提携前に最悪の状況想定が重要


「戦略的国際企業提携」の課題は色々ある。特に気をつけなければならないのは、提携先企業の過大評価だ。提携先企業が著名であったり、規模が大きかったり、また業界の古株であったりすると、どうしても期待の方が先行してしまう。

 日本で大手米国企業と合併会社を立ち上げ、さまざまな失敗を繰り返した上で最終的に合併事業を大成功させた日本人社長がいる。彼は業績発表会でしみじみと語った。その社長のコメントは次の通り。

 「国際的な提携をする場合、最初は両者ともお互いの強いところばかりが目に映り、良いことばかりを期待してしまいます。ちょうど恋愛の末に期待を膨らませて結婚するようなものです。しかし、結婚、即ち提携してみると、欠点(短所)ばかりが出てきて、ほとんどお互いの強みが生かされないことが多いのです。そして、『こんなはずではなかった!』と提携したこと自体を後悔し始めます。後悔だけならまだいいのですが、そのうち相手の責任だということで、提携先企業を非難します。相手は海外企業なので、悪化すると日本企業同士と違い、話し合いで解決せず、裁判沙汰になることもよくあります。そのような悲劇を避けるためには、絶対にやるべきことがあります。それは、提携する前にあらゆる悪い(うまくいかない)ケースを想定し、そのケースごとの対応策を両社で考えることだと思います。私はそうやってさまざまな提携をまとめ実行してきました」

 私はこの社長の言われたことにとても同感できる。日本企業は、提携する場合どうしても相手の企業のいいところしか見ないのが現状だ。

従って、最悪の状況も考えた上で、その状況でも克服していけるという確信を持つか、もしくは、提携での失敗を「学ぶための授業料」としてとらえるだけの余裕がなければ、「戦略的国際企業提携」はするべきではないと痛感する。それによって企業経営から判断して致命的ダメージを得ることも少なくないからだ。

 提携話は弁護士、公認会計士、コンサルタントなどのプロに相談しながら検討し、くれぐれも慎重に行うことをお薦めする。