客観的にベストな仕事はありません。むしろ、ベストな仕事とは、正確に言うとベターな仕事なのです。

「ベター・イズ・ベスト」、つまり、以前よりよい今の仕事が最善くらいのつもりで、腹を決めてやり抜いてみるのです。そうすれば必ず成果が出て、ベストな仕事である実感が持てます。

 勘違いしてしまうのは、仕事を転々としているうちに、ベストな仕事が見つかるのではないかと期待してしまうことです。世の中、本当にその人にとって客観的かつ絶対的にベストな仕事に巡り合える可能性は限りなくゼロに近くなります。

もし、ベストな仕事を見つけたかったら、世の中にあるすべての仕事をしてみなければならないことになります。それは、現実的には時間的、経済的、物理的、精神的に無理です。可能な範囲でできる仕事を見つけて、やるしかないのです。

 ですから、今までの仕事に比べて、ベターだと思えるなら、その仕事を徹底的にやってみることです。そうしたら、必ずベストな仕事だと思えようになります。


 私がそうでした。高校3年生の時に、「国際経営コンサルタント」をしていた人と出会って、その人の仕事ぶりをみて、自分に最適な職業だと思い込みました。

実際に、大学を出て、世界最大級の国際会計・経営コンサルティング会社に就職し、「国際経営コンサルタント」になってみたら、それまで大きな誤解をしてきたことに気付きました。ミスや失敗ばかりしたことから、能力的に全然自分に合わない職業であるのを、次のように痛感させられたのでした。

「シマッタ! 仕事の中身もよく知らないまま僕は、勝手に『国際経営コンサルタント』に憧れ、目指していたんだ… 僕ってなんて軽率なんだろう!」

それでも、既に就職し、新人でもいきなり大事な仕事を任されたため、そう簡単に辞めるわけにはいきません。歯を食いしばって、とことんやり抜き通しました。そうしたところ、徐々に仕事が理解できるようになり、成果もどんどん出てくるようになりました。

そうこうするうちに、段々仕事も好きになり始め、更に努力することで大きな成果を出せるようになりました。ですので、会社の経営陣や上司から高く評価されるようにもなりました。元々単純細胞である私は、その当時有頂天になったのです。

「やはり高校生の時の直感は正しく、僕は『国際経営コンサルタント』に向いていたんだ! 続けていて良かった!」

 そんな風に思いながら、その道を徹底して究めることを決意しました。

 それから、23年が経ち、今も私は「国際経営コンサルタント」をしています。その道でいよいよ油が乗ってきた感じが最近します。

 もしかして、探せば、もっと私に向いている職業はあるかも知れません。でも探す気になりません。だって向いている職業を探せない可能性の方が、探せる可能性より断然高いのです。


 既に述べましたが、私は「国際経営コンサルタント」の仕事が大好きです。今まで30近いアルバイトの仕事をしてきて、最も適していて、楽しめる職業が「国際経営コンサルタント」でした。

私にとってベストな仕事だと思っていますが、まわりの人々から見ると必ずしもそうは思っていないようです。でも、いいのです。本人が納得して今の仕事に全力で頑張れているわけですから。