小規模個人再生と給与所得者等再生は、再生計画に対する決議の要否という相違点のほかに、履行可能性の観点と最低弁済額の観点からの相違点もあります。

個人再生では、「将来において継続的に又は反復して収入を得る見込み」がある必要がありますが、給与所得者等再生では、さらに、「給与又はこれに類する定期的な収入を得る見込みがある者であって、かつ、その額の変動の幅が小さいと見込まれるもの」でなければなりません。

すなわち、給与所得者等再生を利用するためには、より一層の安定収入が求められるのです。実務上は、申立て前2年間の年収が20パーセント以上変動していないかを見ることが多いでしょう。

また、給与所得者等再生を利用する場合、「可処分所得」の2年分以上の額を返済することが求められます。

可処分所得とは、大まかに言えば、収入から公租公課(税金、社会保険料等)と生活費を差し引いた額のことをいいます。

個人再生手続における可処分所得の計算は、年収や家族構成、居住している地域等の諸条件を計算式にあてはめることによって自動的に算出されものですので、可処分所得の2年分が清算価値を上回るケースもよくあります。そのため、給与所得者等再生を選択すると、再生計画における計画弁済総額が高額になってしまい、弁済負担が大きくなってしまうことがありますので、収入が安定している方でも、大口債権者が再生計画に反対する可能性が低い場合には、小規模個人再生を選択する方が有利であると言えます。

このように、小規模個人再生を選択するか給与所得者等再生を選択するかは、収入の安定性、可処分所得の多寡、大口債権者の動向を勘案し、総合的に判断する必要があるのです。