス/IAEA)

 

ポーランドのSMR展開を支援する複数の企業間契約が成立

ポーランドのオーレン・シントス・グリーン・エナジー (OSGE)社は、ポーランドにおける小型モジュール炉(SMR) BWRX-300のフリート展開計画を支援するため、北米企業との間で2本の二社間提携契約を締結した。OSGEは、エーコン・グループ社 (Aecon Group Inc.)およびアトキンスレアリス傘下のCANDUエナジー社との協力契約、およびエーコン、アトキンスレアリス、GE日立ニュークリア・エナジーとの提携契約が、カナダのメアリー・イン輸出促進・国際貿易・経済開発担当大臣とキャサリン・ゴディン駐ポーランド・カナダ大使が出席して、ワルシャワで調印されたと述べた。化学メーカSGEとPKNオーレン社の合弁企業であるOSGEは、2020年代末までにBWRX-300の初のフリートを配備する予定であり、2024年初めにはプロジェクトの環境調査と立地調査を開始する許可を得た。

キャサリン・ゴディン大使(左)とメアリー・イン大臣(中央)は、OSGE、エーコン、アトキンスレアリスs、GE日立ニュークリア・エナジーによる契約調印に立ち会った(写真:OSGE/PAP)

 

韓国の i-SMR 開発用シミュレータが始動

韓国水力原子力発電会社(KHNP)は、革新的小型モジュール炉 (i-SMR) の運転への適合性を検証するため、KHNP中央研究所(KHNP-CRI)にシミュレータの初期バージョンを構築したと発表した。i-SMRは、電気出力17万kWの一体型加圧水型軽水炉発電プラントで、開発ロードマップでは2025年末までに標準設計を完了し、2028年に標準設計承認取得を目標としている。KHNPによると、i-SMRの運転性検証シミュレータは、設計と動作の適合性を検証するために使用され、シミュレータの運転プロセスから得られた検証結果が、標準設計プロセスに反映されるという。同社は、今回、開発されたシミュレータは、i-SMRの概念と基本設計を反映した初期バージョンであると述べた。

i-SMRシミュレータ(画像:KHNP)

 

コペンハーゲン・アトミクス、溶融塩炉臨界実験でポール・シェラー研と協力

デンマークのコペンハーゲン・アトミクス社は、スイスのポール・シェラー研究所(PSI)と大規模な実験協力契約を締結し、欧州で初めてトリウム溶融塩原子炉に関する臨界実験を実施する。コペンハーゲン・アトミクスは、コンテナ化溶融塩炉を開発中。非加圧重水を中性子減速材として使用するこの炉は、使用済燃料廃棄物を消費しつつ、トリウムから新しい燃料ウラン233を生成する。大量生産と組立ライン生産が可能な小型で熱出力は 10万kW。PSIとの協力を通じて、コペンハーゲンのトリウム供給型「オニオン・コア」原子炉設計をPSIの施設で使用して臨界実験が実施される。実験は2026~27年に予定されている。協力契約は当面、4年間有効である。

コペンハーゲンの「オニオン・コア」原子炉設計(画像:コペンハーゲン・アトミクス)

 

米エナジー・ノースウェスト、ワシントン州リッチランド近郊に12基のSMRを計画

米国エナジー・ノースウェスト社は、ワシントン州リッチランド近郊にあるコロンビア発電所に12基の小型モジュール式原子炉を新設し、原子力発電容量を拡大することを提案している。このプロジェクトはXエナジー・リアクター社との提携によるもので、最大96万キロワットの発電を予定している。

コロンビア発電所は(120万7000キロワット)(エナジー・ノースウェスト提供)

 

WSJ:米ハイテク大手、原子力発電を囲い込み、送電網からのクリーン電力を狙う

米国の原子力発電所の約3分の1を保有する各企業が、エネルギー消費量の多いデータセンターやAIによるリソース需要の増加をサポートするため、電力直接販売についてハイテク企業と交渉している。クリーンな原子力エネルギーを利用することで、ハイテク企業の見栄えを良くすることができる一方で、他のすべての企業を送電網から排除することにもなりかねない。

ペンシルベニア州ビーバーバレー原発。写真:ジャスティン・メリマン/ブルームバーグ・ニュース

 

需要の変化で苦境に立たされる米国の電力網

老朽化が著しいアメリカの送電網は、気候の変化や人工知能(AI)や電気自動車(EV)による需要の出現など、現在進行中かつ差し迫った複数の課題に直面している。スクリプス・ニュースのジェニファー・グレンフィールド記者は、新たな容量の必要性と、問題に対処するための現在の連邦政府の資金が2026年以降まで延長されないかもしれないこと言及し、状況を解説している。

(画像:スクリプス・ニュース動画からのキャプチャ)

 

グリッド・ストラテジーズ社創業者が米国送電の問題とと蓄電の意義について語る

米グリッド・ストラテジーズ社の創設者兼社長であるロブ・グラムリッヒ氏が、電力需要の増加、限られた送電網容量、相互接続プロセスにおける制約など、再生可能エネルギー源の需要増加に対応する上で米国の送電網が直面している課題について語った。グラムリッヒ氏は、送電インフラを構築し、蓄電池を活用して夏のピーク時の送電網ストレスを緩和することの重要性を強調する。グラムリッヒ氏はまた、蓄電税額控除の意義や、送電網を整備するための送電コスト配分政策の必要性など、インフレ削減法(IRA)がクリーンエネルギーに与える影響についての見解も語っている。

ロブ・グラムリッヒ氏(画像:グリッド・ストラテジーズ)

 

米連邦最高裁、連邦政府機関の規制権限を縮小

米連邦最高裁判所(SCOTUS)は、曖昧な法律に対しては、裁判所は(規制に携わるような)連邦政府機関の解釈を支持するという原則「シェブロン法理」に対し、6対3で反対する判決を下した。ジョン・ロバーツ最高裁判事は、行政手続法に基づき、裁判所が「法的権限の範囲内で行動したかどうかを判断する際には、独立して判断を下さなければならない」と多数派を支持した。反対意見を述べたエレナ・ケーガン判事は、「このたびの多数派の意見は、規制法の意味するところに関わるような......あらゆる未解決問題を解釈する独占的な権限を自分自身に与えている」と書いた。

(CBSニュース動画のキャプチャ)

日本語情報:

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-06-28/SFSOMST1UM0W00 

 

核融合プロジェクトITERの最終マグネットが現地到着

世界最大の核融合プロジェクトであるITERが、核融合炉に必要な最終のマグネットを受領し、30カ国以上が支援するプロジェクトの完成が近づいた。ニオブ・スズとニオブ・チタンから作られる核融合炉向け超伝導マグネットは、地磁気の25万倍強い磁場を発生させ、超高温のプラズマを閉じ込める。ITERが稼働すれば熱出力50万キロワット。発電システムがないので電気は作れないが。仮に電網に接続できれば、20万キロワットの電力が供給できるだろう。(訳注:元記事ではあたかもITERが発電するかのような書き方になっているので、注意)

トロイダル磁場コイルがトカマク真空容器の周囲に設置された様子(人間のスケールを含む)画像:ITER